めざせポケモンマスター







それから数日後、自衛隊本部の玄関に瞬の姿があった。
いつもなら昼の休憩時間を射撃や体力作りに利用する瞬だが、何故か今日は眠そうにしながら椅子に座っており、有事を除いて健康的な生活を送っている彼には有り得ない光景だった。



「「あっ、瞬殿!」」



そんな瞬の元に、東と西がやって来た。



「お前達か・・・」
「今日は訓練場で見掛けなかったので探していたのですが、そんな所にいらっしゃいましたか。」
「眠そうですけど、何かあったんすか?」
「・・・昨日、俺とした事が夜更かしをしてしまってな・・・4時間しか寝れなかった。」
「そういえば、今日の瞬殿はどこと無く動きが固いと思っていましたが、夜更かしとは珍しいですね・・・」
「人生か恋の悩みでも、あったとか?」
「・・・朝からずっと、ポケモン映画を見ていた。」
「「・・・えっ?」」



瞬の口から飛び出すとは到底思えない夜更かしの理由に、2人はつい素でそう叫んでしまう。
しかし、瞬の表情に嘘を付いている様子は無い。



「お前達・・・嘘だと思っているだろう。」
「いっ、いえ!そんな事は毛頭ありません!」
「ま、まさか瞬殿からポケモンの名前が出て来るなんて思わなかったので・・・」
「まぁいい。お前達がどう思うであれ、事実だ。数日前までの俺では有り得なかったがな・・・」
「そ、それで見てみてどうでした・・・か?」
「お、俺はともかく、流石に戦争映画好きの瞬殿には・・・」
「・・・絵、ストーリー、演出。どれを取っても素晴らしいクォリティだった。アニメは好きでは無いが、ポケモン映画は別だな。まだ最近の作品が残っているが、見た中ならばクローン問題・存在意義と言う難題を堂々と扱った『ミュウツーの逆襲』、映像・音楽・ストーリーの全てが上質だった『水の都の護神 ラティアスとラティオス』、ポケモンを使っての戦争描写があった『ミュウと波導の勇者 ルカリオ』・・・あと、個人的な意見だがバンギラスが活躍していた『セレビィ 時を超えた遭遇』も良かったな・・・」
「は、はぁ・・・」
「バンギラス・・・ですか・・・」
「それで、お前達に頼みがある。」



と、ここで瞬は突然真剣な表情で2人を見た。
戦場で戦況を変えられる程に重要な作戦を任せるような、瞬のそんな目に2人は整列するかの如く姿勢を整える。



「「な、何でしょう!」」
「すまないが・・・明日までにこれを買って来て欲しい。」



瞬は胸ポケットから紙を取り出し、2人に手渡す。
2人は即座に紙を受け取り、早速見た。



「・・・えっ?最新作のポケモンに・・・」
「全国図鑑?」
「そうだ。ちょうど本体は持っていたのでな。後はソフトと攻略本があればいい。」
「で、ですが、攻略本は昨日発売されたばかりでまだあるかどうか・・・」
「そ、それに自分と西は明日用事が・・・」
「・・・これは、絶対の命令だ。もしも明日までに用意出来ければ、お前達を破門する。」
「「え、ええっ!?」」
「そうなりたく無ければ・・・今からでも探しに行って来い!」
「「は、はい~!!」」






結局、昼休憩中に攻略本は見つからず、2人は訓練終了後の休息を全て使い、東京中を駆け回る事となった。
こうして、東と西の久々の飲み会はキャンセルとなったのであった。






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好釦