拍手短編集

・志真と東・西の場合










「あの~、まだお時間がありますのでパスポート以外の事でお2人に聞きたい事が・・・」



2011年・1月。
月でキングギドラを駆逐し、チャイルドゴジラと共に地球に帰還したゴジラを見届けた志真と遥は日本に帰国し、東・西の案内で無事に退院した瞬を見舞う為、彼の元へと向かっていた。
その車中、意外にも今まで一つの接点も無かった東・西へ、志真が交友の第一歩となる問いを投げ掛けた。



「志真、だっけ?別にかしこまらなくてOKだぜ?確かに俺と東の方が歳上だけどよ、そう言う感じは好きじゃねぇんだよな。」
「自分達も、瞬殿から前々からお前の事を聞いていたし、興味はあったからな。」
「東さんと西さんなら大丈夫ですよ、志真さん。」
「そっか・・・じゃあ、遠慮なく。2年前にインファント島で小美人に迷惑掛けたり、モスラをゴジラにけしかけようとした瞬の知り合いって、あんたらか?」
「「!?」」



志真からの的確に古傷を抉るクリティカルヒットの言葉に、助手席の西はシートベルトを締めているにも関わらず腰を抜かし、運転手の東はハンドルを上下に振ってしまい、車は無意味なドリフトをしそうになった。
車中も当然大きく揺れ、遥や質問者の志真本人も左右に揺さぶられる。



「わあっ!?」
「おっと・・・」
「あ、危なかった・・・!」
「ちょっ、ホントに遠慮ねぇ質問するなお前!?」
「遥ちゃんは『瞬の知り合い』が誰なのか言ってくれなかったから、瞬の弟子のあんたらぐらいしか該当しないかな?って思って。」
「あ、あの志真さん、お2人は去年のアンギラス事件の時に小美人さんにその事を謝罪していますし、志真さんもご存知だと思いますがモスラのいる場所には邪な人は・・・」
「分かってる。でも、はっきりさせときたいんだ。俺、あの時本気で腹が立ってたし、その後瞬と会って本気であいつと喧嘩したし。」
「え、ええええっ!?志真さんと瞬さんが、喧嘩したんですか!?」
「そういや、2年前くらいに瞬殿がいきなりやけに怪我した状態で来てた時があったけどよ・・・あれ、お前がやったのかよ!?」
「まさに戦闘のプロの瞬殿を、あそこまで負傷させるとは・・・何者だ?」
「こっちも次の日は体が全然動かなかったし、基本的にかわされたりカウンター喰らわされたりしたけどな。自衛隊員とやるんだから、多少攻撃喰らおうがとにかくがむしゃらにあいつをぶちのめす、それしか考えてなかったし・・・まぁ、そうやって殴り合いながら言いたい事言い合ってたら、お互いわだかまりが無くなってスッキリして、今は一応仲良くやれてるけど・・・と言うか、そんな事より俺の質問の返事に答えてくれよ。」


ーー・・・そ、そんな事で済ませていい話なのかな・・・?
私、経緯がすごく気になる・・・


「・・・お前の言う通り、『瞬殿の知り合い』は自分と西の事だ。今では人生最大の汚点だと思っている・・・」
「言い訳するわけじゃねぇけどよ、あの時の俺達にとっちゃゴジラはやっぱりいつ俺達の脅威になるかもしれねぇ、危ない存在だったんだ・・・けど、今はそんな事には絶対ならねぇとか、チャイルドゴジラがいるから安心だとか、キングギドラやアンギラスみたいな悪い怪獣を倒してくれてるヒーローみたいな奴なんだとか、全部分かってるからよ・・・!」



西はシートベルトを締めた状態で出来うる、限りなく低い角度である垂直90度の角度で頭を下げ、東も運転に集中しながら唇を固く閉めた俯き顔を志真に見せる事で、精一杯の誠意を見せる。
2人の猛省の姿を、志真は暫し見つめた後・・・



「・・・分かった。じゃあ、次の話に移るか!」



・・・あっさりと、だが飄々と許しの一言で返した。
この意表を突く結果に、志真以外の3人はまさに開いた口が塞がらない様子だ。



「えっ?志真さん・・・?」
「そ、それだけかよ!?」
「本当に、他に言いたい事は無いのか?」
「言っただろ?俺ははっきりさせときたい、って。だから別にあんたらにゴチャゴチャ言うつもりは最初から無いし、今はもう腹立って無いし。」
「な・・・なんだよそれ!!俺、てっきりクソミソに叩かれるかって思ってションベンちびりそうだったのによ!」
「ばか、女子の前でそんな事を言うな!しかし・・・正直、自分もそれくらいの心構えでいた。」
「びっくりさせんなよな、ホントによ!」
「私も驚きましたよ・・・ですが、志真さんが東さんと西さんの事を許して下さって、私も嬉しいです!」
「そうだな・・・ありがとう。流石は瞬殿の旧友だ。」
「ありがとよ!志真!」



