‐GREATEST‐応の超獣と七体の大怪獣




「勝った・・・のか?」
『えっ、こんどこそたおしたんじゃないの!?』
「またさっきみたいに、復活するかもしれないわ。」
「念には念を。何があっても、おかしくない。」
『黄龍に息があるなら、復活するかもしれないね。胸の勾玉が光って無いか、ちょっと確認してみて。気になる事もあるし・・・』
「分かりました。ガメラ、頼むよ。」
「ゴジラも行ってくれ。」
「アンバーはみんなを守れるように待機してて。」
「・・・お願い、もう眠っていて。黄龍・・・」



グルルルルル・・・


グァヴウゥゥゥン・・・



ゴジラ・ガメラがうつ伏せに倒れたまま動かない黄龍に近付き、他の怪獣達はもしもの事態に備えて黄龍を警戒する。
そして二体はそれぞれ黄龍の肩を掴み、ゆっくりと持ち上げた。



『どれどれ?勾玉の様子は・・・』



・・・ギャヴォァォ・・・!



ファンロンが黄龍の胸に目をやった時、確かに勾玉はその生命活動を示すかのように光を失っていた・・・はずだった。
だが、それを確認したその瞬間に勾玉は禍々しい黒の光を放ち、ゴジラとガメラを吹き飛ばした。



――っ!?
お二人共、わたくしの風に!



すかさずアンバーは風のクッションでゴジラ・ガメラを包んで衝撃を軽減し、二体は無事着地する事に成功した。
バランとモスラは風で、ギャオスは閃光、マンダは水流で黄龍に攻撃するものの、宙へ飛んだ黄龍には当たらず、ぶらりと力無く両手足を垂らしながら、虚ろな表情で黄龍は空高く舞い上がって行く。



「危ねぇ、間一髪・・・」
「紀子、大丈夫?」
「うん。アンバーが助けてくれたから。それより、あれ・・・」



ギャァヴォァァァァオォォン・・・!



怪獣達の遥か上空までたどり着いた黄龍が、胸を自らの両手で引き裂いたかと思うと、その裂け目から覗く巨大な鏡を中心にして混沌の穴、虚空への入り口が現れた。
光の見えない暗黒の中心部、周囲の空間をも歪ませる巨大な穴は瞬く間にあらゆる物を吸い込んで行き、空を流れる雲が、街の瓦礫が強すぎる引力のままに、穴の中へと消えて行く。
怪獣達や志真・巫子・Gnosis達はアンバーの周囲に集まり、気流をコントロールする事によってどうにか踏みとどまっているが、それも時間の問題だ。



