LAST TRAIN ―新しい朝―








???「あなたのために歌うことが、こんなにも辛いことだなんて!
・・・はぁ、折角島根Super大使とやらのネタを学習したのに駄目なのかよ・・・ったく、俺を落とすなんて人間共は本当に見る目がない!リム。」
クリス「仕方ないじゃない?あのネタ、私から見ても二番煎じでキレが悪かったし・・・まぁ、また頑張りなさい。」
???「姐さんもそんな事言うのかよ・・・あぁ、怪獣芸人の道はまだまだ遠い・・・リム。」



一方、稲佐の浜を歩く「招かれざる」二人の影。
一人は妖艶なる獣人界のスペースゴジラことクリス、もう一人の男は他の怪獣達とはやや異なる風情を持っていた。
服は下半身の紺のジーンズだけを着用し、鍛え上げられた上半身には代わりに胸から上腕にかけて、黄色い筋が入った黒くザラザラとした皮膚が生えており、上腕からは更に鋭い爪を持った腕が第二の手のように生えていた。
水色の瞳を泳がせながら愚痴を呟く、黒いショートヘアの彼の名はナイフヘッド。
異世界「アンティヴァース」の侵略者「プリカーサー」が地球侵略の為に造り出した人造生命体「KAIJU」の一体であるが、彼はKAIJUの中では珍しく比較的人間社会に憧れを抱いており、史上初の「怪獣芸人」として地上での活動を開始した・・・のはいいのだが、ゆるキャラを意識した妙なキャラ付けからか中々人間達からは認めて貰えず、出張先のこの人間界でも散々な結果に終わってしまっていた。
ちなみに、クリスは彼の護衛の為に同行しているのだが・・・



クリス「まぁでも、このまま帰っても私としては物足りないし・・・あら?」



チャイルド、ジュニア『「え~いっ!!」』



クリス「・・・うふふっ。」
ナイフヘッド「えっ?姐さん、突然笑ってどうしたんだ?」
クリス「ちょっと『つまみ食い』がしたくなっちゃっただけ・・・♪ナイフヘッド、芸人モードであっちの子を引き付けて、この砂浜から離しておいて?」
ナイフヘッド「『ゆるキャラ』モードだ・・・リム!」



不敵な笑みを浮かべるクリスの目に捉えられていたのは、砂浜で駆けっこをする二人の少年。
以前親込みで狙った事のあるチャイルド、そして彼女の新たな獲物となってしまったジュニアであった。
クリスが護衛に選ばれたのも、彼女の底知れぬ少年愛(ショタコン)が買われたからであり、今回もそれは悪い意味で働いてしまっていた。



ジュニア「よし!ボク、勝った!チャイルド、もう一回・・・」
クリス「あらあら、そこの僕?ずいぶん楽しそうね?」
ジュニア「お姉さん、だれ?ボク、ジュニア!」
クリス「私はクリス。貴方と同じゴジラ一族なの。よろしくね♪」
ジュニア「えっ!お姉さん、ゴジラ一族!?そういえば、スー兄みたいな感じする!」
クリス「よく分かったわね?そう、私は別の世界から来たスペースゴジラなのよ。」
ジュニア「わぁ~!!すご~い!!」


クリス――上手く取り入れたわね。
ジュニア君・・・リトルやチャイルドに負けず劣らずの幼さで、もうたまんないわぁ・・・!
そうそう、ナイフヘッドは・・・



クリスが左に目をやると、3、4等身の縫いぐるみのように変化した「ゆるキャラ」モードになったナイフヘッドがチャイルドの気を引いている所だった。
某島根super大使そのままな点はともかく、子供番組の司会者風のキャラを演じ、加えて愛らしい縫いぐるみ系のフォルムだからか、チャイルドは疑い一つ持っていない様子だ。



ないふへっど「たーかーのーつーめー♪」
チャイルド『たーかーのーつーめー!』
ないふへっど「うんうん、いいかんじだね!こんどはぼくとあっちでれんしゅうしようリム〜!」
チャイルド『はーい!』



クリス――またあのネタやってるけど、とりあえず大丈夫そうね。
あぁ、それにつけてもチャイルドもやっぱりたまんなぁい・・・!
早く食べちゃいたいけど、後のお楽しみにとっておくわね♪


ジュニア「・・・?どうしたの?」
クリス「ううん。何でもないわ。それより、これからお姉さんと楽しい事・・・しない?」
ジュニア「ほんと!?うん!したい!」
クリス「いい子ねぇ・・・じゃあ、いらっしゃい?」
ジュニア「あっ、待って!じゃあチャイルドも・・・」
クリス「大丈夫、私チャイルド君とも知り合いなんだけど、あの子は先に行ってるから心配しないでね。」
ジュニア「そうなんだ!分かった!」



クリス――きっとこの近くに、邪魔なゴジラ一族がたくさんいる筈・・・
今回は事前に結晶フィールドを張って無いから、まともに立ち向かっても勝ち目は無い・・・
でも、アンティヴァースに連れて行きさえすれば、もうこっちのもの!誰も手出し出来ない・・・!
それからは・・・うふふっ!
さぁ、あの二人をどうやって食べちゃおうかしら・・・!
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好釦