2人は顔を上げ、まるで重い病気から解放されたかのような朗らかな表情を添えながら、志真に感謝の思いを伝える。
それを見た志真も心からの笑みで応え、見守る遥は歓喜に満ちた様子であった。



「まっ、そう言う事でこの話は一件落着!だから次の話に・・・」
「なぁなぁ、昔の瞬殿ってどんな感じだったんだ?教えてくれよ!」
「おい、西!お前は仲良くなった途端に無礼講になるな!」
「でも、東だって気になるだろ?」
「・・・確かに。」
「あの、私も気になります・・・」
「えっ?そんなに昔のあいつが気になるのか?って言っても・・・今より多少は口数が多かったり、一回だけ社会のテストの点数で俺に負けたり、沢山のバレンタインチョコを無理に一日で全部食って鼻血出してたり、文化祭は意外と色々楽しんでたり・・・」
「そ、そうなのか!?てっきり、自分は本の虫だったかと・・・」
「普通に青春してるって言うか、なんか若さを感じるって言うか・・・それとやっぱ、モテモテだったのかぁ!!」
「瞬さんも昔は、バレンタインチョコを一気に食べちゃったりする人だったのですね。ですが、私はそう言った所に瞬さんっぽさを感じます。」
「最初に再会した時は、昔よりだんまりしてるしイヤミ度は上がってるしかっこ付けてやがるなぁ、って思ったけど・・・なんだかんだ羨ましいくらいクールにかっこいい事する奴、って根っこは変わってなかったな。」
「そうなのですね・・・では、瞬さんもきっと志真さんと再会した時に、根っこに羨ましいと思える所を持ち続けている、と思った筈ですよ。」
「俺の?いやいや、あいつはそんなの思ってないって。遥ちゃん。それならあんな態度を俺に・・・」
「・・・いや、もしかしたらするかもしれねぇぜ?なぁ、東?」
「自分に振るな・・・ただ、お前の事を話す時の瞬殿はいつもより生き生きとしている気がするな。」
「え?じゃあ遥ちゃんの言う通りって事?それ、俗に言うツンデレじゃねぇか!いらねぇよ、いい歳した男のツンデレなんか!」
「まぁまぁ、落ち着いて下さい。志真さん。」
「とりあえず、もう瞬の話題なんかいいだろ?いいから次の話に・・・」
「なぁ、次はアメリカに行った時の事を話してくれよ!」
「自分もゴジラ打ち上げの時の事はテレビで見ていただけだから、気にはなるな。」
「アメリカの時の事?えっとな・・・まず、あの時はアメリカ行きの飛行機が軒並み欠便だったから、俺と遥ちゃんはゴジラとモスラにアメリカまで連れて行って貰ったんだけど、なんか途中で急にモスラが・・・」



これ以降、車内の話題は志真・遥のアメリカでの動向へと切り替わったが、目的地の自衛隊本部宿舎に到着し、東・西と別れて瞬と合流した後・・・志真は漸く、東・西に尋ねてみたいと思いつつも話題の変動の中で度忘れしてしまっていた、一つの疑問を思い出した。

[あの2人、何で瞬の弟子になったんだ?]










「・・・ってわけで、何で東西コンビを弟子にしたのか答えろ。」



それから暫し後・・・
自衛隊本部宿舎付近の喫茶店にて、東・西への疑問を突然思い出した志真は質問相手を2人の師匠である瞬に変更し、唐突に彼へこう問うた。



「何の流れで、そう言うわけになる?」
「そう言う流れだよ。言いたい事が思い出せなくてモヤモヤするのはよくあるけど、言いたい事を思い出したのにモヤモヤするなぁ、これ・・・だから、師匠のお前が答えろ。あっ、いい歳した男のツンデレとかいらないからな?」
「ツンデレ・・・?俺にはお前が言っている事が、何一つ理解出来んが・・・何故、今になってあの2人に興味を示したんだ?」
「実は志真さん、東さんと西さんに会うのは今日が初めてでして、色々とお話している内にお2人に聞きたかった事を忘れてしまったようなんです。あっ、どうしてツンデレと言ったのかは・・・」
「妃羽菜、補足はそこまでで良い。しかし、お前とあの2人とで面識が一切無かったのは盲点だったな・・・そうか、今までお前が俺の元に来ていた時は別動隊の臨時指揮を任せていたのか・・・」
「だろ?それなら答えろって。」
「私も、東さんと西さんがどんなきっかけで瞬さんの弟子になったのか、気になります!問題が無ければ、どうか教えて下さい!」
「妃羽菜にまでそう言われては・・・仕方がないか。分かった、あの2人から聞いた事柄も含めて話そう。」











