シエルと睦海







「せっかく守った時間なんだ。睦海、遊ぼうぜ!」



健が発案したのは、亜弥香達と共にシエルが未来へ帰る予定時刻へ一時間半と迫った頃であった。
移動の時間も考えると、あまり色々な事は出来ない。



「睦海ちゃん、何がしたい?」



みどりは睦海に聞いた。睦海は少し考えると、目を輝かせて言った。



「この時代だからできる、何か形に残る事をしたい!」



「絵でも描くか?」
「発想はまぁまぁだけど、全く現代らしくないぞ。」
「だけど、画風とかは時代によって違うんじゃないか?」
「珍しく真面目な事をいうかと思えば、不必要な発言を……。」
「はいはい。男子に任せてられないわ。………あ!プリクラなんてどう?」



みどりが手を打って言った。



「今時プリクラかよ。」
「……僕もやった事がない。」
「プリクラって何?」
「2人も初心者がいるならこれで決定ね♪」





というやり取りがあり、4人は秋葉原電気街のゲームセンターでプリクラを取ってきたのだ。



「睦海ちゃん可愛い♪」
「そ、そぅ…かな?」
「これならコスチュームとか選べばよかったかなぁ。」
「コスチューム?」
「そ!衣装を借りてプリクラ撮れるのよ。………ほら、可愛いメイドさんとか。」
「フリフリが付いてる。………いい!」
「髪が銀色だから、黒い服とか可愛いわ。……うん!お人形さんみたい♪」
「こっちの看護士さんの服はみどりに似合いそうだよ☆」
「えー恥ずかしいなぁ。」



ハイテンションに衣装を合わせる女子二人を尻目に男子二人は椅子に座っていた。



「……女子は何が楽しんだ?」



デコレーション用のペンやハサミをいじりながら健は言った。



「僕がわかる訳ないだろ?」
「だよな。……みどりは巫女服だな。」
「はい?」



彼らの別れは近い。






(『睦海とシエル』ラストの後…)

「何やってるの、健。」
「睦海がシエルの時に撮ったプリクラ。……可愛かったなぁ。」
「あら、珍しい。今も可愛い、じゃないのね?」
「いや、流石に40代に可愛いってのはな。」
「健、覚悟しなさい。」

【終】
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好釦