それぞれのHappy birthday







チハヤ「・・・あっ、そういえばあんた的にアンバーさんってどう?」



シン・ゴジラ誕生記念「招待」が終わり、UWに帰還するやチハヤはレジェンドへ突如こんな質問をぶつけた。
だが、何故かレジェンドは明後日の方向を向いている。



レジェンド「・・・」
シン・ゴジラ(品川くん)「??」
チハヤ「やっぱ通じてないか・・・いや、さっき『妻にするなら淑やかな人』って言ってたから、誰が当てはまるかなって思ってたら真っ先に浮かんで・・・あぁ、そもそもアンバーさんって分かる?出雲の「招待」の時にいた、白い着物着てる女の人のバランの事だよ?」
レジェンド「・・・無論。」
シン・ゴジラ(品川くん)「・・・しお(ろ)?」
チハヤ「一緒にペンギン見たり、鎌倉さんを探したりしたけど、正直僕から見ても魅力的だったし、あんたなら凄い好みだと思うんだけど・・・あっ、それから多分無いと思うけどお母さんは絶対駄目だから!もしそんな事言ったら、万死に値するからな!」
レジェンド「・・・今は使命がある、妻を貰う気も余裕も無い。」
チハヤ「あっ、そう。そんな気はしたけど、やっぱりあんたってつれない・・・」
レジェンド「・・・だが、素敵な女だった。」
チハヤ「そうそう、素敵な・・・って、えっ!?聞いといて何だけど、やっぱり!?」
レジェンド「・・・視界に入ったら、必ず見ていた。」
チハヤ「いや、それはやめろよ。追跡スキルを無駄に使わなくていいから。」
シン・ゴジラ(品川くん)「・・・しおさま、ぽぽさまのうま(妻)?」
レジェンド「・・・」
チハヤ「とりあえず、二人して僕に突っ込ませる気なのは分かったから・・・とにかく!品川くんは次アンバーさんに会ってもそう呼ぶの禁止!レジェンドは多分さっきからだんまりしながら繰り返してるアンバーさん回顧をやめて、次アンバーさんに会ったら好きだって言う!」
シン・ゴジラ(品川くん)「しおさま、あ゛め(だめ)?そんあ(な)ぁ・・・」
レジェンド「・・・否、己に女を幸せにする力など無い。断る。」
チハヤ「話してもいないのに、なんで決め付けるんだよ。アンバーさんは強くて優しいから使命の事だって分かってくれるし、むしろ協力してくれるかもしれないよ?」
レジェンド「・・・そもそも、何故お前がそこまで己に食い下がる。」
チハヤ「どうも僕はお節介みたいだから、こういう歯痒いのってほっとけないんだよ・・・だから・・・」


――・・・あっ、そういえばアンバーさんにはもう想い人がいるってイシュタルが言ってたような・・・まぁ、いいか。



???「そうよ?大事にしたいと思った相手ができたら、その人も気持ちも大切にしなきゃダメじゃない。」



そこに自然と、だが何故か会話に入って来る麗しき美女・・・
上腕程の長さの薄黒い網目の手袋、橙色のシフォン風のワンピースの上に、胸の部分が黒いゴシック調の柄になった、緑色のロングレース風のワンピースを重ねて腰の黒いベルトで留めた、たおやかな服装。
真っ赤な薔薇の髪飾りが付いたカチューシャを首で結んで留め、ウェーブがかった深緑のロングヘアーに細長く凛とした瞳を持つ、淑やかな顔立ち。
「深窓の令嬢」と言う言葉が相応しい、彼女の名は愛美華(えみか)。この世界のビオランテである。



