シエルと睦海




数日後。"私"は、退院が決まり初めて病院の外へ出た。

「これが、私達が戦って手に入れた世界……。」
「強大な脅威がない世界だから、各地のいざこざは絶えないけどな。」
「それは明日に希望があるからよ。……私は知ってる。希望があるから、人は戦うし、争うし、そして守れるのよ。」

"私"の言葉に健は頷いた。

「ねぇ、睦海。私、そろそろ元の時間に帰るんだけど、ちょっと寄り道していこうかなって思うのよ。」
「え?」

首を傾げる"私"に亜弥香は言った。

「そうね。2010年の3月なんていいなぁ。……どう、一緒に行かない?」
「いいの?」

目を見開いて"私"が聞き返すと、亜弥香は微笑んで、小声で言う。

「内緒だけどね。」

途端に、"私"は健達を見た。二人は笑顔で頷いた。

「ありがとう!亜弥香!」
「じゃぁ、早速なんだけど、いい?」

"私"は頷く。そして、健達に言った。

「………お父さん、お母さん。ちょっと過去にいってきます!」

"私"は誰でもない、"私"なのだ。



「……いつかこんな風に睦海は嫁いでいくんだな。」
「親バカね、健。」

【fin】
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好釦