Give me‐君の心を解き放つ物語‐




「‐」バラン『此処は我らの聖地だ・・・早々に消え去れ、愚者め。』
ヒジュラス『そういえばそうだったな。いや、むしろちょうど良い!ここでお前を倒し、姫に教えよう。誰が一番君に相応しいかを!』
僧バラン「待てぃ!」
ヒジュラス『むっ、何だお前は?』
僧バラン「貴様に名乗る名などない!だが、琥珀の君・アンバーに相応しいのはこの拙僧!バラン一族でも無い部外者はとっとと巣に帰れ!」
ヒジュラス『坊主風情が、この我に無礼な!恥を知れ!それとも、見せしめにまずは貴様から葬ってやろうか?』
僧バラン「あまり手荒な事はしたくないが、仕方がない・・・我らバラン一族の誇りと、この心からの愛にかけ!お主を倒す!」
アンバー『法師様・・・』
「‐」バラン『・・・好きにしろ。』



錫杖をヒジュラスに向ける僧バランと、周囲の景色が歪む程の高熱で全身を覆うヒジュラス。
一触即発、両者がいつ戦闘に入ってもおかしくない状況であった・・・が、突然ヒジュラスを囲むように現れた蔦達が、それを打ち破った。



ヒジュラス『っ!?なんだ、この蔦どもは・・・!』



億万年もの永き時を生き、超高熱ですらもろともしないビオランテの蔦はヒジュラスに絡み付き、ヒジュラスを宙高く持ち上げる。
自慢の高熱でさえも敵わない無数の蔦に、ヒジュラスはなすすべが無い。



ビオランテ『どいつもこいつも、女心の分からぬ馬鹿者め!人の恋路を邪魔する者は、蔦に打たれて飛んで行けっ!』



そして、蔦はヒジュラスの超高熱をも上回るビオランテの怒りを乗せ、ヒジュラスを凄まじい勢いで投げ飛ばした。



ヒジュラス『うおおおおお~~~っ!!
お、おぼえてい・・・』



捨て台詞を言い終わる間も無く、ヒジュラスは瞬く間に空の彼方へ飛んで行き、やがて見えなくなった。



アンバー『消えてしまい・・・ましたね・・・』
「‐」バラン『良い様だ。カイジュウの風上似も置けぬ王者気取りめ。』
レオゴン『ブジデ・・・ヨカッタ・・・』
僧バラン「『キラーン☆』と言う効果音が聞こえてきそうだな。流石ビオ・・・拙僧の手で倒せなかったのは残念だが、邪魔者が消えたのでよしとしよう。さて!琥珀の君よ、話の続きをし・・・」
ビオランテ『それ以上阿呆な事をするなら、次はお前を飛ばしてやろうかの。』



再びアンバーの肩を掴もうとする僧バランの手を、ビオランテの蔦が静止する。
動かせない・・・と言うより、動かしてはいけないと言う脅迫観念からか、僧バランの手は凍ったかの様に固まった。



ビオランテ『・・・それで良い。機会は均等でなければの。ほれ、そこのマタギバラン。お前も何か言いたい事があれば言うが良い。』
「‐」バラン『・・・私か?』
ビオランテ『当たり前じゃ。こやつから話を聞いた時から薄々思っていたが、先程からの会話を聞いて確信した。ここから先は私からは言わん、後はお前の口で言うんじゃ。』
「‐」バラン『な・・・っ!』



「‐」バランの胸中に交錯する、アンバーへの「想い」。
だが、素直にその想いに向き合えない「‐」バランはただ唇を噛み、軽く下を向きながら拳を握り締める。



僧バラン「ちょっと待てビオ!機会は均等にと言うが、この世界の住人の同志の方が機会が多いに決まっているだろう!これでは不公平ではないか!」
ビオランテ『こやつはその機会を、自分で潰してしまっておるのだ。それこそ、何度も・・・不器用な男じゃ。お前さんと違ってな。』


「‐」バラン――彼の植物女め、余計な真似を・・・!
此れでは、言わないと・・・否、違う!
アンバーは飽くまで仲間、反んな感情を持って等・・・然し、アンバーに対する同志やヒジュラスの言動への、此の不愉快な感情は・・・!
矢張り、私も・・・
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好釦