LAST TRAIN ―新しい朝―
チハヤ「・・・あんたの言う通り、あのシン・ゴジラは悪い奴じゃなさそうだね。今の所は喜びしか感じないし。」
レジェンド「・・・そうだろう?」
チハヤ「あとは『あいつ』をどう紹介するかだけど・・・」
???「・・・ニヤァ。」
レジェンド「・・・行って来る。」
チハヤ「えっ、ちょっと待ってよ!いきなり過ぎる・・・って、聞いてないし・・・」
ジュニア「わぁ~、この人、寝ながら歩いてる!」
チャイルド『すご~い!ぼくもやりたいな~!』
魏怒羅「・・・?」
最珠羅「積もる話もあるだろうが、そろそろ出発しよう。」
レジェンド「・・・待ってくれ、彼を紹介したい。」
最珠羅「お前は呉爾羅が言っていた米国のゴジラだな?時間もあるから、早くしてくれないか?」
レジェンド「・・・紹介する、己の世界のシン・ゴジラだ。」
UWシン・ゴジラ「・・・しん、え(で)す。」
レジェンドの後ろからゆっくりと歩いて来たもう一人のシン・ゴジラ・・・
長身痩躰の撫で肩、赤い糸で固く縛られた両手、背中に背鰭を彷彿とする紅の刺繍が刻まれた黒袴、そこから見え隠れする全身に刻まれた血の色の紋様、異様に長い後身頃によって尻尾の様に引きずられた紙重、ウネウネとした黒い短髪に常に薄ら笑いを湛えた顔。
そんな彼が現れた途端、場の雰囲気が異様なものとなった・・・
最珠羅「・・・そ、そうか。そのシン・ゴジラも中々のものだな。」
呉爾羅「・・・お、お・・・」
最珠羅「どうした、呉爾羅。」
呉爾羅「お・・・おもしれ~っ!!なんだよその服!なんで手縛ってんだよ!」
最珠羅「なっ・・・」
シン「うそうそ、新しいシンゴジ!?ほら、あなたも来て見てよ!」
シン・ゴジラ「・・・?」
シン「あたしはシン、よろしくね☆あっ、でもどっちもシンゴジだからややこしくなるわね・・・そうだ!このシンゴジが『鎌倉さん』だから、『品川くん』って呼ぼっかな♪前に一回品川って所に行った時に・・・」
スペース「また同じ理由で妙なあだ名を付けるな。」
シン・ゴジラ(鎌倉さん)「・・・!」
シン・ゴジラ(品川くん)「・・・あ(な)かま?」
最珠羅「・・・分からない。やはり私には、あの二人が何をするのかが全く分からない・・・!」
護国バラン「何って、コンタクトだろう?」
最珠羅「『アイ』コンタクト、です。」
魏怒羅「アイコン?じゃあ俺も、ばっちり見なーぁ・・・zzz」
最珠羅、婆羅護吽「「寝るな~っ!!」」
「‐」モスラ『ほんと、護国聖獣の皆さんの会話はコントのようですわね・・・』
婆羅護吽「まぁ、なんか『ゆるキャラ』みたいな感じだね。ゆるキャラもいつも笑ってる顔なのが多いし。」
「‐」モスラ『それは言えていますわね。流石は婆羅護吽ちゃん、可愛い例えを致しますわ。』
婆羅護吽「も、もう!だからお姉様ったら可愛いって言わないで下さいっ!バラ君も、そう思うよね?」
バラゴン『は、はい!俺っちもそう思います!』
「‐」バラン『彼奴、バラゴンに都合の良い回答を強制したな・・・』
アンバー『何か、自分の立ち位置にコンプレックスがあるようですね・・・』
・・・が、異様だったのは雰囲気だけだった。
余多の怪獣と戦い、既に「鎌倉さん」とも親しくなっている面々にとって、雰囲気だけの異様さなど意に返すまでも無いものあり、シン・ゴジラ同士の交流を楽しむ者の方が圧倒的に多い有り様だ。
シン・ゴジラ(鎌倉さん)「・・・」
シン・ゴジラ(品川くん)「しんのあ(な)かま、うえ(れ)しい。よろしく。」
