‐GREATEST‐応の超獣と七体の大怪獣
戦いからしばらくして、巫子達は故郷に帰る準備をしていた。
それぞれ東西南北の方向に鏡形転送装置が置いてあり、名残惜しそうに巫子達は志真達やGnosis達との会話に興じる。
しかしその転送装置を1人、いぶかしげに触りながら見つめる男がいた。
「・・・そうだ、お前にどうしても聞いておきたい事がある。」
『ほいほい?』
そう、瞬だ。
彼は丈・憐太郎・志真・ジュリアとバイラスシリーズやダイゴロウについて話していたファンロンに話しかけ、彼女も気の抜けた声で返事をしながら振り返る。
「おい、これからダイゴロウの三大名シーンを話そうとしていた所だぞ!邪魔をするな!」
「すまない。だが、どうしてもこの疑問だけは、解決しておかなければいけないと思ってな・・・率直に聞こう。お前は一体何者だ?」
『えっ、あたし?』
「俺は見ていた。四神がバラン達の封印を解こうとしていた時、お前が地面から物理法則を無視して巨大な物体を出していたのを。猫もどきを地面から出した点に関しては奴らの生態にするとして、今もこうしてこの鏡を四つもこの場に持って来た・・・全く同じ物を、同じ方法で。
それに、『ファンロン』と言う言葉にどうも聞き覚えがあると思ったら、中国語における『黄龍』の読み方と全く同じだ。本当にそんな都合の良過ぎる名前なのか?三種の神器の真実、結晶及び所有者まで知っていたのも気がかりだが、何より『反物質の世界』がある事まで知っていたのは何故だ?現代で反物質をまともに扱える者はいないし、反物質の世界があると言う理論など聞いた事が無い・・・そもそも、お前は黄龍がこれから現れる場所まで正確に把握していた。つまり、お前は『非現実的な真理』についてあまりにも知り過ぎていると言う事だ。本当にお前は、ただの旅人なのか?」
『旅人だよ?ただ、時空をも超えられた旅人だけどね。』
「時空をも超えられた?」
『どうしようかと思ってたけど、今回の一件はあたしも関わりがあるし、やっぱり話しとこっかな。そう、実はあたしは別世界から来たのです!』
「「「『・・・えっ?』」」」
あまりに突飛かつ、想定外な事をさらりと言う「彼女」に、一同はつい一言漏らす。
が、そんな彼らを意にも返さず、「彼女」は話を続けた。
『あたしがいた世界は、「G」って言う世界そのものに影響を与えるモノが存在する世界なの。君達で言えばゴジラ達怪獣やその「結晶」で、四神も巫子もほとんど同じ感じで存在していたわね。』
「私達や、ガメラ達四神が?」
『うん。ちょっと違いはあるけど、向こうの世界の巫子達も知ってるよ。あたしはその「G」を昔からずっと調べてて、あたしもその「G」を生まれた時から持ってるの。』
「「G」を?」
「彼女流で言うなら、『想造』。頭の中で思い描いたモノを絵として書き、実体化させる能力よ。混乱を避ける為にGnosisとしては言わないようにしてたけど、異次元人なのは初耳だったわ・・・」
「オレ達の前で発掘道具やら、色々出してたからな・・・多分その鏡も、バイラス円盤も『想造』とやらで造ったに違いねぇ。」
『せいかい!ヤタノカガミの話を聞いて、どんな物なのか考えてる内に出来ちゃったんだ~☆』
「そんな軽々と造ったって言う物じゃ・・・」
『まぁ、実体化するにはそのモノの構造を設計図レベルで思い描かないと上手くいかないんだけどね~。さっき瞬君が言ってた1/1バイラス円盤だって、そこまで思い描く余裕が無かったから、スーパーキャッチ光線とかまで再現出来なかったし。』
「でも、逆に言えばファンロンさんのイメージ次第で、完全な1/1バイラス円盤が造れる・・・!?」
「・・・レン、目の色が変わってるよ。」
「そういえば、向こうの世界にも四神や巫子がいて、じゃあ黄龍もいるんですか?」
『一応、そうだね。けどここと違って四神を作る為に体をバラバラにしたみたいだから、存在はしてないけど。』
「そんな・・・」
「向こうの世界でも、黄龍は人間の勝手に巻き込まれたのね・・・」
『でもね。黄龍はこの星の力を使って生まれたんだから、「魂」としてはこの星の中に残ってるんじゃないかな?「G」の世界でも地球自体が持ってる「G」があって、あたし達は「ガイアの「G」」って呼んでたわ。』
『「ガイア」って、黄龍のほんとうのなまえとおなじだ!』
『それに、また黄龍が蘇るような事があっても、今度は大丈夫かもしれないよ。だって、遥ちゃんがくれた「愛」を覚えていないわけないもんね♪』
