Who will know‐誰が知っているだろう‐
シン・ゴジラは両手で何かを胸元で掲げるような体勢を取り、目を瞑って歯を食いしばる。
すると彼の全身を禍々しき紫のオーラが包み、結んだ後髪がまるで意思を持ったかのように一人でに動いたかと思うと、ヒトガタが纏わり付く髪先を上空の結晶に向ける。
「・・・!」
呉爾羅「っ!い、いきなり寒気がした・・・いや、これは・・・怯え?俺の『中の人達』が昔感じた恐怖を、俺も感じたのか?」
ジラ『もしかして、これがレジェンドが言ってた「力」なのかい・・・?』
Jr.「シンゴジさん、一体何をするつもりなんだ・・・?」
オーラは遂にシン・ゴジラの体が見えなくなる程に勢いを増して行き、苦悶しながらシン・ゴジラは両手で力強く頬当を掴む。
「・・・う、うぅ・・・!!」
チャイルド『しんごじさん、なんだかくるしそうだよ・・・?』
「‐」ゴジラ『・・・あれ、ぼうそうしたおれと同じだ。じぶんでじぶんが分からなくなるくらいのパワーを、なんとかおさえてるんだ!』
機龍「あんな力を、あいつは制御出来るのか?暴走にも似たあの力を・・・俺達と違って、使いこなせるのか?」
そしてシン・ゴジラは瞼が裂けそうな程に目を見開き、空を見上げて迫り来る災厄をその瞳に捉えながら、頬当を外し・・・
シン・ゴジラ「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁっ!!」
聞いた者全てが恐れを抱かずにはいられない絶叫を上げ、口と髪先から紫の熱線を解き放った。
それと同時にシン・ゴジラの周囲に凄まじい熱線の余波が起き、その衝撃だけで一同は足を取られそうになる。
チャイルド『う、うわぁ~!!』
「‐」ゴジラ『だいじょうぶか、チャイルド!』
ゴジラ・レッド「なんて無茶苦茶な力だ・・・!あれが、アイツの熱線なのか!?」
シン「これが、シンゴジの力・・・」
熱線は一直線に結晶へと向かい、瞬く間に直撃。
爆炎の中で二閃の光が結晶を、まるでナイフでケーキを切るかの如く簡単に二等分、四等分とバラバラにして行き、欠片一つ残さずに結晶は消え去った。
スペース「あの巨大な結晶が、跡形もなく消えた・・・!オレ達が出来ないと思った事を、一人で解決したのか!?」
「VS」ゴジラ「確かにこれは脅威だな・・・あいつが警戒していたのも、納得だ・・・」
レジェンド「・・・まさに、神の如き力。」
シン・ゴジラ「・・・はぁ・・・っ!」
熱線を出し終えたシン・ゴジラは再び頬当を顔に付け、一回大きなため息を付き、数歩よたついた後・・・その場に倒れた。
一同は危機が去った事に安堵する間もなく、意識を失った救世主・・・今日出来たばかりの新しい友人の元に駆け寄る。
シン「あっ!!シンゴジっ!!」
ラゴス・ゴジラ「ど、どうしたんだよ!」
Jr.「だっ、大丈夫ですか!?」
「‐」ゴジラ『おい、しっかりしてくれ!シンゴジ!』
シン「ゴジラ!早く治癒して!お願いっ!!」
ラゴス・ゴジラ「分かってるっ!!待ってろ!今オレが治してやるからな・・・!!」
ラゴス・ゴジラは光る手をシン・ゴジラの胸に当て、治癒の力をシン・ゴジラの全身に注ぎ込む。
だが、シン・ゴジラが起きる気配は無い。
ラゴス・ゴジラ「まだオレ達、会ったばっかだろっ!!なのにもうお別れなんて、オレは絶対に嫌だからな!!」
チャイルド『おねがい、おきて!しんごじさぁん!!』
ジラ『あんたが犠牲になって助かったって、私達はちっとも嬉しくなんかないんだよぉ!!』
ゴジラ・レッド「そうだ!残されたヤツの悲しみは、生涯消えないんだぞ!クリスはオレが必ず地獄に送る!だから、勝手に死ぬな!アンタもゴジラなら、こんな所で死ぬんじゃねぇ!!」
スペース「・・・これが、事態を解決した代償なのか?」
機龍「それなら神は、どこまでも残酷な連中だよ・・・」
「VS」ゴジラ「・・・なんなんだよ、この行き場の無い怒りは・・・!」
レジェンド「・・・」
呉爾羅「寝るな!寝たら死ぬぞ!」
Jr.「それは雪山の話だって!・・・あれ?」
「・・・zzz・・・」
Jr.「・・・いびき?」
「‐」ゴジラ『・・・うん、いびきだ。』
ラゴス・ゴジラ「いびきだよな?」
シン「・・・いびきね。」
ジラ『って事は・・・彼、寝てるだけ?』
呉爾羅「ほら見ろ!俺の言う通りだっただろ?」
「「『・・・はぁ・・・』」」
そう、シン・ゴジラは強力無比な熱線を出せる代わりに、ある程度エネルギーを使うと仮眠状態に入らなければいけない体質だった。
ただ、傍目から見ると死んだようにも見える為、一同は動揺していたのもあって勘違いしてしまったのだ。
呉爾羅以外の一同はようやくそれに気付き、深いため息を付いた。
シン「・・・でも、勘違いで良かった!シンゴジが生きてるなら・・・」
こぼれ出た涙を拭い、シンはこの悲しみが杞憂に終わった事に安堵するのだった。