Who will know‐誰が知っているだろう‐











それから年月が過ぎ、場所となる世界を変えながら多世界の怪獣達の「招待」が何度も繰り返され・・・今度は人間界を舞台に「招待」が行われる事になった。
今まさに、何処かの山奥に目掛けて光のエレベーターが降りて行き、別世界の怪獣が招待された・・・



シン「とうちゃ~く!!さっきエレベーターが揺れた時はびっくりしたけど、怪我も無いし大丈夫・・・あれ?」



が、「怪獣界」のエレベーターから出てきたのはシンだけであった。
目的地が分かれている場合を除いて、基本的に同世界の怪獣はまとめて「招待」される事になっており、例外は1954年のラゴス島に行った時だけである。
怪獣界からはシンの他にラゴス・ゴジラとスペースが「招待」されていたのだが、どうしてか二人の姿は何処にもなかった。



シン「ゴジラ?スペゴジ?どこ行ったの?お~い!!ゴジラ~!!スペゴジ~!!いたら返事して~!!
・・・おっかしいなぁ、行く時は一緒だったのに・・・」



突如、行方不明になった連れのラゴス・ゴジラとスペースを呼ぶシンだが、答えが返って来る気配は無い。
理由の分からない早々のトラブルに、流石のシンもわずかな不安を感じるが、それでもすぐに気を取り直して辺りを見渡す。



シン「まっ、あの怪獣界最強のゴジラ兄弟ならはぐれてもきっと大丈夫よね!とりあえず、ここは何処かなっと・・・」



とは言えど、ここは人の気配どころか動物すら見当たらない、木と空しか見えない山奥であり、自然とシンの目は眼前の小さな家屋に釘付けになる。
どうと言う事の無い一階建ての木造の家屋だったが、その家屋は何故か無性にシンの興味を引いた。



シン「この家以外、特に何も無いなぁ・・・とりあえず、この家に入っとこ。」



ひとまず家屋に入る事にしたシンは、家屋の戸を開けながら中を伺う。
中は簡単な靴脱ぎ場が足元に、それ以外の床は少々逆剥けになった畳が一面に敷かれており、部屋の右脇には何冊かの本と折り紙などが置かれた小ぶりなちゃぶ台が、奥には色褪せた金屏風が壁代わりに飾られており、左脇には小さな窓がある。



シン「すみませ~ん!誰かいらっしゃいま・・・!」



部屋のちょうど中央には男が一人、無言で正座しながらシンを見ていた。
上に行くに従って紅から群青、そして紫の色合いへと変わる独特的な色をした狂言のような着物姿に、腰から垂らした折鶴の紋様が入った黄色の帯。
真っ白な紙で巻き取る形で纏められた身の丈以上の非常に長い紫色の髪と、その髪の先端から無数のヒトガタが湧き出ているように見える白い纏め紙。
竜の頬当を付け、硬く口を閉ざし、何者も萎縮させる見開かれた三白眼でただただシンを見続ける、感情を探る事も難しい顔。
城主の間に鎮座する鎧武者にも似た彼に圧倒されながら、シンもまた彼から目が離せないでいた。



シン「あなた、この家の人?もしかして、あなたがあたし達を呼んだの?」



シンの質問に、彼女から目を離さずに深く頷いて返す男。
やはり、男の表情は何一つ変わらない。



シン「そうなんだ!あたし、シンって言うの!よろしくね。あなたの名前は?」



男に臆する事なく、男との距離を縮めようとするシン。
相変わらず男は口を閉ざしたままだったが、立ち上がって部屋の右脇のちゃぶ台に向かうと、一枚の紙を取ってシンに見せる。
紙には力強い筆文字で彼の「名前」が書かれており、それを見たシンは思わず驚きが隠せなかった。



シン「ええっと・・・『シン・呉爾羅』・・・って、へえっ!?
あたしと同じ名前の、ゴジラ!?」
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好釦