シエルと睦海




「Gがこの近辺に現れるかもしれねぇんだぞ!」

健の怒声が村に轟く。
翌、"私"と健は、Gが出現する可能性のある村へ駐留基地から移動していた。
しかし、村は避難も戦闘も認めないと断固拒否を決め込んだのだ。

「我々はあんた達とは違う。もう戦う事は止めた。……祖国はもう亡い。今はこの村が我々の国家なんだ!」
「………俺達は核でGを倒しはしない。」
「貴様、亡国を愚弄する気か!」
「ちげぇ!俺は、俺達はもう誰も死なせたくないだけだ!」
「Gフォースはもうない。国家も亡い。貴様達はただ残った兵器を奮っているだけじゃないか!貴様達が来ると、我々の平和が乱されるんだ!」
「平和?」
「そうだ!都市や工場はとっくに滅びた。だけど、代々田畑を耕していた我々は生き残っている。そして、これからも。Gは一匹だ。都市は一度でも現れれば終わりだ。だけど、我々にとっては、地震や蝗と同じだ。いや、それ以下かもしれない。事実、この村は過去20年間で一度工場地帯を破壊した時に通った以外に現れちゃいない。」
「………それは、ただ単に運が良かっただけだろ。」

健は村人を睨むと静かに言った。

「Gはな。ただ暴れて壊して終わりじゃねぇんだよ。俺達が戦い続けるのは、ヤツが暴れた時に残す産物を少しでも減らす為なんだよ。」
「あん?」
「カマキラス、ゾエア、へドラ、ドラーグン、メガヌロン、マタンゴ、ドゴラ………まだまだあるぞ。この20年でGが現れた後に現れた怪生物、Gによる被害が目立つ様になるに連れて聞く事が減ったがなぁ。……俺達は一回り、二回り大きい化け物を駆除して、Gとの戦いよりも多くの仲間を失って来たんだ!」
「ぐっ……しかし、それは貴様達が戦った為だろう?」
「……中国が自国領内で核を使った理由をわかってないらしいな。Gが暴れてたのもあるが、軍部の対応が遅れた為に、あの悪魔が撒き散らした化け物が増殖し過ぎて対処が仕切れなくなったんだよ!だから、使った。」

この言葉に村人は何も言い返せなかった。"私"も始めて知る世界の崩壊の一因に絶句していた。

「………どこの国も、世界中同じだ。」
「出てってくれ。」
「え?」
「それでも我々はここに住む。」

村人が言った言葉に、全員が頷く。
健は無言で村人達を見回すと、その場に座り込んだ。

「ならば、俺もここに残る。一人でも、ヤツと喧嘩する。」
「んだ!……貴様、我々の言葉を理解したのか?誰も戦わせない!出て行け!」

村人は健を敵視する。
健は黙って禅をする。

「貴様ぁ!ならば力づくでっ!」

村人の一人が鉈を健に振り降ろす。"私"はとっさに鉈をおさえた。

「な、なんだ!」

村人は青い顔で手に持つ鉈を見る。刃は"私"の手形で歪んでいる。
"私"も自身の手を見つめる。

「ば、化け物!」

村人達は"私"が睨むと血相をかいて逃げ出した。

「無茶をするんじゃねぇよ。生身だったら、今頃……。」
「良かった。無事で。」

"私"は武器のメーサーライフルを今だ座り続ける健に渡すと、言った。

「私はもう睦海じゃない。だけど、シエルだから、健さんを助けられた。」
「何言ってんだ。……お前はお前だ。」
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好釦