特撮②

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「ゴジラの破壊力、ラドンの飛翔力を凌ぐ東洋の大怪獣!日本全土蹂躙す !」
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さて、今日は6日の日記の延長戦、特コレバランDVDの感想・・・と言うより、「大怪獣バラン」の感想を書こうと思います。
思い入れ故、いつも以上に長くなる事は覚悟していて下さいf^_^;



感想ですが、これぞ怪獣対自衛隊の戦いを克明に描いた、一種の記録映画であると思います。
まずは本作の主役であるバランですが、日本産怪獣の正統派と言える造形とデザインで、初期の東宝怪獣だからか、ゴジラやアンギラスと同じく中生代の恐竜が元となっています。
ただ、バランの場合は架空の恐竜であり、むしろバランは爬虫類の特徴からデザインしたと言え、東宝怪獣の基本デザインが固まりつつあったからこそ生まれたデザインだと、僕は考えます。
特撮場面でも獣のような荒々しい動き・・・荒ぶる神たる一面と、水中戦にて見せた人間の攻撃を回避しながら奇襲攻撃を仕掛ける知能的な一面を見せています。
特に「荒ぶる神」の一面は最初に湖から出現した時と、岩屋村を出る際に見せた脇の皮膜を広げる場面が頂点と言え、後者はこの場面しか無いのにバラン=皮膜を広げた姿を想像する方も多い事からも、印象に強く残る場面なのが分かりますね。
ワイドサイズの画面を調整してビスタサイズにした本作だけの画面規格、「東宝パンスコープ」もバランの巨大感をより引き出しており、規格内に収まらないと言いますか・・・画面からはみ出して暴れるバランの姿が、逆に画面のスケールを大きく見せていると思います。
バランと言えば「婆羅陀巍山神」の設定も切っては切れないものであり、人々から畏敬されるべき存在、常識の通用しない巨大な存在・・・と言う設定は、日本に根付いた独特な神格化・神話に基づいており、海外の人々に日本独特のカラーが一目で分かる点を考えて、付加された所なのでしょう。
雑多に書いて行きましたが、簡潔に言えばバランはこの「日本」と言う国だからこそ生まれた怪獣と言う事です。


本作のもう1つの魅力に自衛隊の描写があり、そのどれもリアルでかつ、緻密に描かれています。
実際の演習場面や、自衛官の人々の全面協力を得た自衛隊描写は今見ても特筆物で、湖に潜むバランを攻撃する為の準備をする場面は特に注目して見て頂きたいです。
それ以外にも湖から現れたバランとの砲撃戦、浦賀水道での知能を駆使した駆け引き、東京での一大決戦等、特撮場面のほとんどがバラン対自衛隊を描いたもので、ここまで怪獣相手に自衛隊の純粋な兵力での熾烈な戦いを軸にした作品は、中々無いと思います。
モノクロ作品である事を利用した「初代ゴジラ」の画面の流用もポイントの一つですが、明らかにゴジラの尻尾だと分かる場面もあったりします(汗)
オリジナル兵器の24連装ロケット砲(ポンポン砲)、ダイナマイトの20倍の威力を持つ特殊火薬も違和感無く登場しており、この特殊火薬は「元は違う利用法の物」「登場怪獣にとどめを刺した」と言う点では本作での「オキシジェン・デストロイヤー」の役割と言えるでしょう。
色々と自衛隊描写の参考になりますので、その為に見て頂いても良いくらいです。


ストーリーは以前にも触れた通り、バランを中心に据えた構成故に少々難のある筋になっているのは事実です。
本作独特の色を見せる、排他的な作風も前半のみで、人物描写も以降の作品と比較すれば淡々としたもので、本作の評価を下げる一因になっている点は否めません。
しかし、これまた以前話した通り、怪獣映画本来の主役である怪獣を物語の中心にしようとした試行錯誤の結果ですし、僕個人は本作のストーリーは全く嫌いではありません。
それ以外にも、伊福部氏の儀式的な音楽は本作の魅力を見事に引き出しており、後の「ラドンのテーマ」や「東宝SF交響ファンタジー」に繋がる娯楽的な音楽も数多く、伊福部氏の思想や作風とマッチしています。
そして本作の裏テーマに「自然に対する人間の愚かさ」の暗喩があり、少々宇多瀬さんのレビューと被りますが、バランを「自然の具現化」と捉えて本作を見れば、それが自ずと見えて来ると思います。
バランは数々の犠牲の上に発展を繰り返す人間に対する、自然(ガイア)の声の実体であり、そのバランを結局東京湾に葬り去った人間に待ち受けるのは、果たして本当の繁栄なのでしょうか?
深読みと言ってしまえばそれまでです。しかし、深読みで流す問題では無いのもまた事実です。
問われたこの回答を出すのも、人間なのです。
今後この感想を見た方が「大怪獣バラン」を見て、本作の魅力に気付いて下されば、心から嬉しく思います。


「空想怪獣映画の決定版」の名に恥じない、東宝特撮黎明期を代表する作品でした。



次回は「緯度0大作戦」、封印作品からのカムバックを果たした、日米合作SF映画です。
これからの特コレも、目が離せません!
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好釦