シエルと睦海
「睦海ちゃん、今日も遊びにきたの?院の人に怒られちゃうわよ。」
瓦礫と化した嘗ての大都会、その一角の空き地で一人土を採集している女性に"私"がいつもの様に近付くと、彼女は優しく言った。
孤児院の中でも"私"はあまり人に心を開く子ではなかったが、何故かその彼女には打ち解ける事が出来た。
「おば……じゃなくて、お姉さんは何をしているの?」
おばさんと呼ぶと彼女は怒る。だから、"私"はいつもお姉さんと彼女を呼んでいた。
「私はこの街がまだ睦海ちゃんが暮らせる街なのかを調べているの。」
「街が"ゴジラ"に壊されたから?」
「………そうね。」
彼女ははっきりと"私"に言う事ができなかった。街を破壊したのが、ゴジラではない事に。
「さ、そろそろ戻りましょう。」
採集を一通り終え、彼女がそう促した時、突如地響きが起こった。
「まさか……!」
ゴガァァァァァァオン…!
姿は見えないが、咆哮は"私"達の耳に届いた。かなり近くにいるとその音の感じから、"私"達は長年の経験から気がついた。
「……偽者、あの人の信じたのはあんたじゃない。」
女性は恐怖に駆られる"私"を抱き寄せる。彼女は"私"を抱きながら、呟いた。
刹那、巨大な触手が"私"達の目の前の建物を貫く。
瓦礫が雪崩の様に、"私"達を襲った。
「危ない!」
「キャァアァアアアア!」
彼女はとっさに"私"に覆い被さった!