Give me‐君の心を解き放つ物語‐




僧バラン「気になる・・・はっ!そうだ!拙僧は君に会う為にここに来たのだ、アンバーよ!」



ここでビオランテの蔦に叩かれ、再び倒れていた僧バランが唐突に起き上がり、アンバーの手を掴む。
困惑するアンバー、動揺する「‐」バラン、やや冷ややかな目で見つめるビオランテをよそに、僧バランは目を輝かせながらまくし立てる様に話を始める。



僧バラン「同志から話は聞いていたが、想像を軽々と超える素晴らしいおなごだ・・・同志も讃えるわけだ。拙僧からすれば、おなごとしての見本だな。」
アンバー『そ、そうですか?ありがとうございます。』
「‐」バラン『貴様、同志の誓いを解消去れたいのか!アンバーには手出しは差せんと・・・!』
僧バラン「悪いな、同志よ・・・最初は応援しようと思ったが、彼女は拙僧の心をも捉えてしまった・・・!今より、お主はライバルだ!」
「‐」バラン『宿敵(ライバル)、だと?』
ビオランテ『「とも(同類)」の間違いではないのかの。』
レオゴン『・・・カノジョノ、オカゲ・・・』
僧バラン「一度付いた恋の導火線は、もう止まらん!同志よ、そうして頑なに本心を隠して常に一歩引いていたのが間違いだったな!フェミニストはいつもおなご優先だが、今は拙僧から行かせて貰う!アンバー・・・いや、琥珀の君!」
アンバー『は、はい?』
僧バラン「どうか、拙僧の子をうん・・・」



僧バランがアンバーの肩を掴み、何かを言いかけた・・・その瞬間。
空から人間大の火の玉が一つ、凄まじい速さで彼ら目掛けて急降下で落ちて来た。



「‐」バラン『っ!離れろ!敵襲だ!』



一行はすんでの所で火の玉から逃れ、地面への直撃と同時に起こった爆発は土埃を呼び、辺り一面は灰色に包まれる。
しかしその刹那、爆心源から発せられた爆風が土埃を瞬く間に吹き飛ばし、そこにいたのは火の玉の正体である一人の男だった。



???『ふん、奴にダメージは与えられなかったか。だが、これはほんの挨拶のようなもの・・・我の宿敵ならば、これくらいは避けて貰わないとな・・・バラン!』



まず目を引く、あばら骨の様に白いラインが施された重厚な漆黒のマント。
マントの隙間から見える、真紅のロイヤルスーツ。
紫の短髪頭に自己主張の激しい豪勢な王冠を付けた、自信に満ち溢れた鋭い眼差し。
そして、首筋程あろうかと言う白く長い顎髭。
彼の名はヒジュラス。ある山奥の村で「秘鷲羅神(ひじゅらのかみ)」として崇められている怪獣であり、「‐」バランとはここ数年同じ「神」として何度も戦っている「宿敵」である。
ただ、それはヒジュラスが一方的に「‐」バランに対抗心を燃やしているだけで、「‐」バランからしてみれば面倒な厄介者でしかなく、火の玉の正体がヒジュラスと知るや「‐」バランの表情は一気にしかめっ面に変わった。



僧バラン「なっ、何だお主は!」
「‐」バラン『矢張り貴様か、ヒジュラス。本当に御前と言う奴は面倒な時にしか現れぬ・・・』
ビオランテ『なんじゃ、こやつもお前の知り合いか。』
「‐」バラン『知り合いと認めたくも無い奴だがな。ヒジュラスと言う、物好きにも程の有るニンゲン共の神を気取って満足して要る、愚者の手本だ。』
ヒジュラス『バラン、貴様ぁ!!言わせておけば・・・んっ、なんと!そこにいるのは我が妃、アンバー姫ではないか!』
僧バラン「なっ!!?なん・・・」
「‐」バラン『只の虚言だ。気に掏るな。』
アンバー『ヒジュラス、どうしていつもこんな乱暴な事ばかりするのです!いい加減にして下さい!』
ヒジュラス『それは邪魔者のバランを倒し、君に我の素晴らしき力と、我こそが君には一番相応しい事を示す為なのだよ、姫。偽神バランが屈服すれば、君も分かる筈だからね。』
「‐」バラン『偽神は貴様だ。其の実力に見合わぬ態度と、逃げ足だけは立派な愚者め。』
僧バラン「とどのつまり、拙僧の新しいライバルと言うわけだな・・・!」
ビオランテ『馬鹿者を止める手間が省けたと思ったら、新しい馬鹿者が来たようじゃな・・・ん、どうしたのじゃ。レオゴン。』



ビオランテがレオゴンに目を向けると、レオゴンは何かに覆い被さるような体勢をしていた。
レオゴンの足元をよく見てみると、白くて何処か儚い・・・が、力強く咲いている花が見えた。



レオゴン『イノチ・・・キエナイ・・・』
ビオランテ『そうか、この花を・・・お前も、強さと優しさを持っているんじゃな。それに比べて、あの馬鹿者は・・・!』
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好釦