Give me‐君の心を解き放つ物語‐




僧バラン「よし、では・・・行くぞ!あ、あん、ばーよ・・・せ、拙僧の子をう・・・っ!?」



僧バランが何か言いかけた、その時。
空から光の柱が降り注ぎ、僧バランとレオゴンの体が宙に浮いて行く。
彼らの帰還の時が来たのだ。



僧バラン「なっ!こんないい所で時間切れ(タイムオーバー)か!もう少し、もう少しだけ待ってくれ!」
ビオランテ『お前のフェミニンさとやらでは、時間がいくらあっても無駄じゃ。向こうで私の本体が待っとる、愚痴くらいは聞いてやるから必ずレオゴンを連れて来るのじゃぞ~!』
アンバー『残念ですね・・・ですが、また必ずお会いしましょう。法師様。それでは、さようなら・・・』
僧バラン「ま、また会おうぞ!同志!そして、あ、あん・・・!」
レオゴン『・・・サヨナラ!』



最後まで何か言い遂げる事の出来ないまま、僧バランはレオゴンと共に怪獣界へ戻って行った。



アンバー『・・・行ってしまわれましたね。ところで、ビオランテ様は法師様とレオゴン様と同じ世界の方ですよね?一緒にお帰りにならないのですか?』
ビオランテ『この体は私の蔦が集まって出来たもの、つまりは分身のようなものじゃ。だからあの柱も反応せんかったんじゃろうな。じゃが、あまり長居をしない方が良いのも事実。そろそろ私もおいとまするかの。そこのマタギバランの事は任せたぞ。』
アンバー『はい。お任せ下さい。』
ビオランテ『アンバー。その見掛けによらぬ気丈さと大胆さ・・・気に入ったぞ。お前の心の中の「本命」との恋、叶うとよいな。』
アンバー『あ、ありがとうございます。それでは、またお会い出来る日を信じて・・・さようなら。』
ビオランテ『うむ、またの。』



するとビオランテの体が細やかな粒子に変わり、みるみる内に目の無い口だけの顔が付いた巨大な蔦に変化して行く。
そして蔦は空へ一吠えし、地面の中に姿を消して入った。



アンバー『・・・別世界の怪獣との出会いは、なんと良いものなのでしょう。次もまた、違う怪獣達と出会いたいものです。さて・・・』



ビオランテを見送ったアンバーは、未だ石像の様に硬直状態を続けている「‐」バランに近付いて行く。



アンバー『バラン、もう法師様もビオランテ様もレオゴン様もお帰りになりましたよ?わたくし達も早くモスラ様達と合流しないと。』
「‐」バラン『・・・』
アンバー『バラン?いい加減行かないと・・・もう、わたくし瞬様と付き合ってしまいますよ!』
「‐」バラン『っ!!そ、其れは事実なのか!・・・ん?』
アンバー『ようやく正気に戻りましたね。皆様お帰りになりましたよ。』
「‐」バラン『そ、そうか・・・はっ!待てアンバーよ、先程の在れは何の真似だ!』
アンバー『法師様の願いを、ほんの少しの間だけ叶えただけです。なので今度は・・・バランの願いを、叶える番ですね。』



そう言うとアンバーはやや恥ずかしげに「‐」バランの左手を取り、自分の右手と袖が絡まらないように組み合わせると、前へ歩き出す。
所謂「恋人繋ぎ」だ。



「‐」バラン『こ、此れは・・・!』
アンバー『人間世界の事は、多少ご存知ですよね?この歩き方は、人間の恋人同士がするものなのですよ。』
「‐」バラン『つ、詰まり・・・代替の恋人体験、と言う理屈か。』
アンバー『・・・申し訳ありません。わたくしの心に、嘘は付けないので。ですがだからこそ、何かバランの心の埋め合わせがしたいので・・・』
「‐」バラン『・・・其う言う事か。為らば混同するな、私は同志と違って御前に好意等無いと言って要るで有ろう。』
アンバー『そう・・・でしたね。わたくしのお節介でした。』
「‐」バラン『・・・然し、今は御前の御節介に付き合って遣る。明日からは又、同類の関係だ。』
アンバー『・・・心得ました。』



まるで夫婦のように・・・だが、あくまでも「仲間」である二人のバランは再び静寂に包まれた聖地を後にし、林の奥へと消えて行った。



アンバー――・・・そうは言ってもバラン、何故貴方は少し恥じらいめいた笑みを浮かべているのでしょう?
それに・・・バランがわたくしをそう見て下さっていると聞いて、内心嬉しかったのも・・・貴方には言えませんね。
どうか、本当の神がいらっしゃるのなら・・・時がわたくし達を分かつその日が来るのが、少しでも遠い事を祈ります。
その日まで共に過ごし、共にこの世界を守っていきましょう・・・
7/10ページ
好釦