ゴジラ7・7‐怪獣軍団、都会へ行く!‐







時間は瞬く間に過ぎ去り、怪獣達が帰る時間が迫って来ていた。
だが、自衛隊本部にいるラゴス・ゴジラと「‐」バランは未だに瞬と会えずにいた。



ラゴス・ゴジラ「こうしてずっと見てんのもいいけど・・・やっぱオレ、人間と話してぇーーっ!!」
「‐」バラン『待て。後暫しの辛抱だ・・・』



瞬「・・・訓練とは、相手より強くなる事では無い!昨日の自分より、強くなる事だ!それを忘れなければ、明日はより強い自分になる事が出来る!」
隊員達「「「はい!」」」
瞬「明日の訓練も、全力で励むように!では、只今を持って訓練を終了する!一同、解散!」
隊員達「「「了解!本日も、ありがとうございました!!」」」



「‐」バラン『どうやら、訓練の時間は終了した様だな。』
ラゴス・ゴジラ「よっしゃ!なら、早速・・・」
「‐」バラン『待て、と言って居る。直ぐにシュンが帰って来る訳でも無い。だからと言って私達が行った所で混乱を起こすだけ。ならば・・・』



数十分後、瞬は更衣室にて訓練用の迷彩服から軍服に着替えていた。
訓練は終わったが、まだ全体終礼が残っている為だ。



西「瞬殿、終礼が終わったら近くの居酒屋で一杯やりませんか?最近お疲れ気味ですし。」
瞬「馬鹿な事を言うな。俺がアルコールを呑めばどうなるか身を持って知っている筈だろう。」
東「しかし最近、『ノンアルコール飲料』と言うアルコールが1%以下、もしくは限り無く0%の酒があるのですよ。生意気ながら、ノンアルコールでもやはり多少は酒の味に慣れていた方が、部下とのコミュニケーションが取りやすいかと自分は思います。」
西「そう言いながら、前の野外訓練の夜の時みたいに、今度も瞬殿になんかアニメを勧める気なんだろ?」
東「だ、黙れこのばか!あの時は少々酒を飲み過ぎていただけで・・・」


瞬――・・・酒は呑んでも飲まれるな。
やはり、俺には縁は無いかもしれないな・・・
だが、部下との円滑なコミュニケーションも疎かに出来ないのも事実だ。
それなら・・・


「‐」バラン――・・・シュン。私の声が聞こえるか?


瞬――っ・・・!
この声はバラン、お前なのか?



と、瞬の脳裏に軍服のポケットに入った「知恵」の結晶を通し、「‐」バランからの声が聞こえて来た。
周りに不審がられないよう、瞬は更衣室から出て最寄りのトイレに入り、やや戸惑いながら淡く赤色に光る結晶――「‐」バラン――に向けて話し始める。



瞬「待たせてすまない。志真や妃羽菜と違って、怪獣との交感は慣れていないのでな・・・それで、何かあったのか?」


「‐」バラン――否、一大事と言う訳では無いのだが・・・用事を終えたら、御前の住処の裏に有る通り道に来てくれ。
戯言乍(ながら)、話が有る。


瞬「戯れ言?それに話?お前がここに来るとでも言うのか?」


「‐」バラン――全ては、来れば解る。
待って居るぞ・・・



そう言い残し、「‐」バランとの交感は終了した。
疑問が頭を支配しつつも、瞬は確かな事実である「‐」バランからの言葉を信じ、東・西からの誘いを断って、全体終礼後早々と宿舎に向かった。






瞬「住処の裏の通り道、と言えばこの道路しか無いが・・・」



「‐」バランからの言葉を予測しながら、瞬は宿舎の裏にある道路に立ち寄る。
この道路は自衛隊の宿舎と川に挟まれた、人通りの少ない小さめな道であり、瞬もあまりこの道を利用した事は無い。



「‐」バラン『待って居たぞ、シュン。』



そこへ、現代人の風貌としてはあまりに俗世間離れした者二人、「‐」バランとラゴス・ゴジラが瞬の前に姿を現した。



瞬「っ!?お、お前は・・・!?」



自分は目の前の二人を知らない筈だが、二人は自分の事を知っている状況に、瞬は困惑する。
しかし、確固たる根拠こそ無いが、山伏の様な男から感じる雰囲気と、その声は自分が知っているある「存在」との関連性を、フリーズしている彼の頭脳に教えた。



瞬「・・・何故だ。こんな事、有り得るわけが無い筈だが・・・俺の頭はお前がバランであると、結論付けている・・・!」
「‐」バラン『そうだ。諸事情有って、今の私はニンゲンの姿と成って居る。間違い無く、私は御前の知るバランだ。』
瞬「・・・こんな非現実的過ぎる事を受け入れられるとは、俺も遂にアブノーマルの一員になってしまったのか。西が聞いたら喜ぶだろうな。」
「‐」バラン『私の様なカイジュウが存在する時点で、此の世界は既に不均衡(アンバランス)だ。気に病む事は無い。自分を見失わ無ければ如何なる時も迷う事は無いと、先程の訓練で御前自身が言って居たで在ろう。』
瞬「訓練?まさか、お前は俺が訓練していた時からいたと言うのか?」
「‐」バラン『其の通り。何時も御前が何をして居るのかが気に也(なり)、此の姿と成って出向いた。呼び掛けても返事が無かった以上、無断での来訪と言う形に成ったが、ニンゲン達が混乱しない様に御前の用事が終わるのを待つ事とした。』
瞬「結晶は軍服の中だったからな・・・そうだったのか。憎き人間達に配慮するとは、お前も随分と軟化したものだ。」
「‐」バラン『規律と忠誠心に従い、過酷な肉体改造に励むニンゲン達を見せて貰った事への礼儀だ。御前の下に居るニンゲン達は昨今の軟弱なニンゲン達とは違うな。』
瞬「あくまで『俺の下』はな。同じ自衛隊でも軟弱故に不祥事を起こす者がいたり、俺の上の人間達にも権威や利益しか優先しない連中もいる。」
「‐」バラン『其れがニンゲンと言う生物の特徴で在る事は事実。然し、全てのニンゲンが其の特徴に当て嵌(はま)らず、御前と其の周囲のニンゲン達は違うと私は思って要るし、其れは間違いでは無い事も、又事実だ。』
瞬「そうか。俺も恥を晒す愚か者は許せない。だから俺は愚か者になる気は無い。自分が嫌う存在にだけはなりたくない、それだけだ。お前もそうだろう、バラン。」
「‐」バラン『あぁ。頑固な迄に、自分の思う生き方を貫徹する。其処に私と御前は共振的個性を感じたのだからな・・・』
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好釦