それぞれのHappy birthday







2011年の怪獣界「招待」後、アッシリ湖。
ビオランテは既に獣人界に帰っていったゴジラ・レッドと共に同世界のキングシーサーを探していた中で出会った謎の存在、レオゴンの元にいた。



ビオランテ「・・・」
レオゴン『・・・』



ジッとレオゴンを見つめ、ビオランテは自らの膨大な記憶の中から見覚えが無いかを詮索するが、いくら記憶を辿っても見つからない。



ビオランテ「・・・しかし、本当にお前は誰なんじゃ?」
レオゴン『・・・ボクラハミンナ、イキテイル・・・』
ビオランテ「私が知らないとなると怪獣界の者ではないし、気配が私達の世界のモノではないと言うことは、招待主の誰かが連れてきたとしか考えられぬな・・・」


――・・・それに、さっきまでおったあのレッドとか言うゴジラの事も考えたら、なんとなく心当たりはあるがのう・・・


レオゴン『・・・イキテイルカラ、ウタウンダ・・・』
ビオランテ「・・・何故か他人の気がせんのも、変な気分じゃが・・・まぁ、よく見たら結構可愛い顔しとるし、暫くここで飼うとするかの♪」
レオゴン『・・・ミンナミンナ、イキテイルンダ、トモダチナンダ・・・』
ビオランテ「お前、名はなんと言う?」
レオゴン『・・・レオゴン。』
ビオランテ「レオゴン、か。ここで暮らすからには、私の言う事を聞いて貰うぞ?それでもいいなら、私と一緒に来るか?」
レオゴン『・・・アッシリ、イタイ。』
ビオランテ「それはオッケーと解釈して良いな?なら、一緒に行こうかの♪」
レオゴン『・・・アッシリ、アシノコミタイデ、スキ・・・』
ビオランテ「ふむ、しかしさっきからこやつが言っている『アシノコ』が気になる・・・いつか、行ってみようかのう。」







ビオランテはレオゴンを抱きかかえるとその場から去って行き、その様子を木の陰から一人の少年が見つめていた。



ブルトン「・・・レオゴンは無事、怪獣界で居場所を見つけたようだね。僕の箱庭のゴジラも帰れたみたいだし・・・突然だけどレオゴンを頼んだよ、ビオランテ。」



そう、レオゴンやゴジラ・レッドと同じ獣人界の怪獣であり、レオゴンをこのアッシリ湖に連れて来た張本人である四次元怪獣のブルトンだった。
ビオランテが完全に去った事を確認したブルトンが手をかざすや、手に持った時計の針があべこべに回り出し、空間を歪ませて異次元への扉を作る。
そのままブルトンはレオゴンと芦ノ湖で出会った時の事を思い出しながら扉の中に入って行き、ブルトンが通り終わると共に扉は収縮し、跡形も無く消えた。






――・・・おや、君は合性怪獣のレオゴンじゃないか。どうしたんだい?


――・・・レオゴン、ユルサレザル、イノチ。
イタラ、イケナイ・・・


――確かに君は「全ての命は一つであるべき」と考えた人間が作った存在・・・
でも、君は今こうして僕の箱庭の住人として生きている。
理由なんて、それだけで十分じゃないか?


――・・・デモ、ミンナハチガウ・・・
ドコニモ、レオゴンノイバショハ、ナイ・・・


――・・・それは残念だね。
同じ箱庭に住んでいる仲間の筈なのに、異形と言うだけで誰も彼も・・・特に人間は排他的になる。
君と言う新たな命を生み出しておきながら、悲しいね・・・
分かった。もうすぐ「招待」って言う素晴らしいイベントがあるから、その時に君を新天地に連れて行ってあげよう。
怪獣の、怪獣による、怪獣の為の世界に・・・






ブルトン「・・・辛い事は全て忘れて、小さき者として幸せに暮らすんだよ、レオゴン。」


ーーそれにしても、時間を巻き戻して箱庭を作ったはいいけど・・・まだまだ僕が描いた理想郷には程遠いな・・・
元から善と悪にはっきり分かれた怪獣達はともかく、怪獣と人間はあくまで不干渉を貫いているだけで、歩み寄る気配は無し。
人間達が危害を加える不安がある限り、怪獣達もまとまりにくいだろうし・・・
僕の箱庭に憧れてる、この世界のダガーラには悪いけど・・・クリスタラックのような悲劇が起こっている僕の箱庭に、まだ連れてはいけない。
でもせめて、怪獣達に結束の大切さを伝えたい。そうすればいつか人間だって・・・
なら、やっぱりここは異世界の怪獣達の力を借りよう。
新参者だけど、僕も早く見たいんだ。
全世界の怪獣達が共存出来る、理想郷を。






ブルトン「さて・・・そろそろ君もお目覚めかな?
ハッピーバースデー。シン・ゴジラ・・・」
シン・ゴジラ(蒲田くん)「・・・!
おんぎゃーっ!!おんぎゃーっ!!」



そして、辺り全てが青紫色に染まった歪みの空間の中で、ブルトンは眼前で目を覚ました赤子に話しかける。
今この獣人界に新しい命、新しいゴジラ、新しい神の使いが産声を上げたのだった・・・






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好釦