LAST TRAIN ―新しい朝―








機龍「やっぱり、ここにいたか。」
「VS」ゴジラ「・・・!」



忌まわしき記憶の回顧に、一種のトランス状態になりつつあった「VS」ゴジラを「今」に呼び戻したのは、自分と変わらない境遇でありながら自分と違ってそれを感じさせない佇まいを持った文字通りの同胞、機龍の声だった。



「VS」ゴジラ「機龍さん・・・?」
機龍「話はだいたい聞かせて貰ったよ。そうか、あのゴジラが・・・改めて、昔の自分の若さ故の言動には滅入ってしまうね・・・まぁでも、全部間違ってたとは言わない。だって、自分なりに悩んであがいて・・・それを繰り返した末の結果だから。そうだろう?ゴジラ。」
「VS」ゴジラ「・・・」
「‐」バラン『邪念に憑かれた咎人で有るのは、私も同じだ。其れに拠って多くの命を奪い、憎悪を生んだ・・・今尚私を憎む者も、少なく無いで在ろう。』
アンバー『バラン・・・』
「‐」バラン『・・・然し、其んな私を仲間は受け入れて繰れた。だからこそ、私は斯うして己が儘の人生を謳歌出来て要る。そして其の権利は御前達も変わら無い。私は其う思う。』
アンバー『・・・「我思う、故に我あり」と言う言葉があります。自分の周りの全てが虚偽であっても、こうして自分の存在そのものを問いかけるこの意思は虚偽ではない。自分の存在意義を問いかける事こそが「自分」が存在する証明である、と言う哲学における命題なのですが・・・もし、周りが「自分」を肯定すれば、「自分」の存在意義を確固たるものに出来る。逆もまた然り。そうわたくしは思うのです。』
婆羅護吽「えっと、つまり・・・私達が呉爾羅にいて欲しいって強く思えば思うほど、呉爾羅も自分はいてもいいって思ってくれて、呉爾羅自身の人格が強くなって邪念に負けなくなる!・・・って事ですよね?」
アンバー『その通りです。とても分かりやすい答えですよ、婆羅護吽様。』
婆羅護吽「あ、ありがとう・・・なんか、お姉さんみたいな人から畏まられるのも変な感じ・・・」
機龍「アンバーさんの言葉に乗っかると、『生命は、定められた時の中にこそ在るべし』と言う言葉を聞いた事があるんだ。これは言葉通りの意味だけど、それなら俺も呉爾羅も時のゆりかごから外れた異端で、あってはならない存在・・・でも、俺も呉爾羅も今こうして確固たる意志で、ここに存在してる。それはきっと自分自身でいたいって思っただけじゃない、みんなが俺や呉爾羅にいて欲しい、って思ってくれたからだと思うんだ。
それに、だからこそ・・・俺が許されるなら、護国聖獣としての呉爾羅だって許されていい筈だよ。」
最珠羅「お前達・・・」
護国バラン「同志、それに機龍。君達の厚意に感謝する。我等の思いは、間違っていなかったのが分かった。」
「‐」バラン『当然だ。私が認めた同志が、間違える訳が無いだろう。』
アンバー『今日は必ずわたくし達の、そして呉爾羅様の悲願を成し遂げましょう!』
婆羅護吽「その通りです、アンバーお姉様!・・・あっ。」
魏怒羅「ハッピーニューお姉様。」
最珠羅「魏怒羅、こんな時にだけ出てくるな・・・」
アンバー『あの・・・この「くに」を護る護国聖獣から敬意を表して頂けて、わたくしは光栄ですよ。婆羅護吽様。』
婆羅護吽「は、はい!とにかく!今日はコツコツ出雲中を歩いて、最後に呉爾羅と一緒に出雲大社でお参りするよ!」
最珠羅「・・・あぁ。勿論だ。」
機龍「さて、ここまで聞いてゴジラはどう思う?」
「VS」ゴジラ「っ!・・・俺も、そう思っている・・・」
機龍「・・・だ、そうで。」



思いを一つにした彼らは振り返り、相変わらずシン・ゴジラ達相手に馬鹿騒ぎをする呉爾羅を見る。
今回の「招待」の本当の目的が、そこにあったからだ。



呉爾羅「そうそう、なんか俺でやるとおかしいって思ってたんだよなぁ~。連行される宇宙人役、似合ってるぜ!バラゴン!」
シン・ゴジラ(鎌倉さん)「・・・」
レジェンド「・・・」
バラゴン『・・・あんまり、嬉しくないんですけどねぇ・・・』
Jr.「もう、こんな事したら低身長で悩んでるバラゴンが可哀想じゃないか!今すぐやめなさい!」
呉爾羅「ちえっ。なんだよ、Jr.も宇宙人役がやりたいんなら素直に言えばいいのに。」
Jr.「ちがーうっ!!」
シン・ゴジラ(品川くん)「うゆ(ちゅ)うじん、あいあ(た)いあ(な)。」
チャイルド・ジュニア『「あいた~い!」』




最珠羅「・・・こうやって馬鹿騒ぎ出来るのも、我思う故に有り、か・・・それなら私達は、私達に出来る精一杯の事をしよう。そうすれば、きっと・・・」



「VS」ゴジラ――・・・あいつの中には、黒い雨やピカドンを浴びて死んだ者達もいる・・・
なら、あいつが救われる理由はそれだけでも十分だ。
たとえおこがましいと言われようと、俺は・・・!



アンバー『それから「我思う、故に我あり」の言葉は貴方へのメッセージでもあるのですよ?バラン。』
「‐」バラン『そ、其うか・・・全く、余計な御節介を。』
護国バラン「しかし・・・やはり羨ましいな、同志よ。」
婆羅護吽「えっ、二人って恋人同士じゃないんですか?」
「‐」バラン『!?』
アンバー『あっ、あの!婆羅護吽様、バランにその話題は禁句で・・・』
「‐」バラン『・・・どうせ、私等・・・』
婆羅護吽「あれ?もしかして・・・気まずい事、聞いちゃいました?」
護国バラン「・・・再会した時の言葉の意味、ようやく分かったぞ。同志・・・南無。」
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好釦