チハヤ「やっぱり、『タ』『ナ』『ラ』行の文字は言えないのか。」
Jr.「まぁでも、コミュニケーションには問題なさそう、かな?」
チャイルド『どっちのしんごじさんも、すごいね~。』
ジュニア「チャイルド、そう思う?ボクも!」
シン・ゴジラ(品川くん)「ほんと?やぁ、あ(やった)あ。」
レジェンド「・・・ラゴス、シン・ゴジラはどうだ?」
ラゴス・ゴジラ「・・・うーん、なんでか品川くんは心が読めないんだけど、鎌倉さんは嬉しがってるぜ。」
レジェンド「・・・そうか。」
チハヤ「なら、とりあえず目的達成だね。」
「‐」ゴジラ『もくてき?』
チハヤ「なんか、前にあっちのシン・ゴジラに迷惑掛けたから、そのお詫びだって。僕は別の怪獣を連れて行きたかったのに、もうテコでも譲らなくて・・・」
レジェンド「・・・」
シン・ゴジラ(品川くん)「ぽぽさま(父様)、やさしいんあ゛(だ)よ。」
「‐」ゴジラ『そっか、お前のお父さんみたいなかんじなんだな!さすがはレジェンド!お前、やっぱりいいやつだ!』
チャイルド『うんうん!おじさんはすご~く!いいひとだよ!』
ジュニア「ボクも分かる!このおじさん、いい人!ゴジ兄もスー兄も、いっぱい言ってた!」
レジェンド「・・・やはり、己はおじさんなのか。」
チハヤ「事実なんだから、諦めなよ。」
スペース「おい、ジュニア。あまりオレのプライベートを話すな。」
イシュタル「でも、事実だもんね。」
シン「そうよね~♪」
フェアリー『ダネ~!』
スペース「全く、この親子は・・・」
ゴジラ・レッド「アイツもお前も同じゴジラだからだ、それ以外に理由はいらない。」
キングシーサー「ゴジラさんらしい、ストレートな答えですね。でも私も、そう言うシンプルなものでいいと思います。」
シン「そう!同じ一族なんだから、好きになるのに理由なんていらないの!良かったわね、シンゴジ!あなたの仲間が、こんなとこにいて。」
シン・ゴジラ(鎌倉さん)「・・・。」
セラフィ「あっ、頷いた。」
Jr.「あれでも結構、喜びをアピールしてるんだよ。」
シン・ゴジラ(品川くん)「しんのあ(な)かまの、かまさま(鎌様)・・・ニタァ。」
チャイルド・ジュニア『「にやーー!!」』
レオ「こっちのシンゴジさんは、より笑ってる。」
チハヤ「あれが喜びのアピールなのかは、僕は分かんないよ?」
ラゴス・ゴジラ「まっ、どっちのシンゴジも喜んでるって事でいいじゃん!」
機龍「あのシン・ゴジラがあの扱いなんだ、ある意味この面々は大丈夫だな。」
「VS」ゴジラ「あぁ・・・」
皆がシン・ゴジラ同士の対面を楽しむ中、「VS」ゴジラの意識は別の所にあった。
まるでこの山に潜んで自分達を見ている「何か」、自分の記憶の奥底にいる存在を探すかのように辺りを見渡す。
「VS」ゴジラ――・・・気のせいか?
この山に来た時から微かに感じて続けているこの感覚、かつて感じた事がある・・・
俺がまだ、昔の姿だった頃・・・だから、あの歌を口ずさんでしまったのか?
機龍「ゴジラ、どうした?」
「VS」ゴジラ「・・・いや、何でもない。」
機龍「何か探しているような感じだったけど・・・あっ、そう言えばこの山には幽霊が出る噂があるんだけど・・・まさか、ゴジラって・・・」
「VS」ゴジラ「ビビって無いからな?それに幽霊なら、ラゴス島の方がたくさんいただろ。」
機龍「ほんと、相変わらず冷静に凄い事を言うなぁ・・・」
「VS」ゴジラ――・・・神。
俺はそんな都合の良い存在は信じないが・・・もし、限り無く近い存在がいるとするなら・・・