ゴジラ7・7‐怪獣軍団、都会へ行く!‐








鍵島に戻った怪獣達は、各々の行き先で起こった出来事を語り合っていた。



ラゴス・ゴジラ「それでさ、そこでバランと一緒に瞬が言ったんだよ。『この愚か者が!!』ってさ!」
シン「おぉ~!なんか、瞬ってクールな人間って聞いてたけど、案外熱い所もあるのね♪」
フェアリー『スペゴジミタイダネ!』
「‐」バラン『スペースゴジラと同じか・・・確かに、言い得て居るやもしれんな。』
ラドン「悪い事をする人間もいれば、それを戒める人間もいる。やっぱり、人間って多種多様ですね。」
バラゴン「話してみて、第一印象と違う人間さんは多いからね~。その瞬って人間さんは、無口なだけでアクティブな人なんだね~。」
「‐」モスラ『それに瞬は正義に関しては、容赦を知らない方ですからね。そうそう、わたくし達は遥とお話をしながら編み物をしていましたの。』
フェアリー『コンナノ、作ッテクレタンダヨ~!』
ラゴス・ゴジラ「おおっ、フェアリーそっくりじゃんか!お土産貰って、いいな~!」
チャイルド『わぁっ!かわいいね~!』
イシュタル「そうでしょ♪お裁縫も上手かったし、わたしの人形も嬉しそうに見てくれたし・・・遥って、お姉さんみたいな感じだったなぁ。」
シン「今日は編み物が中心だったから、次はもっと色々聞かないと!えっと、まずはアレを聞いて、次は・・・」
「‐」ゴジラ『だろだろ!しゅんもはるかも、いいにんげんだからな!でも、しまだってすっごくいいにんげんなんだぜ!』
ラドン「志真さんは僕達に、色んな事を話してくれました。最初は人間とちゃんと話せるか不安でしたけど、何だか志真さんと話していると、怪獣島でみなさんと話すのと変わらない感覚でした。」
「‐」モスラ『志真はこの手の事には慣れていますからね。初めてお話する相手にはぴったりだったと思いますわよ。』
イシュタル「そうなんだ~。志真と話したら、もっと賢くなれそうだね。」
チャイルド『つぎはみんなで、おにいちゃんにあいにいこうね!』
ラゴス・ゴジラ「オレもやっぱ、志真に遥とも話してみてぇ~!!」






そんな中、彼らの会話に混ざらない者がいた。
それはなんと、僧バラン。
彼はいつもの飄々とした印象からは考えられない固い表情をしており、鍵島に戻って来てからずっとこの表情をしていた。



僧バラン――確かに志真と出会い、恐らく未来の出来事であろう様々な物事を知れたが・・・何もかもを知り過ぎるのも、辛い事なのか。
まさか同志がその昔、人間の手によって岩屋から追い出され、あまつさえ生死を彷徨うまでに傷付けられていたとは・・・
そんな経験をしたのならば、人間を憎んでいても仕方なき事。
しかし、拙僧はそんな事情があったと露知らぬまま、生意気な口を叩いてしまった・・・
別れの時も目前だと言うのに、拙僧は同志とどう接すればいいのだ・・・?


ラドン「そうだ、バランはどう思い・・・」


「‐」バランの過去を知り、一人苦悩する僧バランに気付いたラドンが、僧バランに話しかけようとする。
が、その前に彼に話しかけたのは、意外な者であった。



「‐」バラン『・・・何事だ。』
僧バラン「ど、同志!?いや、拙僧は怪獣界の者達に今回の出来事をどう伝えようか、考えていただけだぞ?」
「‐」バラン『其の場で方便を述べる口八丁が、嘘を言うな。御前が考慮してから物事を言う訳が無い。何が遭った。』
僧バラン「・・・見抜かれていたか。そう、拙僧は志真が書いた記事からお主の過去を知ったのだ。人間にあそこまで迫害されていたなら、今の考えになるのも無理は無い。それを知らずに無知のままお主にきつい言葉を掛けた事を悔やみ、お主とどう接するかを考えていたのだ、本当は・・・」
「‐」バラン『・・・其れしきの事か。ならば、平常通りで良い。』
僧バラン「なにっ?」
「‐」バラン『御前に言われ、私はニンゲンの世界を覗いた。愚かなニンゲンも居れば、純粋なニンゲンも居て、強きニンゲンも居る。私はニンゲン達を未だ赦す気は無い・・・然し、断定する時でも無い。私達カイジュウですら個々異なる様に、ニンゲンにも悪しき者と善き者が居る。其れを分かって居ながら、私は頑なに拒み続けて居た。内心燻(くす)ぶらせて居た、在りの儘(まま)の思いに向き合う機会が出来た点を考慮するならば、御前に従って良かったと思って居る。
御前と私、形(なり)も気性も違えど、同じ「バラダギ」の名の元に神として振る舞い続けているのだからな・・・同志。』
僧バラン「・・・い、いま、なんと!?」
「‐」バラン『何度も言わせるな。御前をバラン一族として・・・同志として、認めて遣ると言ったのだ。』
僧バラン「な・・・なんとぉーーっ!!」



僧バランは体を震わせ、周りも気にせずに空へ向かってそう叫ぶや、「‐」バランの両肩を手で掴み、困惑する彼の顔を見つめる。
その表情はずっと持ち続けていた重い荷物をようやく降ろしたかのような、とても開放的で晴れやかなものであった。



「‐」バラン『お、御前は何を仕出かすかと思えば、手を離せ!』
僧バラン「何を言う!ようやくお主が、拙僧を同志と認めてくれたのだぞ!この歓喜の思いを、抑えられるわけがなかろう!」
「‐」バラン『飽く迄も、同じ「バラダギ」の名を持つに相応しいと認めただけだ!私の知る同志は尤(もっと)・・・』
僧バラン「分かっておる!みなまで言うな!ならばその『同志』について、拙僧にしっかりと聞かせてくれ!」


「‐」バラン――・・・私とした事が、迂闊だったか・・・


僧バランから顔を背けながら、苦虫を噛み潰したかの様な表情で不用意な発言を後悔する「‐」バラン。
そんな二人の様子を、他の怪獣達は微笑ましく見守っていた。
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好釦