4×4×4
各所で交流する怪獣達の表情は、どれも晴れ晴れとしていた。
世界や理由は違うにせよ、誰もが同じ「怪獣」であると言う共通点が怪獣達の心を開き、各人の会話の得意不得意に関係無く、この友好的な雰囲気を産んでいた。
ただ・・・二人を除いて。
ラゴス・ゴジラ「さっきからだんまりしやがって、お前に比べたらアニキでもまだ喋る方だぞ!」
「VS」ゴジラ「黙れ・・・いいから早く何処かへ消えろ。」
そう、「VS」ゴジラとラゴス・ゴジラである。
二人の性格は正反対の間逆、まさに水と油の関係を体現しているかの様であり、他所と異なる一触即発のオーラが、二人を包んでいる。
スペース「それにしても、弟とあのゴジラは本当に合わないみたいだな。」
Jr.「と、父さん・・・」
チャイルド『ねぇ、とうちゃん。あのにぃちゃんたちもごじらなんだよね?なのに、なんであんなにいやそうにしてるんだろ・・・?』
「‐」ゴジラ『ん~っと・・・たぶん、にんげんでもすききらいがあるみたいなかんじか?昔のしまとしゅんみたいな・・・』
やや心配げに見る彼らをよそに、二人の険悪さは更に悪化して行く。
ラゴス・ゴジラ「お前、そんなんでよく人間がいる世界で生きてるよな!!」
「VS」ゴジラ「人間なんて愚かな連中共、俺の知った事じゃない。」
ラゴス・ゴジラ「ほんと、そんな事しか言えねぇのかよ!お前みたいな奴を『冷血野郎』って言うんだ!!」
「VS」ゴジラ「お前・・・会ってからずっと目障りで耳障りなんだよ。」
ラゴス・ゴジラ「だったらどうすんだ?喧嘩売るなら、買うぜ?」
「VS」ゴジラ「・・・黙らせないと、駄目みたいだな・・・!」
目を赤く染め、まさに「目の色を変えて」睨むVSゴジラと、憎悪にも近い感情の眼差しで返すラゴス・ゴジラ。
このままでは、ゴジラ同士の闘いが起こりかねない。
「‐」モスラ『あ、あの・・・何だか向こうが大変な事になっていますが・・・』
イシュタル「あっ、ゴジラ!?」
レオ「もう、ゴジラさんったら!」
シン「ゴジラ!いい加減にしなさ・・・!?」
「‐」バラン『不味い、そろそろ彼奴らを止めた方が良いのでは無いか・・・?』
Jr.「父さん!こんな時に何やってんだよ!」
スペース「全く、本当にあのバカは昔から・・・!?」
二人を止めに行こうとしたレオ・シン・Jr.・スペースの前に、一つの影が立ちふさがるかのように現れた。
Jr.「・・・機龍?」
そう、機龍だ。
無表情のまま彼は二人の元に向かったかと思うと、両手で二人の肩を掴む。
ラゴス・ゴジラ「なっ、何だよ!あんた!」
「VS」ゴジラ「機龍さん、邪魔をするな・・・!」
機龍「・・・」
Jr.――機龍、きっと同族同士の闘いを止めさせようとしてるんだ。
かつて俺と機龍が闘った時のような、哀しい闘いを繰り返させないようにしてるんだ・・・!
心の中でそう推し量るJr.の目線の先には、二人の肩を掴む機龍がいた。
機龍は二人の顔を一瞬だけ見た後、こう呟いた。
機龍「・・・砕け散るまで、戦え!」
Jr.&スペース「「こらぁーっ!!」」
あまりに場違い過ぎる、機龍の座右の銘を聞いたJr.とスペースは瞬時に彼の元に走ると、そのまま機龍の後頭部に力強い跳び蹴りを浴びせる。
機龍は形容しがたい声を吐きながら海に飛ばされ、彼が作った巨大な水柱が海面に立つ。
周囲が何とも言えない微妙な空気に支配されるが、これこそが機龍の狙いであった。
ラゴス・ゴジラ「・・・あーあ、なんか馬鹿馬鹿しくなっちまった。」
「VS」ゴジラ「・・・同感だ。もう全てがどうでもいい。」
水柱が砕けて水渋きとなり、二人に向かって降り注ぐ。
機龍の行動とこの小雨は、二人の頭を冷やすのに十分であり、その証拠に「VS」ゴジラの目は元の色に戻っていた。
機龍「全く・・・本当に手加減知らずの若輩者ばかりだな・・・けど、馬鹿な事にはならずに済んだから、これで満足だろう?」