山神‐Varan's memory‐











・・・!
また・・・この夢を見たか。
何故だろうか、最近昔の夢を見る機会が多くなった。
それはやはり、私の心に変化が生じたからだろうか・・・?






あれ以来、私には様々な事が起こった。
光と共に目を醒まし、聖域へ戻ろうと動き始めた私は同じく異形の姿をしたケモノと出会った。
私は立ち塞がるケモノと闘い、敗北し、時に復讐だけを行動動機にした化け物となってまでそのケモノを倒そうとした。
しかし、そんな私にも救いの手を差し述べる者がいた。
私の全てを、見つめ続ける者がいた。
そして・・・私に心から共感した者がいた。





今思うと、今までの私は愚かであった。
偶然が産んだこの力を神の加護だと思い込み、ただ目の前に現れただけのニンゲンを見下し、神を気取った。
だがニンゲンからしてみれば、私は所詮は只の化け物だった。
私が見た神の光も、全てニンゲンが意図的に作り出した物を私が勘違いしていただけ。
この世の真理を悟ったつもりだった私も、結局は無知で短絡的なケモノでしか無かった。
もし神がいたとしても、こんなケモノに加護を与える筈も無い。 
それに気付いたのも、最近の話だ。






だが、私はそれに気付く事が出来た。
それは私に自由と、過ちを知る機会があったからだ。
本当の化け物となった私は、光の化身とも言える聖なるケモノに悪しき部分を洗い流され、自由を得た。
拙い事しか考えられなかった私も、この自由の中でニンゲン程度の知恵を得た。
それも全て、3人のニンゲンと2体のケモノがくれたものだ。
聖なるケモノ、モスラは化け物となった私を元に戻し、するべき事の無い私を導いた。
黒いケモノ、ゴジラは過ちしか考えられない私の前に何度も現れ、私の過ちを正した。
慈愛のニンゲン、ハルカは私を最初に受け入れ、ニンゲンを信用する機会を与えた。
勇気のニンゲン、シマは私はもうニンゲンの敵では無いと、他のニンゲンに伝えた。
そして知恵のニンゲン・・・シュンは、私と同じニンゲンだった。
私とシュンは孤独と過ちの中に放り込まれ、そこから救われた者同士。
彼らがいなければ、私に今は無かっただろう。
だから、私はこうして生きているのだ・・・





「ここにいたのか。」



私を呼ぶ声・・・共振する個性を持ったニンゲン・・・シュンだ。
夢から醒めた私は過去を思い出しながら住み慣れた山を離れ、かつて私の居場所だった所に来た。
私のテリトリー、私だけの聖域。
ずっと帰りたかった所。






しかし、私は自由を与えられてもここには一度も来なかった。
それは、過ちを犯した私に帰る資格など無いと思ったからだ。
確かに私だけの過ちでは無く、ニンゲン達も過ちを犯した。
この事実はいつまでも変わる事は無く、今でも私はその点でニンゲンを恨んでいる部分がある事は否定出来ない。
だが、全てのニンゲンがそうで無い事も今は分かる。
過ちを犯すのはケモノだろうとニンゲンだろうと変わらない。
それに気付くのが、それを教えられる事が大切なのだ。
私はそれを教えられ、悟り、省みた。
だからこそ、私はここに帰って来た。
今の私なら、ここに帰る資格はあると感じた。






時を経てもなお、ここは変わらない。
ニンゲンがいない事を除けば、私が見た光景のままだ。
よかった・・・それが、最初に思った事だった。
変わら無くて良いものもこの世には存在する、これも世の真理。
また一つ、私は物事を知る事が出来た。






「お前なら、ここにいると思ってな。」



私の横にいるシュンは、そう言った。
何故だろう、知恵があっても流石にニンゲンの言葉は予想しなければならなかった。
が、シュンの言葉は私の頭に正確に流れて来る。
これまで以上に、シュンの事が分かる。
シュンの手の光る何かが私にそうさせているのだろうか・・・いや、そんな事は別にいい。
私と言う存在を理解してくれる者さえいれば、私は良いのだ。
私は彼らを守る。例え悠久の時が私から彼らを奪い取ったとしても、私は彼らを忘れはしない。






皆は、彼らは私の事を、ある名で呼ぶ。
畏敬の名である、「バラダギサンジン」。
そしてもう一つ、私の個を証明してくれる名。
それは・・・






「そうだろ、バラン。」






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好釦