Give me‐君の心を解き放つ物語‐







「招待」から少し経ち、怪獣界・怪獣島のアッシリ湖の湖畔に、宝琳を片手に一人うなだれながら座り込む僧バランの姿があった。
彼はすぐ近くにはビオランテ(本体)と僧バランが連れて帰って来たレオゴンがおり、意識を共有している蔦の分身の記憶から僧バランの落胆の理由を知りつつ、悠然と植物に水をやっている。



僧バラン「はぁ、何故だ。何故あの時(タイミング)で拙僧を帰したのだ、神よ・・・」
ビオランテ「・・・♪」
僧バラン「神よ、運命よ、『彼女』よ。何故、貴方達はこうも残酷な事が出来るのだ・・・」
レオゴン『・・・アーメン。』
僧バラン「せめてあと1秒、待ってくれれば琥珀の君と拙僧は一瞬だが恋人になれた・・・だのに!」
ビオランテ「・・・~っ!こら!そこのフェミニスト!男のくせにいつまでもいつまでもしょぼくれよってからに!そんな事ばかりされると、折角の私の自慢の花々までもしょぼくれてしまうわ!」
僧バラン「お主はいつでもその調子だな、ビオ・・・だが、怪獣だって嘆きたい時くらいあるのだ!そしてそれは、今なのだ・・・くうっ、宝琳は本当にいつでも旨いなぁ・・・」
シン「あれ?バランったらなんで宝琳食べながら泣いてるの?もしかして、またバラン同士で喧嘩でもしちゃった?」



と、僧バランに話しかけて来たのは同じく「‐」世界に招待されていたシン達だった。
シン・イシュタル・フェアリーはインファント島で他のモスラ姉妹と、ラゴス・ゴジラとスペースは東京で「‐」ゴジラやチャイルド、バラゴン達と会っていたのだ。



僧バラン「おお、シンにゴジラに愉快な仲間達か・・・こんな姿を見せて申し訳無い。拙僧は今、実ったばかりの恋に破れた悲しみを癒す宝の味を、存分に味わっている所なのだよ・・・」
スペース「随分な言い方だな。」
イシュタル「えっ!バラン、フラれちゃったの!?」
ビオランテ「前にこやつが話していた、アンバーと言う女のバランにな。」
ラゴス・ゴジラ「えっ?とりあえずバラン同士で喧嘩しなかったんだろ?だったらいいじゃんか。」
イシュタル「そう言う問題じゃなくて、失恋は勝負に負けるより辛いものなんだよ、ゴジラ。」
ラゴス・ゴジラ「しつれんが、負けるより?なんでなんだよ?」
イシュタル「ええ~っ。もう、ゴジラはなんでいつまでもこう言う事が分からないんだろう・・・」
シン「まっ、ゴジラなんだから仕方ないわよ。そっか、それは残念だったわねぇ。でもあたしなら泣くくらいなら新しい相手探すか、またアタックしてみるけど。」
フェアリー『ネバギバ、ダネ!』
スペース「実が枯れようと、種が落ちたらまた実は実る。そう言う事だ。」
ラゴス・ゴジラ「おう!何だか分からねぇけど、バランも最後まで諦めなきゃいいんだって!」
レオゴン『アキラメタラ・・・シュウリョウ・・・』
僧バラン「・・・うむ、皆の言う通りだな。この宝琳のように、拙僧もこの恋を諦めたりはせん!たとえ琥珀の君に想い人がいようとも、いつか振り向かせてみせるぞ!怪獣は長命が長所、シンのように諦めなければ必ず機会(チャンス)は・・・」
ビオランテ「それ以上余計な事を言うでない!」
僧バラン「ぐはっ!」
ラゴス・ゴジラ「チャンス?シンもなんか頑張ってる事あんのか?」
フェアリー『ダカラ、シンハ・・・』
シン「フェアリもそこまで。えっと、そりゃあたしもモスラ一族の誇り高き女戦士なんだから、いい加減ゴジラくらいコテンパンに出来ないと、って思って♪」
ラゴス・ゴジラ「おっ、言ったな!じゃあ明日オレと勝負だ!最近シンと戦ってないし、ちょうどいいぜ!」
シン「いいわよ、やってやるわっ!」
イシュタル「・・・うーん、お母さんったらまだ待つ気なんだね・・・」
スペース「オレは案外お似合いだと思っているのだが・・・弟がああではな。」
ビオランテ「シンもよりによって、一番厄介なタイプを好きになったものよのお。」
僧バラン「う、ううん・・・」
フェアリー『ハイバラン、ゴローノ持ッテ来タ今日出来タテノホウリンダヨ!コレ食ベテ、元気100倍!」
僧バラン「おお、フェアリーよかたじけない!拙僧の恋の道(ロード)の完走を願って、いただきます!・・・ん~っ!うまい!流石ゴロー、相変わらずいいのを持って来る!」
レオゴン『ホントウノタタカイハ・・・ココカラ・・・』
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好釦