シエルと睦海




「大丈夫だったか?」
「うん。……私、人を助ける事ができるんだね。」
「あぁ。」

将治の指揮で村の消火活動を行う様子を眺めながら、健は頷いた。
"私"達は悪魔から村を完全には守れなかった。
しかし、"私"は悪魔の猛威から村人を助ける事ができた。

「貴様。」
「すまない。村を守りきれなかった。」
「……いや、村は我々がいる限りいくらでも復興できる。」

村人は頭を掻きながら言った。
突然、健は村人にメーサーライフルを構えた。
"私"も村人も驚く!

「えっ!」
「や、やめろ!許してくれっ!」

しかし、健は躊躇なく引き金を弾いた。

ギギャァアアアア!

村人の後ろから、人のものとは違う悲鳴が上がる。
メーサーライフルは茂みから村人を襲いかかった巨大なヤゴの様な生物を貫いた。

「メガヌロンだ。」
「あ、ありがとう。」
「なんだ、ちゃんと礼も言えんじゃねぇか。精一杯お前ららしく生きろよ!……行くぞ!」
「あ、うん!」

"私"はメーサーライフルを肩に担いだ健の後ろ姿を追った。その後ろでは、涙を流す村人がいた。

「麻生、俺達はヤツを追う。後は任せたぞ。」
「あぁ。キミ達も、気をつけて。相手がGだけに今までのデータがどこまで役に立つかはわからないけれど、Gは地球を一周するかもしれない。長旅になるかもしれない。」
「それは承知の上だ。それに、衛星は生きてるんだろ?世界中連絡できりゃ問題ないさ。」
「桐城。全く君という人は……。シエル、君はいいのかい?」
「私は桐城さんを守る。だから、一緒に行く。」
「良かったな。相棒ができて。」

健は用意されていたバイクを起動させる。

「行くぞ、む……シエル。」
「睦海でいいわよ!……じゃあ、私はお兄ちゃん!」

"私"は健の後ろに乗ると、健に抱き付いた。

「おにぃ……そんな歳じゃねぇよ。」
「じゃぁ……おじちゃん!」
「わかったよ。行くぞ、睦海!」
「うん、よろしくね。健おじちゃん!」

バイクは村を後にした。
そして、"私"と健はお互いに居場所が出来た。


それから約5年、"私"達は長い旅を続けた。
遠野亜弥香に出会う日まで……。
10/13ページ
好釦