シエルと睦海




数週間が経った。

「桐城さん、陸が見えた!」

"私"はヘリコプターの窓に身を乗り出した。数時間前に東京を出発したヘリコプターは、海洋上空を飛び続けていたが、まもなく陸が見えてきた。

「ユーラシア大陸だ。この地球で一番大きな大陸だ。」
「東京……日本以外の世界を初めてみる。」
「この大陸にはかつて沢山の国があったんだ。今は日本と同じ状態で、海という隔たりがない分、もう具体的な国の境はないらしいけどな。」
「ふーん………。」

"私"は健の話に相槌を打つと、再び外を眺める。



「桐城、この度の不幸……。」
「みな迄言うな。アイツは俺達が悲しむ姿を望んじゃいない。」
「復讐心にかられる姿もな。」
「もう大丈夫だ。……この子が命を救ってくれたお陰でな。」

ヘリコプターが着陸し、"私"を連れて降りると、健は指揮官らしき男と話をした。
彼が促し、"私"は挨拶する。

「シエル・シス…。」
「麻生将治です。この娘が、M-6の……。名前は桐城が?」
「あぁ。本名の睦海という名じゃ外見に不釣り合いでもあるし、氏名があった方が無駄な問答をせずに済むからな。」
「確かに、シエルか。……よろしく。」

将治は"私"に挨拶に笑顔で挨拶をする。
とっさに"私"は健の影に隠れて、挨拶を返す。

「よろしく…。」
「……麻生、すまないな。外見はこうだが、まだ10歳くらいなんだ。」

健は苦笑して言う。

「いや、仕方がないさ。……本題だが、Gは既に揚子江周辺にきていると考えられる。地中を移動できる分ゴジ……あの怪獣よりもたちが悪い。」
「……アイツは世界を滅ぼしたりしない。」
「………ゴジラと悪魔は別なの?」

"私"は思わず疑問を口にした。二人の表情が曇る。
そして、健が口を開いた。

「……アイツは、俺のダチだ。あんな悪魔とは違う。」
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好釦