「「弟子にしてください!!」」



2008年、3月。
自衛隊本部横・隊員宿舎の一室前に、重なり合う二つの声が響いた。
ドアを半分開け、体をやや乗り出し声を聞くこの部屋の主は、わずか27歳にして自衛隊特別大尉としてその腕を揮(ふる)っている新進気鋭の男・瞬庚。
そして彼の部屋の前で深々と頭を下げている、この場違いな声の張本人である2人の男、それぞれ名は東と西。
教習学校で同じ部屋になった時からずっと2人で行動し、良くも悪くも自衛隊本部では有名な新人バディとして知名度のある2人は先日瞬の部隊に配属され、挨拶をするや瞬にこう叫んだのだった。



「・・・弟子、だと?」
「はい!貴方の活躍は、訓練生の頃から存じ上げています!関西の牾藤特尉と並び、自衛隊の若手の星である瞬特尉の元に来れたこの機会を人生最大の好機と思い、弟子入りを志願した次第であります!」
「俺も、以下同文であります!」
「おい、西!自分の言葉を盗るな!」
「・・・馬鹿馬鹿しい。そんな事でこの場で騒ぐな。お前達の評判は聞いているが、俺より年齢は上であるにも関わらず、いつまでも学生気分が抜けていないのは確かなようだな。」
「「は、はい・・・」」
「それにもし、お前達が俺の弟子とやらになりたいならば、東潮(うしお)。お前は、余計な一言を言う悪癖を直せ。西勲(いさお)。お前は、自分の意見を言葉に出来る頭を持て。以上だ。」



険しい表情を一切崩す事無く、瞬はそう言うとドアを閉めて鍵を掛けた。
それは弟子入りの話が無くなった事を意味し、2人は肩を落とす。



「・・・はぁ、無理だったか。」
「すごい迫力だったなぁ・・・」
「噂に聞いていたが、冷酷にも近い厳しさだ・・・」
「ってか、やっぱ俺達の方が年上なのに生意気だぜ。俺達は人生の先輩なのによ。」
「ばか、そういう問題じゃない。しかし、やはり自分達ではまだ無理なのか・・・」
「スゴい自衛隊員の弟子になれば、スゴい自衛隊員になれるって思ったんだけどなぁ・・・はぁ。」







「・・・やはりと言うか、最初は断られると。ってか、しれっと東西コンビの本名が出て来たんだが・・・そんな名前だったのか。」
「私も初めて知りました・・・何故か、疑問に思った事がなく・・・ですが潮さんと勲さんって、本名も何だか似ていますね。」
「部隊内でも、名字の方で呼ぶ事が多いのもあるだろうな。ちなみに、2人の誕生日も同じ10月31日だ。」
「「ええっ!?」」
「そ、それも初めて知りました・・・!」
「しかもハロウィンが誕生日とか、おめでたいコンビだなぁ・・・」
「話を戻すが、その後俺の部隊に入った2人は暫くの間、特に何も言って来なかったのだが、とある日の訓練の後・・・」







「だぁ~っ!!今日の訓練もしんど過ぎだろぉ~!!」
「ばか、叫ぶな!体に響く・・・明日までに、体がどれだけ回復するだろうか・・・」
「そういやさ、俺今日の瞬特尉の掛け声でなんとなく頭に残ってるのがあってよ・・・」



『そうだ!この地道なトレーニングが、明日の力への糧となる!それを忘れるな!』



「・・・それか。自分も同感だ。恐らく、この言葉は瞬特尉が自分達に最も伝えたい事なのかもしれない・・・」
「・・・地道なトレーニングが、明日の力への糧となる・・・!」
「西?どうした?」
「・・・俺、瞬特尉にこれからもう一度弟子入り志願して来るぜ!」
「な、何ぃ!?この前断られたばかりだぞ!」
「それでも、弟子にしてくれるまで諦めずにやってやる!これは、精神を鍛えるトレーニングだ!!それが明日の力への糧になる、って言ったのは瞬特尉だからな!」
「ばか、瞬特尉をトレーニングの道具に使うな!・・・だが、自分もまだ諦められないし、諦めたくない・・・!」
「だろ!俺とお前で、瞬特尉を言い負かしてやろうぜ!」
「・・・よし、乗ったぞ!西!」






