山神‐Varan's memory‐
何が起こったのか、一瞬分からなかった。
これは、それほどまでのものだった。
私がニンゲンに襲いかかろうとした時、私に訪れたのは途方も無い身体の痛みであった。
私の身体の中で、何かが起こった。何が・・・?
痛みの余り地面に平伏した私の頭に、ある一つの考えが浮かんだ。
あの神の光が・・・私を拒絶したのか?
私は・・・神に選ばれなかったのか?
そんな筈は無い。そんな筈は・・・!
私は持てる力を振り絞って立ち、ニンゲンの巣窟から離れた。
敵の前から逃亡するのは本当に屈辱だが、そうも言ってはいられない。
私に器が足りないのなら、器が満ちるまでまた眠りに付けばいい。
その時に、ニンゲンを滅ぼそう。
本当の神として・・・
ニンゲンの巣窟から離れ、私はまた巨大な湖の中に入った。
ここならまだニンゲンもすぐに追えはしまい。
ここから聖域に帰り、そこで眠ろう。
聖域にはニンゲンがいるだろうが、それくらいは始末してくれる。
私は・・・還る。
私だけの地へ・・・
・・・だが、それも叶う事は無かった。
私が取り込んだもう一つの光が・・・私を拒絶した。
もう・・・私に動く力は残されていなかった。
私の身体はただ、湖の底へと向かって行く。
これが、命を全うすると言う事なのか?
私は・・・これから本当の神の元へ・・・
・・・まだだ。
・・・まだ、終わりたく無い。私には・・・果たすべき事がある。
・・・ニンゲンの・・・滅亡。
・・・例え神がニンゲンの存在を許しても・・・私は許さない・・・
・・・その為なら、私は邪になろうとも・・・それを果たす・・・
・・・わたしは・・・まだ・・・・・・!!