「禁断の書物」番外戦 エピソード・オブ・バラン~地球に神が降りた日~
バラン「ありがとう。流石は怪獣界の王子、良い心掛けだ・・・まぁ、どうしても一矢報いたいならせめて成獣になってからと言う事にして、今は脱け殻のゴジラを正気に戻さなければな!」
シン「でも、あたしやスペゴジやビオが何を話してもうんともすんとも言わないの。」
バラン「それは寝ている者を起こすような対処しかしなかったからであろう?意識はあるんだ、何か刺激になるような事・・・そう、拙僧が地球にいた頃の話でもしようではないか!」
スペース「えっ?」
シン「ほんと!?それ、あたしもききた~い!!」
スペース「だ、だめだ!そんなやばんなやつらの話なんて!それでなくても、紅い悪魔が来る少し前にあいつはかってに地球へ行ったんだぞ!」
バラン「なら、尚更良いではないか。それこそ、ゴジラが食い付きそうな話題だと思うがなぁ?」
ビオランテ「・・・それに、どうやらゴジラも聞きたいようじゃぞ?」
スペース・シン「「!!?」」
ビオランテの指摘にスペースとシンがゴジラを見てみると、ゴジラの瞳の中の虚無にわずかな光が見えた。
ゴジラが、反応を示したのだ。
スペース「ゴジラ、お前・・・!」
シン「ほんとだ!ゴジラもききたがってる・・・ゴジラの心は、やっぱり死んでなんていないのよ!!」
バラン「よし!なら最初からとっておきの話をしようではないか!拙僧が地球に初めて着いた時に起こった、『破滅の使徒』ことセルヴァムとの戦いの事を!」
シン「ええっ!?セルヴァムって、今はもう怪獣界にいない怪獣じゃない!!」
スペース「ほ、本当に戦ったのか?」
バラン「拙僧は生まれてこの方、嘘は付いた事が無いのが自慢だ。だから嘘ではない、安心してくれ。では、早速・・・」
ゴジラ「・・・!」
更に興味を示したゴジラを加え、バランは地球での出来事を話し始める。
ビオランテは彼らの様子を、後ろから静かに見守っていた。
ビオランテ「頑張るんじゃぞ、ゴジラ。そして、バランよ・・・」
ーー・・・しかし、怪獣界から駆逐したセルヴァムが地球にまで来たとはな。
どうせ「破壊神」の嫌がらせであろうが、それはつまりお前も未だに健在と言う事じゃな・・・ゴジラ・アース、デアよ。
それから、バランは村に赴いて手伝いがてら怪獣達に自分の存在を覚えて貰いつつ、ゴジラに地球での出来事を話し続け、1日ごとにゴジラの反応は大きくなり始めた。
そして、一週間が過ぎた頃・・・
ゴジラ「・・・す、ごい・・・」
スペース「はっ・・・!!」
シン「ゴジラ・・・やっと、やっとしゃべってくれたのね!!やった~っ!!」
バラン「この助けた人間の女の子との出来事は、拙僧の思い出の中でも随一の出来事だからな・・・やはり効いてくれたか。」
ビオランテ「もしくは、地球に行った時に似た出来事があったのかもしれんのう。」
バラン「ゴジラもここまで元気になったなら、今の拙僧に出来るのはここまでだ。思い出話の種を作る為にも、拙僧はそろそろ怪獣界をおいとまするかな。」
シン「えっ!バラン、行っちゃうの?」
バラン「拙僧が岩屋の地で神として崇められておるのは、もう耳にタコが出来るくらい聞いただろう?つまり、拙僧にも待たせている者達がいるのだよ。拙僧は神としてこれ以上彼らに心配は掛けさせられんし、彼らの話をしていたら拙僧も会いたくなってな・・・」
シン「そうなんだ・・・うん!分かった!今までありがと!!げんきでね、バラン!」
スペース「ゴジラのあとのことは、オレたちがどうにかする。それから・・・ありがとう。」
ビオランテ「それに、お前もまだまだ人生の修行が足りとらんしの。次帰って来るまでみっちり修行しておく事じゃ。」
バラン「分かっておる、みなまで言うな!世話になったな、ビオ。スペース。シン。それから、ゴジラよ。それではな、皆の衆!またいつか会おう!」
ゴジラ「・・・あ、りが・・・とう。」
こうしてバランは再び怪獣界を去り、地球へ戻って行った。
バランを見送ったビオランテはリエラの墓前に行き、丹精を込めて育てた赤い薔薇をバランが置いて行った白い花の隣に添え、手を合わせる。
そして空を見上げ、リエラが生前話していたある言葉を回想するのだった。
『・・・もし、バランさんが帰って来る前に私に何かあったら、その時はバランさんの事をよろしくお願いいたします。
約束ですよ?お義姉様。』
ビオランテ「・・・リエラよ、これでお前との約束は果たしたぞ。あやつがこれから先どうするかは、私が見届けておく。
だから、今は安らかに眠れ・・・」