Give me‐君の心を解き放つ物語‐




アンバー『あ、あの・・・』



と、ここで沈黙を保っていたアンバーがようやく口を開いた。
やや気まずそうに、かつ恥ずかしそうに小さく右手を上げ・・・彼女は言い放った。



アンバー『・・・もしかして、わたくしへの恋愛関係のお話しをしているのです、よね?それなら・・・わ、わたくしにはもう・・・好きな殿方がいらっしゃる、のですが・・・!』



「‐」バラン『・・・っ!?』
ビオランテ『ほう・・・アーメン、じゃな。』
僧バラン「な・・・なななっ、なんとぉぉぉぉ~っ!!」



アンバーの衝撃的な言葉に「‐」バランはただ静かに愕然し、僧バランは狂乱の叫びを上げる。
薄々勘付いていたであろうビオランテは、一言呟くだけだったが。



ビオランテ――・・・矢印の向きの違い、じゃな。
このバラン共がアンバーに好意があるのは分かっていたが、会話を聞いていればアンバーにバラン共への好意が無い事が分かったからの。
まぁ、恋に敗れるのもまた経験じゃ。



アンバー――・・・法師様はともかく、バランには絶対に言えませんね・・・
わたくしが愛する殿方が、人間だなんて。






隼薙「へ、へっくしょいっ!」
穂野香「どうしたの、お兄ちゃん?もしかして風邪?」
隼薙「いや、そんなんじゃねぇって言うか・・・これ、誰か俺の噂でもしやがったな?まぁ多分、ラピスかラズリー辺りだろうがな。」
穂野香「それかアンバーかも。今バランと、別世界のバランに会いに行ってるし。はぁ~、私も行きたかったなぁ~。」
隼薙「だったら俺の悪い噂を流さないで欲しいもんだぜ。帰って来たらあいつに聞いとかねぇと。」
穂野香「もう、アンバーがそんな事言うわけないでしょ?考え過ぎ。」



同刻、愛媛県・久万高原町の岩屋寺。
あの邪馬台国がこの地に存在した遥か昔より、アンバーが留まっているこの寺で2人の兄妹が仲睦まじく話をしていた。
妹の初之穂野香はアンバーと勾玉で繋がり、力を与える「白虎」の巫子にしてアンバーのパートナーと言える存在。
兄の初之隼薙(はやて)は穂野香が産まれたその日から彼女を守り、溺愛するシスコンであり・・・アンバーの想い人である。
しかし、アンバーが身分の違いから中々隼薙に好意を伝えられず、穂野香もアンバーの心中を悟って口を出していない。
隼薙もまたアンバーはあくまで家族のような存在としか認識していないので、彼女の想いを知る事はない。
別世界で例えばシンとラゴス・ゴジラのように、ここでも成就が見えない恋が繰り広げられていた。



穂野香――そう。アンバーはお兄ちゃんが大好きなんだから、そんな事絶対言わないもん。
恋してる人の、悪口なんて・・・
ねっ、そうだよね。アンバー。
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好釦