「禁断の書物」番外戦 エピソード・オブ・バラン~地球に神が降りた日~











それから約100年後。
バランは一旦地球を離れ、同じく約100年が過ぎた怪獣界に戻って来ていた。
あれから2、30年周期で怪獣界に戻ってはいるのだが、すぐまた地球に帰ってしまうからか、怪獣達から名前を忘れられるのもしばしばだった。
それでも、彼は帰郷の度にある場所には欠かさず訪れていた。



バラン「あれから100周忌か・・・拙僧がまだ500年程しか生きていないからか、それとも地球にいるから、遠い昔のように感じるよ・・・なぁ、リエラよ。」



そう、「生き残りの丘」にあるリエラの墓だ。
数年前に衝撃の帰還を果たした末、ゴジラ達の前で消滅した夫・キングの墓が隣に増えているが、どちらにも沢山の花が添えられており、バランもまた双方に花を添える。



バラン「お主もこんな形で、再会したくはなかっただろうに・・・だが、よくぞ帰って来てくれた。キングよ。
今は全て拙僧達に任せ、安らかに眠るがいい・・・キング。リエラ。」






墓参りを終えたバランは次に、怪獣島の村に向かった。
村の入り口ではゴロザウルスが日課の見回りを終え、宝琳をかじっている。



バラン「おお、ゴローではないか!一応久しぶりかな?」
ゴロザウルス「あっ、えっと・・・?」
バラン「おい待て、ゴローともあろう者がまた拙僧の名前が・・・」
ゴロザウルス「・・・なんてな!よっ!バラン!」
バラン「がくっ!全く冗談きついぞ、ゴローよ・・・お主と初めて出会った時の事を思い出してしまったではないか・・・ほっ。」
ゴロザウルス「そんな事もあったなぁ・・・って言うか、あんたがマメに帰って来てくれないからそうなるんだぞ?」
バラン「仕方ないでは無いか、今も拙僧は岩屋の神なのだから。拙僧を先祖代々崇めてくれる民を、無下になど出来ん。お主はいきなり怪獣島を捨てて、ニライ・カナイに移り住めるのか?」
ゴロザウルス「た、確かに無理だ・・・まっ、最近よく帰って来てくれるけど、これからも忘れられないくらいのタイミングで帰って来てくれよな?」
バラン「分かっておる、みなまで言うな。それでゴローよ、とびきり美味しい宝琳はあるか?」
ゴロザウルス「あぁ、まだ幾つかとってあるけど・・・どうしたんだ?」
バラン「いや、実は今日拙僧の同志達と岩屋村で会う約束をしているのだよ。」
ゴロザウルス「同志って、確か・・・」
バラン「あぁ。拙僧と同じ、『バラン』の集いだ。」






ゴロザウルスから貰った逸品物の宝琳が入ったバスケットを片手に、バランは地球に帰る前にある場所に寄っていた。
初めて地球に行く前、自分がずっといた場所・・・あの崖だ。



バラン「・・・もう、ここに来るのも最後だ。昔の拙僧にはここだけで十分だったが、今の拙僧には狭すぎる。
しかし、昔の自分を忌むべきとも思わない・・・400年迷っていた、それだけだからな。」



バランの目に見える、かつてこの崖に立って自問自答を繰り返していた自分。
そんな自分を「今」のバランは愛おしく見つめ、「昔」のバランの幻影は振り返って「未来」の自分と目を合わせる。
「昔」のバランは「未来」のバランを見て、そっと微笑む。
「今」のバランも「昔」のバランを見て、笑みを浮かべる。



バラン「・・・さぁて、地球に帰るとしようか!」



そしてバランは怪獣界を去り、地球へと帰って行った。
自分を、「神」を待つ者達の元へ・・・
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好釦