「・・・はい。」
「・・・とりあえず、お前の正体について大体分かった。なら、この世界に来た目的は何だ?」
『きっかけは三種の神器ね~。「G」の世界でもオリジナルはあって、その中で草薙剣・・・向こうじゃ主に天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)って読んでたけど、それは何処にあるのか分かってたし、ヤサカニノマガタマも黄龍じゃなくて四神に埋め込まれてたから、あとはヤタノカガミだけが行方不明だったの。それで調べてる内に、鏡は一万二千年前に何人かの人と一緒に別の世界へ飛んでたのが分かったんだ。』
「一万二千年前か・・・アトランティス文明を思い出す。」
『そうだよ?黄龍も四神も三種の神器も、全部アトランティス文明が作ったの。』
「な、なんだってぇ!!そんなフィクションみたいな事あるのかぁ!?」
『それが「G」のある世界だよ~?たとえば、ジャンヌ・ダルクも「G」の持ち主で、同じ「G」使いと一緒に革命してたとか♪』
「なるほど。聖女ジャンヌは能力者だったのね・・・」
『この世界の黄龍や四神はアトランティス製じゃないみたいだけど、「G」の世界から鏡で逃げて来た人達が何処かの文明に技術を教えて、似た感じで造ったんだと思う。』
「三種の神器・・・あっ!」
「どうしたの、丈さん?」
「どこかで聞き覚えがあると思ったら、冷蔵庫・テレビ・洗濯機の事もそう言うじゃないか!」
「兄者、確かにそれも昔の話だけどさ・・・と言うか、分かる人がいないって。」
「何言い出すかと思えばくだらねぇぞ!丈!」
「・・・続けてくれ。」
『それでね、どうしようかと思ってた時に時間と空間の「G」を持った子を中心にした凄い戦いが起こってね、それを見て閃いたあたしが造ったのが、時空干渉装置「ディメンション・タイド」なの。』
「時間と空間の戦い・・・ディアルガとパルキアみたいなもんか?」
「すまねぇ、あんたも黙っててくれ。」
『その装置はあらゆる次元の歪みを捉えるだけじゃなくて、非常に近い構造・可能性がある世界に飛べる装置でね~。鏡が反物質の世界を通れる性質があるのを睨んで、さっき言ってた反物質に詳しい子、猫ちゃんの飼い主の子に反物質世界で変化が無いか聞いてみたら・・・ビンゴ!「G」の世界とは別の次元の辺りで、何度も歪みがあったって情報が入ったの。そこに目掛けてディメンション・タイドで飛んで、この世界に来たってわけ。』
「・・・なんか、通りすがりの仮面ライダーみたいな話やなぁ・・・」
『鏡の場所は向こうでも分からなかったから、場所を探すのに半年くらいかかったけど、その間にGnosisや巫子達と会ったりして、やっと鏡の場所が分かったかと思ったらもぬけの殻で・・・仕方ないから勾玉がある所に行ったら、そこに黄龍が封印されてて、あたしの目の前で突然封印が解けて、反物質の世界に消えたの。』
「そして、私達の前に現れた・・・」
『そっ。これで謎解きは終わったでしょ?じゃあみんなとお別れして、あたしも元の世界に・・・あっ。そういえば君達の中で最近起こった、一番変な事ってなに?』
「一番変な事?そうだなぁ・・・俺達とGnosisって一度、去年の大晦日に会った事があるんだけど、それがなんかもうそれは奇妙な物語で・・・」
「あれですか・・・あの時はもう何が起こって、何がしたかったのか、分かりませんでした・・・」
『あちゃ~、やっぱり。えっとね、ディメンション・タイドには一個だけ欠点があって、次元を飛ぶ時にその次元同士が溶け合っちゃうんだ~。つまりね、別次元同士が一時的にくっついたり、不可思議な事が当たり前みたいに起こるの。あたしがこっちに飛んでたどり着いたのが去年の大晦日だから、何か起こってないかなって思ってたんだけど・・・』
「じゃあ、あの時有り得ない事が起こっていたのも・・・」
「全部お前の仕業かっ!くだらねぇ目的でオレ達を大阪に呼び出したのも、どうせお前だろ!」
『えっ?あたしはこっちの世界に飛んだだけで、それ以外は何もしてないよ?』
「えっ?」
『何があったか分からないけど、それはディメンション・タイドを使った混乱に合わせて、また違う存在がやったんだと思うな。そもそもあたし、その時まだGnosis達がいるなんて知らないし。』
「なら、あの騒動を起こした『作者』は一体何者なんだ!」
『案外、暇を持て余した神様の遊びかもね~☆』
「神様の、遊び?」