山神‐Varan's memory‐











再び顔を出してみると、辺りは漆黒に染まっていた。
が、ニンゲン達の巣窟からは目障りなばかりに光が差している。
景色のあるべき姿でさえも侵すと言うのか、ニンゲンよ。
やはり・・・貴様達は許すべからず。
私は全身を湖から出し、ニンゲンの巣窟へと進み始めた。
相変わらず私には余多の塊が降り注ぐが、そんな物が神である私に通用すると思うな。
ニンゲンがこの程度の抵抗しか出来ないのならば、神との違いを思い知らせてくれる。
湖から大地に移動し、今度は大地で動き易い低い体勢で巣窟を目指した。






と、そこに遠くからこちらに向かって来ていたニンゲンの移動物が私の近くに来た。
何処かで見た事が有る・・・と思っていると移動物の中からニンゲンが1頭現れ、そそくさと逃げ出して行った。
あのニンゲン、確か私のテリトリーでも何度か見たニンゲンだ。
常に行動的である以上、きっとあのニンゲンが今までの物事を仕組んでいたのだろう。
だとするなら、あのニンゲンさえ亡き者にしてしまえばニンゲン達の戦力は低下する筈だ。
何をする気かは分からないが、こんな小細工で私に挑むとは愚かな。
私は手を振り上げ、移動物を叩き潰そうとした。






それは突然に訪れた。
今潰そうとした移動物が発光したかと思えば、それまで感じた事も無い痛みが私を襲った。
これは・・・何だ。ニンゲンにまだ、こんな抵抗があったのか・・・
私はいつの間にか、大地に伏していた。
まだ、立つ力が私に残っているだろうか・・・いや、私は諦め無い。
我が聖域を、ニンゲンから取り戻すまでは・・・






身体に有る限りの力を込め、私は再び歩み始めた。
行ける。まだ、行ける。
私は神、この位の反撃で屈する器では無い。
ニンゲン達よ、神に抗った罰を受けるのはこれからだ。
私は歩みを止めず、ニンゲン達の巣窟を目前とするまで進んだ。
この巣窟を駆した先にあるもの、それは誰にも侵されぬ我が聖域。
そうだ・・・私の目的は我がテリトリーへ、聖域へ帰る事。
だからこそ、この巣窟は必ず駆する。
もはやこれは私と言う個の生存を懸けた争いだ。





ニンゲンの巣窟に入った途端、私は今までに無い程の攻撃を受けた。
自分達の巣窟に入られたのだ、ニンゲンも必死なのだろう。
だが、死力を尽くした所で私に勝てるとでも思うとは浅ましい。
後悔させてやろう、神に噛み付いたその所業を。
この地は自然が支配するべき地、貴様らの産み出したものが支配する所では無い。
ましてや、愚かなる貴様らの在る地など、この世には無し。
だからこそ、私が裁きを下してやろう。
神として・・・!






私は、ニンゲンの巣窟にあるもの全てを砕いた。
二度とニンゲンが現れぬ様に、二度と我が聖域が侵されぬ様に。
何故かニンゲンの姿が見えないが、あの移動物の中にいるのだろう。
逃げたのだとしても、必ず生き残りを見付けて亡き物にしてくれる。
そうして私はニンゲンの移動物を退けながら巣窟を進んだが、その先で待っていたのは私の予想だにしないものだった。






それは・・・光。
私が聖域を出る前に見た、あの光。
私が求めていた、神の光・・・
あの光の力を手にすれば、ニンゲンなどもはや私に抗えまい。
私が、本当の神たる存在となるのだ。
その為にも、あの光を・・・!






私は空から落ちて来る光の下に立ち、口から光を身体に入れた。
更にもう一つ光が来たので、それもまた身体に入れる。
これで・・・私は神の力を持つだけのケモノでは無くなった。
私が神となったのだ。
見るがいい、ニンゲン。
真の神となったこの私の・・・・・・!
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好釦