「それから、2人は毎朝俺が部屋を出たと同時にやって来て、弟子入りを志願し続けた。俺が宿舎を出る時間を何度変えようと、翌日には何食わぬ顔で部屋を出た俺へ弟子入りを志願しに来る。その繰り返しが、100日は続き・・・」






「「おはようございます!瞬特尉!今日こそ、弟子にして下さい!!」」
「・・・はぁ。100日もの間、朝からお前達が俺に頭を下げる光景を見る羽目になるとはな・・・怒りを通り越して、呆れる他無い。」
「申し訳ありません!!ですが俺も東も、特尉が弟子にしてくれるまで200日でも300日でも1000日でも続けますよ!!」
「自分も、西と同じ決意であります!!」
「全く・・・分かった、考えておいておく。だからその迷惑な習慣は、明日から止めろ。」
「・・・い、今・・・なんと?」
「お前達を弟子にする事を、検討しておくと言った。だからもう、毎朝弟子入りを志願しに来るのは止めろ。」
「ほ・・・本当ですね!?天地がひっくり返ってもですね!?」
「検討するだけだ、決定とは言っていない。だが、その迷惑さと紙一重の意志の強さは考慮する。少なくとも、半端な意志で俺の弟子になるつもりは無い事は分かった。しかし、少しでも俺に影響が及ぶような不祥事をすれば・・・即、破門にするぞ?」
「「り、了解しました!!本当に、本当にありがとうございます!!」」
「それと、例えお前達が師弟になろうと、あくまで俺とお前達は上官と部下だ。特別扱いはしないぞ。」
「分かってますって!じゃあ・・・少しお近づきになれたって事で、『瞬殿』と呼ばせて頂きます!」
「ばか、『殿』は目上の者が目下の者に向けて呼ぶ言い方だ!確かに歳上だが、無礼にも程があるだろうが!」
「・・・勝手にしろ。『師匠』や『先生』よりは、僅かにマシだ。」
「マシ・・・なのか?」
「流石は瞬殿!人間としての器の大きさがキングサイズですねぇ!」
「調子に乗るな!それより、西のご無礼を詫びると共に寛大な対応、誠に感謝致します!それから・・・」
「「どうか、これからは貴方の弟子として宜しくお願い致します!瞬殿!」」










「・・・こうして、今に至る。」
「なるほど・・・東さんと西さんが諦めずに頑張ったから、瞬さんの弟子になれたのですね・・・!私、何だか感動しました!」
「要はお前の根負け、ってわけか。まぁ、あの2人はお前以上にグイグイ行く感じだしな。」
「モスラの妖精への一件のように、はっきり言えば迷惑を起こす事も少なくは無いが・・・2人に助けられている部分があるのもまた、少なくは無いのも事実だ。ああ言った連中は放置するより、俺の元に置いておく方が統制もしやすいからな。」



迷惑そうな口振りとは裏腹に、少しの笑みを浮かべながら弟子について語る師・・・その様子を見た志真と遥は、瞬の東・西への本心を察しつつもあえてその点には触れず、自らの胸の内に仕舞っておく事にした。



「・・・ただ、弟子になるやいきなり俺の部屋に上がり込み、飲み会を開始したのは本当に迷惑だったな。」
「まっ、お前は見てからに酒が飲めそうに無いしな?一生下戸を貫くつもりだろ?」
「いや、酒は飲めない訳では無い。だが・・・どうも酒と言う形でアルコールを摂取すると暫くして記憶が飛び、目を覚ますといつの間にやら大量の酒が辺りに転がっている・・・それが何度かある、と言うだけだ。」
「そ、それって・・・」

[お前、実はムッツリ酒乱なのかよぉ!?]










それから9ヶ月後、10月31日。
世界中がハロウィンで賑やかになる中、新宿の街の一角に東と西の姿があった。
今日は東と西の誕生日であり、2人にとって今日を迎える事は仮装した者達にとっての「トリック・オア・トリート」の一言よりも重要でかつ、嬉しい事であった。



「うっほ、今年もどこもいつもより騒がしいぜ・・・みんな、俺達のハッピーバースデーを祝ってるみたいだなぁ~!」
「ばか、ハロウィンだからだろ。しかし、これはお前と組んで一番驚いた事だが・・・まさか、お前と誕生日まで一緒だとはな。」
「まっ、だからわざわざ男2人で出掛けてんだろ?まぁ、これで遥ちゃんがいたら最高なんだけどよ!」
「自分達のプライベートにまで、彼女を巻き込もうとするな。」






