証明写真
「・・・以上の事を考えまして、僕は近い内に巨大生物、もしくはそれに近しい生物が臨海副都心近辺に現れると予想します。」
「オリハルコンの源であるガダンゾーアは倒されたが、まだオリハルコンの欠片が副都心に残っている可能性を考慮して、だな。」
「はい。無論、僕は放射能による巨大生物の出現の可能性も考慮し続ける必要があると思っています。それでは、僕はこの辺りで失礼致します。」
その頃、G対策センターの会議室にて今後の怪獣出現に対する対策が話し合われていた。
司令官の新城と補佐・佐藤を中心にGフォース各部隊の隊長達が話し合いを続ける中、部屋を立ち去ったのはこの場には若干似つかわしく無い未成年の仮隊員、将治だ。
「・・・麻生元司令官の孫、か。」
「彼はこの前の事件でもガルーダⅡで怪獣を撃破する戦果を見せたそうだが、それは本物だったと言う事だな。」
「彼の的確な考察には目を見張る物がある。将来必ずやGフォースの主力となってくれるだろう。」
「そうだろうか?私には『祖父の七光り』が出しゃばっているようにしか見えないが・・・」
「橋川隊長、それは大きく間違っている。」
将治に対して不満を漏らした橋川の言葉を横から否定したのは、資料に目を通していた新城だった。
「司令官・・・?」
「私は事件を通し、将治君の能力の高さを何度も見て来た。確かに彼の優秀さに麻生教官の遺伝子の影響があるのかもしれない。だがその考察力、操舵技術は全て自身の努力で培われたもの。例え才能があろうとも、努力が無ければ才能は無いも同然なんだ。」
「うっ・・・」
「まっ、『能ある鷹は爪を隠す』ってやつだな。よく覚えとけよ。」
「・・・キヨ、自慢気に言っているが、それは違う意味だぞ。」
無駄な横槍を入れる佐藤にも注意しつつ、新城は再び資料に視線を戻す。
新城の言葉には間違った認識を正す意味だけで無く、祖父と比較され続ける将治を気遣う意味も込められていた。
「・・・未来の為、我々も頑張らなければな。」
「あっ、そういや功二は三枝といつ結婚まで・・・?」
「ま、またその話かお前は!彼女とは・・・!」
一方、会議室を出た将治はロビーで休息を取っていた。
彼が今回の会議に参加した理由、それは『祖父の七光り』と呼ばれる事を恐れる余り、自身の中にある「過程」を「結果」にしようとしなかった、今までの自分にけじめを付ける為だった。
「ふう・・・あんなに緊張したの、この前の事件以来だよ・・・」
深い溜め息を付き、将治はゆっくりと目を瞑る。
脳裏に再生されるのは、あの時自身の目で見て来た事・・・怪獣達が街を破壊する様子だった。
――・・・そう、怪獣はまた近い内に現れる。
半年後か1、2年後。
早ければ数ヶ月後にも。
例えオリハルコンが無くなっても、人類は不必要なまでに存在する核を放棄していない。
核の申し子・・・ゴジラみたいな存在は、きっといつか出てくる。
・・・それでも僕が内心楽観的な可能性を信じているのも、今日の事を決意したのも、桐城の影響だろうな。
少し笑みを浮かべながら目を開き、将治は服の裏ポケットから何かを取り出す。
それは彼が密かに隠し持ち続けていた、あの日のプリクラであった。
「もしもこの出会いが無かったら、僕の人生はどうなっていたのか・・・考察してみるのも面白いかな。」