Who will know‐誰が知っているだろう‐
その子供は、いつの間にか「そこ」にいた。
「・・・」
ここは何処の世界なのかも分からない孤島。
今この島では三つの世界から四人の怪獣が何者かの手で集められ、一部は対立しながらもそれを乗り越え、交流を深めている所だった。
しかし子供はその輪に混ざろうとせず、岩陰からただ一団を見つめている。
シン「あっ、こんなとこにも怪獣がいた!ねぇねぇ、君の名前は?あたし、シンって言うの♪」
しばらくして、気分晴らしに砂浜を歩いていたシンが子供に気付き、話しかけた。
だが子供は返事も相槌もせず、大粒の汗を流し、肩で息をしながらその何処か虚無感すら感じる三白眼で、じっとシンを見つめている。
シン「・・・あれ?なんかしんどそうだけど大丈夫?だから何も話せないの?」
ただ喋らないからだけでは無い。
色素の薄い黄土色の短髪、眉毛が無く瞬きもする事を知らぬように見開かれ続ける黒い三白眼。
首に巻かれた、何故か赤い斑点が幾つもある、包帯にも見える帯状の晒。
腕があるのかも分からない、袖口の塞がった紅色の甚兵衛服。
力無く砂浜に両膝を着けた、裸足の足。
誰が見ても、この少年は異質だった。
シン「まぁ、ゴジラがいたら何思ってるのかは分かるし、治癒も出来るし・・・みんなも呼んで来よっ!ごめん、しんどいと思うけどもうちょっとだけここで待ってて!もうちょっとの辛抱だから、そこでいい子にしててね。」
しかしながら数々の強豪怪獣を打ち負かし、守護神の一族でありつつも母親であるシンにとって、そんな印象程度はコミュニケーションの障壁にはならず、むしろまた新しい異世界の怪獣仲間に出会えた喜び、体調を崩した子供が一人でいるのならば絶対に手を差し伸べたいと言う母性が圧倒的に上回っている状態だった。
故郷の怪獣界の者達と変わらない、誰にでも元気を与える弾けるような満面の笑みを少年に見せながら、シンは親友・娘・先ほど出来た友達の元に走って行く。
「・・・」
シン「ええーーっ!?あの子、いなくなってるじゃない!!」
少し経ち、他の怪獣達を連れてシンが戻って来た。
が、少年は忽然と姿を消してしまっていた。
イシュタル「母さん、ほんとにさっき聞いたみたいな子がいたの?」
シン「いたのよ!ほんとに!」
スペース「誰かいるような気配は無かったが・・・?」
ラゴス・ゴジラ「シンの言う通り、ほんとにいたなら残念だなぁ。オレなら別にいくらでも力になるのに。」
チャイルド『あいたかったなぁ・・・』
「‐」ゴジラ『そうだな・・・こまってる人がいたらまず助けろ、ってしまも言ってたし。』
「‐」バラン『然し、私達が此処に到着掏る迄に其れ程時間は無かった筈だが・・・』
「‐」モスラ『もしかしてこの島に、わたくし達の他に誰か住んでいるのでしょうか?』
Jr.「もしそうなら、俺達をここに連れて来た存在と関係があるのかもしれないな。」
レオ「それに弱っていたなら、ちゃんと助けたかったな・・・どうして逃げちゃったんだろう?」
「VS」ゴジラ「・・・俺はなんとなく、そいつの気持ちが分かる気がする。」
機龍「俺も。どうもナイーブな子みたいだし、そう言う子は他人の存在自体がストレスになったりするものだから。」
シン「けど、あたしなんか悔しい。あの子に嫌われてでも、弱ってるなら無理矢理にでも治癒したかったのに、あそこで離れてさえなかったら・・・
よぉし!!もし次会えたら、絶対に助けるんだからね!!」
「・・・!」
その頃、逃げ出した少年は島全体から見てシン達がいる所から半周過ぎた辺りの砂浜に倒れ込んでいた。
精一杯息を吸い、全身は汗にまみれ、少年は一歩も動く事が出来ないでいたが、両目だけは強く見開き続けながら彼方まで広がる蒼穹を仰ぐ。
「・・・」
そして声を出さずに何かの単語を呟き、少年の体は蒼穹より来たる光の柱に包まれ、彼がいた元の世界へと連れて行く。
「VS」ゴジラ達の故郷、「人間界」へと・・・
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