『ヒューッ!見ろよ、アイツらの浮かれっぷり・・・まるでオマツリみてえだ!!こりゃ、オレ達のバースデーも祝ってくれるかもしれねぇ・・・!』
『ファック!今日はハロウィンだからだ!しかし、お前とタッグになって一番驚愕したのが、バースデーが同じだった事に尽きるな。』
『だからこうやって、休暇取ってニッポンに来たんだろ?これでハルカもいたら、サイコーなんだけどよ!』
『お前はいちいち彼女に迷惑を掛けようとするな!』






「・・・えっ?ハルカ?」
『・・・へっ?遥ちゃん?』






「『お、お前は・・・!!』」



新宿・アルタ前。
数年後にとあるお昼のバラエティ番組の集合場所では無くなる、新宿の巨大なビジョンの前で・・・出会う筈の無い2人組同士が、出会った。



「な、何でか知らねぇが・・・お前と俺は、他人な気がしねぇ!」
『どうしてか分からねぇが・・・オレ、お前と初めて会った気がしねぇ!』
「何だ、この既視感は!?明らかに外国人の筈なのに・・・!」
『このデジャブは何なんだ!?どう見ても日本人だぞ・・・!』






「「『『よし、まずは自己紹介だ!』』」」



『私はアメリカ空軍のイース・R(ライト)・ハーディ。階級は大尉。コールサイン「ヴァイパー」だ。』
『オレはウェイス・L(レフト)・ローレル!同じくアメリカ空軍の大尉でコールサインは「マッハ」だ!』
「なっ、こいつらコールサインとかありやがるぞ!俺達も適当に名乗っとくか?」
「ばか、適当に名乗るなぁ!あの2人はアメリカ空軍の兵士だからコールサインを持っていると言うだけだ!」
「なにぃ!アーミーってだけで生意気なぁ!なら・・・俺は西勲!!自衛隊陸軍小尉にして、自衛隊特別大佐の瞬庚の一番弟子だぁ!!・・・えっと、日本語分かる?」
「やけに大きく出たな・・・ちなみに、自分は東潮。同じく自衛隊陸軍小尉で、瞬特別大佐の弟子をやらせて貰っている・・・日本語は理解出来るか?」
『大丈夫だ。色々あって、大体の日本語のリスニングも出来る・・・しかし、「トクベツタイサ」と言うと二年前に死亡したブリュー特尉と同じなのか・・・?』
『要はスペシャルズ、ってワケか?それより「シュン」ってどっかで聞いた事が・・・ああっ!!分かったぞ、イース!シュンってあいつだ!この前ここに来た時に会った、シマとハルカの知り合いだぞ!』
『なに?あのシュンなのか、ウェイス?と、言う事はシュンがあの時言っていた、私とウェイスに似ているコンビと言うのは・・・』
「んっ?そう言えば、前に志真と遥嬢がアメリカで自分と西によく似たコンビの軍人に世話になったと、話していたが・・・」
「まさか、その極楽コンビの正体は・・・」



「「『『お前らの事かぁ!!』』」」



アルタ前にこだまする、4つの驚愕の声のユニゾン。
目の前にいるのが、存在だけは知っていたまるでドッペルゲンガーのような、存在する筈がない・あり得ない・そこまでそっくりな訳がない・・・その認識を全て否定する、事実そのものであったからだ。
東とイース・西とウェイスでそれぞれ指を指し合う格好となり、そのまま東・イースは無言で思考回路をフル稼働させて情報を整理するが、西・ウェイスは逆にジリジリと一歩ずつ互いの距離を詰めて行き、目と鼻の先の距離になった、その瞬間。
ウェイスは西に、一つの問いを投げ掛けた。



『・・・よし、一つ質問だ。ブラザー・・・お前の知ってる「ハルカ」って、どんな女だ?』
「決まってんだろ、兄弟・・・遥ちゃんは大和撫子で、スレンダーで、それから可愛い女子高生だ!」
「『・・・やはり、そうか。』」
「・・・」
『・・・』






「「『『・・・今から、一緒に飲むか!!』』」」



こうして、似た者コンビ同士が合体した「東西カルテット」を結成した4人は、自分達の出会いと生誕の日を祝おうと酒場を求め、眠れぬ夜へと導くネオンの光に誘われるかのように、肩を組み合いながら新宿の雑踏の中へと消えて行ったのだった・・・

[~東・西とイース・ウェイスの場合~]
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好釦