ゴジラ7・7‐怪獣軍団、都会へ行く!‐







「「『「かんせ~いっ!」』」」



舞台を「‐」世界に戻し、妃羽菜家では今まさに編み物大会が終わり、4人が完成した人形を宙に掲げていた。
その回りをフェアリーが嬉しそうに旋回し、各次の人形を確認する。



シン「まずは、あたしが作った人形達!!どうっ?見て見て~♪」



シンが作った人形は、この中で最多となる四つの「‐」怪獣人間体の人形だった。
「‐」ゴジラ・バラン・モスラ・チャイルドを模した人形達は、適度なデフォルメがなされながらも特徴を的確に表現しており、「‐」モスラに指導しながらにも関わらず、どれも隙の無い糸の縫い目をしていた。



「‐」モスラ『こ、これは今の姿のわたくしですか!?』
遥「す、凄い・・・!モスラに教えたり、私と話したりしながら作ってたのに、どれもプロみたいな出来・・・!」
イシュタル「みんな、かわいい!母さんは本当にいつもすご~い!」
フェアリー『シン、イツモヨリガンバッテタカラネ!』
シン「ふふっ♪この世界に来た記念に作ったから、力を入れて作ったの!チャイルド親子、バラン、モスラの人形よ~!!」
「‐」モスラ『な、なんと素晴らしい・・・これが、100年の経験の差なのですね!」
遥「・・・お願い、シン!私を弟子にしてっ!私、もっと上手くなりたいの!冗談じゃなくて、本気だよ!」
シン「それは嬉しいけど・・・遥だって十分上手じゃない。ほら!」



シンは床に置かれた遥が作った人形を持ち、何故か軽く上下に振る。
遥が作った人形はフェアリーを模した人形であり、本人よりやや小さめなサイズながら特にミスは無く、ちゃんと羽が振れるように作ってあった。



フェアリー『ワァ~イ!コレ、フェアリノ人形ダヨネ~!』
遥「そうだよ。前にモスラの根付けを作ってたから、上手く出来るかなって・・・」
イシュタル「フェアリーそっくり!遥もやっぱりすご~い!」
「‐」モスラ『わたくしはシンに教わらなくとも、遥は十分に腕があると思いますわ。』
シン「そうね~。別にあたしより下手なんかじゃないし、人形の丁寧さならむしろあたしより上かも!だから、遥は既にもう免許皆伝!」
イシュタル「それに遥も、モスラ姉さんに教えながら作ってたよね。」
フェアリー『アリガトウ、ハルカ!フェアリ、シアワセダナァ~。』
遥「ううん、私からもありがとう。私、もっと頑張るね。じゃあ次はモスラの人形は・・・と。」



遥は「‐」モスラが作った人形を持ち、興味深々な様子で見つめる。
彼女の人形は遥を模したもので、やや頭でっかちなデフォルメであり、両手が大きめのボタンを持っているようなデザインとなっていた。
細部を見ると糸のほつれや糸通しが荒い部分はあるが、初めての作業としては中々の出来だ。



遥「・・・」
「‐」モスラ『あ、あの・・・確かに遥をモデルにしましたが、そんなに見つめないで下さいませ・・・シンや遥に比べれば、足元にも及ばない出来ですから・・・」
シン「いやいや、全然上手いじゃな~い!裁縫の素質あるわよ、モスラ☆」
イシュタル「初めてなのに、ボタン付けとか結構難しいのにチャレンジしてる!わたし、まだボタン付けは全然出来ないからいいな~。」
フェアリー『デザイン性ナラ、キット一番カモシレナイネ!』
「‐」モスラ『一応、このボタンが遥の「愛」の結晶のつもりで、何か物を掛けられるようにしたのですが・・・』
遥「・・・こうやって見てると、モスラが私の為に一生懸命作ってくれたんだなぁ・・・って、とっても感じるよ。さっきも言ったけど、裁縫は精一杯やりたいって気持ちが大事なの。だから私、この人形を貴女が作ってくれたのが嬉しい。ありがと、モスラ。この人形、大事に使うわね。」
「‐」モスラ『・・・お礼を言うのはこちらの方ですわ。是非、お役立てて下さいませ。』
シン「今度モスラ姉妹が集まったら、編み物大会をするのもいいかも!さぁて、あとはイシュの人形だけど・・・」
イシュタル「わたしの作品は、今回もダガーラの人形だよ!」



ここで最後のエントリー、イシュタルの人形の発表に移った・・・のだが、その完成品はとんでもないものであった。
彼女の想い人・ダガーラを模した人形の筈が、誰がどう見ても顔から下が棒と丸で出来た「棒人間」にしか見えないのだ。
更にモデルの唯一の判断材料である顔も、申し訳程度にギザギザの髪が付いているだけであり、言われなければ誰の人形なのかが全く分からない。



フェアリー『ア、アチャ~・・・』
シン「イシュったら、やっぱこうなっちゃったかぁ・・・」
イシュタル「今回はちょっと、顔に力を入れてみたけど・・・どうかな?」
「‐」モスラ『・・・そ、そうですわね。この髪の所がダガーラを思わせて・・・』
シン「そうそう!上手くなってるわよ、イシュ!けど・・・もうちょっと顔から下を頑張ったら、もっと上手に見えるかなぁ~?」
イシュタル「ほんとに?でも母さんや遥、モスラ姉さんのを見てると、自信無くしちゃうな・・・」
遥「私は凄くこのダガーラって人への愛情を感じて、いい人形だなって思うわ、イシュタル。見栄えも大事かもしれないけど、誰かを思って作ったのなら、愛情が一番なんだよ。見栄えが良くても、それが愛情の無い物だったら、肝心な思いは伝わらないわ。見栄えを良くしたいなら、お母さんに教えて貰いながら、もっと頑張ってね。」
イシュタル「う、うん。人形作りでここまで褒められた事って全然無いから、照れちゃうな・・・遥、ありがとう!」
フェアリー『ヨカッタネ~、イシュタル~。』


シン――誰もがびっくりするイシュの作った人形を見て、あんな事を言うなんて・・・!
遥ったら、なんてフォローの出来る子なのっ!?


「‐」モスラ――流石は、相手の気持ちを最優先にする遥ですわ・・・
以前、もっと自分の本心を出すべきだと言いましたが、ここまで相手の為の言動が出来る才能を、ないがしろにしてはいけませんわね・・・
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好釦