チハヤ「あの、愛美華さん?さも当たり前に今の今までそこにいたような顔で乱入してくるの、やめて下さいよ。」
愛美華「あら、女たるもの恋バナは聞き逃せないでしょう?それにさっきからここにいたのは確かよ?ねぇ、品川くん?レジェンドさん?」
シン・ゴジラ(品川くん)「・・・あい?」
レジェンド「・・・微かな花の気配はしたが、お前か?」
愛美華「ご名答♪そういう事で話は聞かせて貰ったけど、貴方はもっと思いを表に出すべきだと思うわ。そうね・・・例えば、私と兄様みたいな感じ?」
チハヤ「・・・真似しなくていいよ?あの人、時々体内のG細胞が暴走したとか言ってヤンデレになって、兄様こと紘平を困らせてるし・・・」
愛美華「チハヤちゃん?口は災いの元よ?あの時の写真をみんなに見られたくないなら、気を付けた方がいいんじゃないかしら?」
チハヤ「っ!?は、はい。」
レジェンド「・・・ヤンデレ、とは何だ。」
チハヤ「いや、分かんないならいいよ・・・うん。ある意味良かった。」
愛美華「じゃあ・・・品川くん?レジェンドさんと心が通じ合ったら嬉しい?」
シン・ゴジラ(品川くん)「ぽぽさまと、いっしょ?うん、うえ(れ)しい。」
愛美華「そうよね。それと一緒よ、レジェンドさん。そのアンバーって人が貴方と心が通じ合って、自分の事を分かってくれたら、それって嬉しくない?」
レジェンド「・・・己ですら自分を全て知らない。それを他人が分かる筈が無い。」
愛美華「もう、貴方もイケズねぇ。アンバーさんがヒタムくんで言うアロナちゃんみたいに、貴方の隣にずっといてくれたら素敵でしょ?」
レジェンド「・・・それは互いに迷惑では無いのか。」
愛美華「えぇっ?何なの、この人・・・」
チハヤ「残念だけど、この人のマイペースっぷりは年季が入ってるから、愛美華さんでも手に負えないかもしれないよ。」
愛美華「そう・・・色々残念な人なのね。」
レジェンド「・・・そうだ、お前に聞きたい事がある。」
愛美華「あら、私に?」
レジェンド「・・・本当に、麻薬なる危険な植物は持っていないのか?」
愛美華「・・・はい?」
チハヤ「ちょ!?ちょっとあんた何言って・・・」
レジェンド「・・・チハヤが言っていた。麻薬を持っている事を暗示した『夢の中へ』と言う歌を、お前が歌っていた事を。」
シン・ゴジラ(品川くん)「ばあ(ら)さま、うふっふー・・・」
チハヤ「お、おいっ!だからそれは嘘だってJr.が言ってただろ!?品川くんも誤解を生む呼び方すんな!」
愛美華「・・・チハヤちゃん?口は災いの元だって言ったわよね?」
チハヤ「いやいや!待って下さい愛美華さん!話すとちょっと長くなりますけど、とりあえず品川くんは『タナラ』の行が上手く言えなくて、レジェンドは人の話を聞かない人で・・・」
愛美華「そう?じゃあ・・・続きは夢の中で聞きましょうか?」
サッ・・・!

チハヤ「や、やばい!愛美華さんが頭の薔薇を取ったって事は、植獣モードになって暴れる合図だったっけ!?」
レジェンド「っ!!あの女から、急に殺気が噴出した・・・!己を抹殺する気か、ならば受けて立つ!」
チハヤ「受けて立つなよ!植獣モードの愛美華さんの相手なんてしたら命がいくつあっても足りないよ!だから今すぐ逃げ・・・」
愛美華「あら、逃がさないわよ?あんたにも聞きたい事がたっくさんあるから・・・ねぇ?チ、ハ、ヤ?」
チハヤ「・・・あぁ、駄目だ。僕の人生、今ここで終わった。」
レジェンド「・・・シン・ゴジラよ、お前だけでも生き残れ。己はこの脅威を、必ず討ち取る!」
愛美華「あら、あらあら?あんた、もしかしてまだ自分が死なないとでも思ってるんじゃないのかしら?そんなに人生、甘くないんだけどぉ?」
シン・ゴジラ(品川くん)「・・・ぽぽさまも、ばあさまも、こわいあ(な)ぁ。」
チハヤ「母さん、父さん、セラフィ、そしてみんな・・・今までの僕に、さよなら。
そして新しい僕、おめでとう・・・」
レジェンド「・・・何故、知っている。」
チハヤ「えっ?」
レジェンド「・・・己の生誕日が、文月(7月)25日だと。」
チハヤ「・・・もう、いいからみんな僕の話を聞けーーーーーっ!!」






・・・あの後、偶然紘平・幸のゴジラ親子が通りかかってくれたお陰で、僕もレジェンドも品川くんも命拾いした。
僕はこの日の事を、絶対忘れないだろう。
そして、人生において大切な事を知った・・・
人の話は、ちゃんと聞く事。
口は災いの元、だって事。
そして、絶対に愛美華さんを怒らせちゃいけないって事・・・






チハヤ「とりあえずレジェンド、誕生日おめでとう・・・」
シン・ゴジラ(品川くん)「ぽぽさま、おめえお゛う。」
レジェンド「・・・ありがとう。
では、これにて一件落着。終わり。」
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好釦