Who will know‐誰が知っているだろう‐
クリス「ちっ!ちょこまかと・・・
んっ?その身のこなし・・・貴方、もしや出来損ないのゴジラもどきの一族ね?うふふっ、実は私・・・一度その出来損ないの生き残りに力を吹き込んで、人間達にけしかけた事があるの。」
ジラ『な、なんだって!?』
クリス「結局最後はお義兄様の説得で油断した所を、人間の新兵器でトドメを刺されて死んだんだけど、期待外れだったわ。私が授けた力に溺れ、一族を殺した人間への憎しみに囚われた末の自業自得だから、仕方ないと思うけど・・・何もかも半端な所が貴方とそっくりね?しかも、貴方に至っては性別すらどっちつかずの超ハンパ者。」
ジラ『・・・それ以上言うと、ただじゃおかないよ・・・!』
クリス「それ以上言うと、どうするって言うの?男でも女でも、ゴジラでもない出来損ないのマグロさん?」
ジラ『ヤロォォォブッコロシテヤァァァル!!』
容赦なきクリスの悪辣な罵倒は、人間界の怪獣の中でも特に同族への仲間意識の高いジラの怒髪、天を突くには十分だった。
普段の陽気さからは想像も出来ない、激怒の感情に満ちた狂気の絶叫を周囲に響かせ、ジラは天高く跳躍して高速で回転したかと思うと、その遠心力を保ったまま右足を突き出し、クリスに激しい飛び蹴りを喰らわせようとした。
が、クリスは想定内とばかりに杖先に宇宙エネルギーを集中させると、そのままジラの足をロッドで受け止めた。
クリス「残念だったわねぇ?適当に挑発して怒らせれば動きが単純になると思ったわ。だから貴方の一族はいつまでも紛い物なのよ!」
ジラ『・・・残念なのはあんたの方さ、牛オバサン?』
クリス「なんですって・・・?もう一回言ってみなさいよ、この偽者がぁ!!」
ジラ『何度でも言ってやる!このオバサン!冷血○○○!そりゃ、この私の名付けて「究極!ジライダーキック」であんたを倒せれば、これ以上嬉しい事はないよ・・・でもね、それがきっと無理なのも分かるのさ・・・だから!』
クリス「!?」
ジラの本当の目的と、それが分かったクリスが驚愕した理由・・・そう、ジラの後方に赤く燃えるオーラを纏ったゴジラ・レッドがいたからだった。
この状態の彼は、本気の一撃を放つ合図だ。
ゴジラ・レッド「全く、『野郎オブクラッシャー』て何語だよ。まぁそのお陰で、すっかりリミットブレイク状態だけどな!!」
クリス「何故!?お義兄様にはありったけの追撃結晶を向かわせた筈よ!」
ゴジラ・レッド「そのありったけを、アイツが全部消してくれた!」
クリスが左側に目をやると、鞘に納まったままの刀を構えるレジェンドと、彼の手により十字架から開放された「‐」ゴジラ・チャイルドがいた。
まるで力強く、だがしなやかに打ち払った尾のように、レジェンドはあえて鞘に納めた刀で空を切って作り出した真空波でクリスの結晶攻撃を全て破壊し、なおかつ十字架から二人を解放していたのだった。
「‐」ゴジラ『はぁ、助かった・・・ありがとな。』
チャイルド『ありがとう!おじさん!』
レジェンド「・・・無事なら良かった。」
クリス――嘘でしょ?膨大な宇宙エネルギーを練り上げて作ったあの十字架が、いとも容易く壊されるなんて!
しかも十字架を壊しながら、結晶攻撃からお義兄様を守った!?
なんて奴なの!?あのゴジラ!?
ジラ『そう、私には最高のゴジラ仲間がいるのさ!さぁ!ここからがあんたの本当のクライマックスだよ!』
ジラが再び跳躍してクリスから距離を取るのを見計らい、レジェンドは刀を両手で水平に持つ。
すると鞘の先端から青白い光が段々と鍔(つば)に向かって行くかのように、順序を経ながら輝きを放った。
ゴジラ・レッド「アイツも本気か・・・だが、先にオレから行くぞ!!
テメェ、さっきクリスタラックの話をしてたよな?あの時はテメェに論破される所だったが、やっぱり偽善者って言われようが!オレはアイツの憎しみに付け入って、遊びでアイツの運命を歪めたテメェを絶対許せねぇ!!
だから!アイツの分まで!こいつをくらえぇぇぇぇぇッ!!」
先のクリスの話に登場した、かつて彼女によって力と引き換えに一族を根絶やしにした人間への憎悪を、運命を弄ばれ、ゴジラ・レッドの前であまりにも哀しい最期を遂げた怪獣・クリスタラック。
彼女の無念を込めた叫びと共に、ゴジラ・レッドは筋骨逞しい肉体に漲るパワーの全てを拳に込め、突き出した両拳からの業火をクリス目掛けて発射する。
レジェンド「・・・一撃、必殺!」
レジェンドもまた、知り合いを貶めようとした敵(かたき)への怒りを刀を握る両手に乗せ、ゆっくりと・・・だが力強く、光が全体にまで達した鞘を刀から引き抜き、眩いまでのチェレンコフ光に包まれた刀身が剥き出しになる。
鞘を背中に戻し、両手で柄を握って目の前のクリスを狙い定めて空を切るや否や、刀身の光が青い斬撃へと変わり、真っ直ぐクリスに向かって行く。