「ありがとう、アンバー!」

――いえ、穂野香・・・しかし、あれは一体・・・?
わたくしも、あんな黄龍の姿や力を一度も見た事がありません・・・

「なんやねん、あれ!どんだけタフなんや、あいつ!」
「タフって話じゃねぇぞ!あれ、明らかに異常事態だろうがぁ!」
「間違いない!あれは、ブラックホール・・・!」
『蓮浦君、正解。黄龍が作り出した光さえ脱出できない、高密度の空間の裂け目・ブラックホール。吸い込まれたら最後、脱出は不可能。』
「・・・ああっ!あんな感じの兵器を、バイラスの第一先住民族が使っていたぞ!」
「星間対殲滅用凝縮ブラックホールキャノン『コラプサー』ですね、丈さん。」
「それ、色んな星を消し去ったバイラス第一先住民族の究極兵器だっけか。確かに似てるな・・・」
『無理に「あれ」の力を使って、完全に暴走してるね・・・やっぱり、「ヤタノカガミ」は黄龍が持ってたか。』
「「「えっ!?」」」
「それは本当なの!?ファンロンさん!」
「どういう事だ、ファンロン!ヤタノカガミがあいつの中にあるって!」
『やたのかがみ?』
「『八咫鏡』。昔天照大神って言う神様が天皇様に授けた、三つの道具の一つよ。他に草薙剣(くさなぎのつるぎ)と、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)があるの。」
「三種の神器、ボクも名前は聞いた事があります。妃羽菜さん、詳しいですね。」
「この前、歴史の授業で出て来たから・・・ですが、何故Gnosisの皆さんはそんなに慌てているのですか?」
「それはな、三種の神器の『オリジナル』が既に失われた物だったからだ。」
「一般的に伊勢神宮に鏡、熱田神宮に剣、皇居に勾玉があると言われているけど、それはあくまで神が宿る為の物『形代』であって、そのオリジナルは黄龍や四神と同じ文明が作って、長らく行方不明だったの。」
「まぁ、勾玉は黄龍が持ってるらしいってのは知ってたし、巫子が持ってる勾玉は『八尺瓊勾玉』を元に作られたもんだから、ある意味オリジナルの勾玉だな。」
「だからこそ、私達が探していた鏡がこんな所で見つかって、びっくりしたの。」
『本当は別の所にあったみたいだけどね。あたしも鏡の行方を追ってる最中に、黄龍の封印場所にたどり着いたんだもん。ヤタノカガミは次元を越える力があって、黄龍が本来使えないはずの次元転移を使ってておかしいと思ってたら、ビンゴだったってわけ。多分黄龍に何者かが鏡を埋め込んで、それが原因で黄龍が蘇ったのよ。でも黄龍レベルの怪獣だって、二つの神器の力を同時にフルで使える保証なんてないのに・・・』
「何処の誰だか知らねぇが、仮にも神聖な宝具で勝手な事してくれやがる・・・」
『厳密には、「反物質の世界を利用して別の場所に飛ぶ」のが、ヤタノカガミの力なんだけどね。』
「反物質・・・この宇宙から消えたとされる、物質と正反対の性質を持った物質の事か。」
『さっすが瞬君!それでこの猫ちゃんの飼い主が実は反物質に精通しててね、最近反物質の世界でよく歪みが起こってるって聞いて、調査を開始したの。反物質を操れる物って、あたしの知ってる限りじゃヤタノカガミぐらいだったし、三種の神器を調べてる内に黄龍が復活しちゃって、巫子に近い力を持ってる志真君達を頼る事にしたってわけ。』
「へぇ、あの猫の飼い主がそんな人だったなんてな・・・」
「今はとにかく、あれをどうするかを考えないといけないわ。ファンロンさん、方法はある?」
『ん~っ・・・反物質を使ってるから、反物質には物質を、正には負を!つまり!強力な攻撃を黄龍にぶつける!』
「えっ?そんなのでいいの?」
「乱暴な理論だが、『対消滅』を利用するんだ。反物質はこの宇宙にあるあらゆる物質と正反対の性質を持っていて、物質と衝突する事で膨大なエネルギーに変換され、反物質としては消滅する。あのブラックホールが反物質で構成されているのなら、その逆の性質を持つ膨大な物質をぶつける事により、ブラックホールをエネルギーに変換して消滅させられなくもない。ただブラックホール自体の性質を考えれば、あまりに巨大になり過ぎると物質を衝突させる前に吸収され、消滅が不可能になるかもしれない。」
「・・・瞬先生の解説、分かった人いるか?」
『はぁ~い♪』
「「「・・・」」」
「ま、まぁとりあえず、ファンロンの言う通りって事だ・・・だよな?」
『じゃあ、最初からそれでいいじゃん、トゲトゲ君。』
「オレには浦園験司って名前があるんだよ!いい加減、その呼び名はやめろ!」
「まぁまぁ、験司。だけど、そんな力がまだ残っているの・・・?」



怒る験司をなだめ、蛍は巫子達に目をやる。
しかし蛍の心配とは裏腹に、その誰しもが活力に満ちた表情をしていた。



「大丈夫よ、蛍姉ちゃん。諦めない限り、限界なんてないんだから。」
「僕と紀子の命がある限り、諦めるなんて絶対に無い!」
「レンや紀子だけじゃない、私達だって諦めてなんてない!あんなので怯む私達じゃないわ!ねっ、アンバー!」

――はい・・・!
穂野香達がいる限り、わたくし達四神は決して負けません!

「男なら、例えどんな事になってもやらなければいけない事がある・・・ボクもギャオスも、諦めてません!」
『ここで黄龍をたおして、みんなをたすけるまであきらめない!マンダ、さいごのしょうぶだよ!』
「・・・と、言う事だそうだ。」
「俺達は最後まで巫子達の助けになるって誓った。それはゴジラ達も同じだ。だから、俺達も最後まで諦めない!」
「Gnosisの皆さん。巫子を、怪獣達を応援して下さい。皆さんの声で、みんなに力を下さい!」
「・・・私の杞憂だったみたいね。」
「あぁ!それくらいならいくらでもやってやるぜ!」
「ええ。樹さん、あなた達なら勝てるわ!」
「おかんの底力を見せたるんや!ギャオス!」
「頑張れぇ!ファイトだっ!穂野香ちゃんっ!」
「戦う君は美しい・・・だから、アンバーさんが負ける事など無い!」
「フレー!フレー!マンダ!」
「負けるな負けるな、ジュリアちゃん!」
「これが終わったら、また私達と調査に出掛けましょう。だから、絶対に帰って来て!」
「レン!紀子!ガメラ!お前らの絆の力で、あんな野郎ぶっ飛ばせ!!」
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好釦