LAST TRAIN ―新しい朝―











「あの日、止まったカウントダウン。
しかしそれはまた私達・・・いや、本人すら知らない所でまた動き出していたのかもしれない。」






「LAST TRAIN ―新しい朝―」






呉爾羅・魏怒羅「「ふぁ~っ・・・」」
呉爾羅「・・・あぁ、魏怒羅でもないのに眠ぃ・・・と言うか、なんでお天道様と一緒に集まるんだよ・・・早起きは三文の損だぞ?」
最殊羅「三文の得、だ。いいだろう、遅刻するよりは。それにお前にとって久々の出雲なんだ、下見は必要だろう。」
婆羅護吽「私達が今日の案内役なんだから、度忘れされたら困るしね。」
呉爾羅「じゃあ、俺が今日ちゃんと案内出来たら、三文くれるんだろうな!」
最珠羅「そう言う事じゃ無い。この諺(ことわざ)は早起きの素晴らしさを一言で教えてくれている格言なんだ。」
呉爾羅「でも、結局三文貰えないんならお前ら嘘つきだぞ!嘘つきは泥棒の始まりなんだからな!」
最珠羅「だから、そう言う事じゃ無い!」
護国バラン「まぁ落ち着くんだ、最珠羅。それより、この私のいつ以来の「招待」の方が問題だろう?同志と再会するのが、本当に待ち通しい・・・」
最珠羅「いや、いつもの突然の行方不明癖が祟った結果なんですから自業自得みたいなものですよ。バランさん。」
婆羅護吽「私達すら見つけられないって言うのも、凄いけど・・・あっ、また魏怒羅が立って寝てる!こら~!起きろ~!」
魏怒羅「・・・カイガン。」



2017年・6月某日、人間界・島根県・出雲。
朝焼けに包まれながらそびえ立つ、出雲大社参拝の玄関口である勢溜の鳥居付近を歩く、護国五聖獣の姿があった。
神在月――出雲では十月に八百万の神が集まって会議をするので神無月ではなく神「在」月と呼ぶ――でもないのに護国聖獣達が集まった理由、それは今日この地で「招待」が行われるからであった。



最珠羅「そうだ、呉爾羅。お前の中の人々は今どうしている?」
呉爾羅「えっ?お前にしちゃ珍しい事聞くな?え~っと・・・いつもうるさい浪速のおばさんを押し退けて、ここ出身の兵隊達が口々に言ってる・・・」
婆羅護吽「なんて言ってるの?」
呉爾羅「・・・リャンコ大王って、何だっけ?」
最珠羅・婆羅護吽「「・・・」」
護国バラン「なんだ、ニャンコ先生も知らないのか?」
最珠羅「リャンコ大王です。」
婆羅護吽「呉爾羅が来た、最後の神在月の時に話題になったじゃないですか~。えっと・・・そう!猫の王様!」
最珠羅「婆羅護吽も覚えてないなら素直に言った方が身の為だぞ?」
呉爾羅「リャンコ大王って言ったら、島根が誇るアシカ大明神様だろ?なのにお前らほんとモグリだなぁ。」
最珠羅「いや、普通より大きいだけのアシカだ。ちょっと知ってるからって誇張して自慢気になるな、腹が立つ。」
呉爾羅「何をっ!お前リャンコ大王の何を知ってるんだよ!そんな事言うなら、蜆に噛まれて死んじまえー!!」
最珠羅「・・・こう言うのを、既視感(デジャヴ)って言うんだったな・・・」


――・・・しかし、既視感か。
今でこそ呉爾羅は私達の知る呉爾羅に戻っているが、あの時は地獄としか言い様がなかった・・・



最珠羅の脳裏に2002年・・・今から15年前の記憶が、静かに燃える炎のように蘇った。
1/31ページ
好釦