‐GREATEST‐応の超獣と七体の大怪獣
「・・・分かったわ。私達も、全力で力を送る!貴方達だけじゃない、私達の力も合わされば!」
「お前達が賭けた全て、必ず届けさせる!」
「ああ!瞬、遥ちゃん、それにみんな!行くぞおぉぉぉぉっ!!」
巫子達が勾玉を結晶にかざすと共に、四神達が各々の勾玉と同じ色の光に包まれて行く。
勾玉から伸びた光の線が結晶に当たり、その中へ入ろうとするが、それを黄龍の雷が阻む。
「うっ・・・!これが、黄龍の抵抗力・・・!」
「でも、僕達みんなの力があれば・・・!こんなのに、負けないっ!!」
「そうだ!お前らはそんなに弱い奴らじゃねぇ!負けんな!紀子!レン!」
「私達もついているから、負けないで!」
――・・・チェリィ、ごめん。
こんな事させたくなかったけど、緊急事態なの!
絶対に生きて君の所に帰すから・・・お願い!
『行くよ!タマ!ミケ!クロ!モンスロード!』
ファンロンが杖を黄龍に向けるや否や、杖の先から三つの小さな黒い光が飛び出して行き、黄龍を囲むように並ぶ。
それから光は大きさを増して行き、一閃した後、そこには怪獣サイズに巨大化したタマ・ミケ・クロの姿があった。
『よ~しっ!!みんなで黄龍を混乱させちゃえ~っ!』
ファンロンの号令に従い、三体は体を震わせながら黄龍に何かのエネルギーを送り始める。
エネルギーを浴びた黄龍は感電した魚のように全身をけいれんさせながら、ぺたりと地面に座り込んだ。
これは三体が発したエネルギーがそれぞれ生物の記憶・思考・生体活動を麻痺させているからであり、黄龍は目と頭を回しながら先程の脅威的な出で立ちは何処へやらの、すっかり情けない姿をさらしていた。
「おおっ!なんか、黄龍が酔っ払い始めたぜぇ!あの猫、すげぇ!」
「まさに今がチャンス!妹さん、行くんだ!」
「言われなくても・・・私もアンバーも、みんなも全力ですっ!!」
――わたくし達を寄せ付けなかった黄龍の抵抗力が、確実に落ちています・・・!
タマ様、ミケ様、クロ様のおかげですね・・・!
だが、三猫達も力を合わせて全身全霊を込めているからこそ、黄龍の動きを止められたのであり、普段からここまで能力を使った事の無い三猫は目をつぶって汗だくになりながら、必死にエネルギーを送っているものの、少しずつエネルギー量が弱まっており、黄龍の混乱状態がそれに合わせて収まりつつあった。
「まずい、たまにゃんが苦しそうにしているぞ!」
「だって、非戦闘員なのにあんな化け物を妨害してるんだ!頑張りすぎなくらいだよ!」
『じゃあ・・・わたしも、もっとたっくさんがんばらないと・・・!ねっ、マンダ!』
ヌゥガァゥゥゥ・・・
やがて、身体機能不全は五元素の力で無理やり各器官を動かす事で、思考・記憶不全は闘争本能を活性化させる事で解消した黄龍は四元素の波動を放ち、三猫を弾き飛ばした。
『ああっ!タマ!ミケ!クロ!』
目を渦巻き状に回しながら三猫は倒れ、光になってファンロンの杖に戻って行く。
『こんな事させちゃってごめんね・・・ゆっくり休んで。』
「げっ!足止めしてた猫がやられてもうた!どうすりゃええねん!」
「落ち着きなさい、岸田さん。焦ってもどうにもならないわ・・・」
「あと、ちょっと、なんです・・・!まだいけるよね、ギャオス!」
ギャァオォォォォ・・・
「ファンロンさん!何か造れない!?足止めさえ出来れば何でもいいの!」
『えっと、ええっと・・・』
「お前、いつもその場で色んなの造ってんだろ!あいつの邪魔が出来ればいいんだ!なんかねぇのか!」
『そんな事言われても、いきなり過ぎるし・・・ええ~いっ!間に合わせの突貫作業だけど・・・仕方ないっ!突貫で、ドッカーンッ!!』
験司・蛍からの唐突な頼みに対し、ファンロンは杖を筆に変え、地面に頭が四つに分かれた細長いイカのような生物・・・宇宙人・バイラスを書く。
するとその絵の中から質量保存を軽く無視し、丸いリングに繋がれた、五つの白黒の縞模様の円形の物体が現れた。
『1/1バイラス円盤!あとちょっとでいいから、黄龍を止めて!』
バイラス円盤は黄龍に取り付き、それぞれの円形物が回転して黄龍の体を押し潰そうとする。
多少黄龍を押し返したものの、黄龍の「火」の元素を加えた爪によって引き離され、雷電光線でバイラス円盤は簡単に破壊されてしまった。
『あちゃ~っ・・・やっぱり、見た目だけじゃこれが限界かぁ・・・』
――でも、ディメンション・タイドは使えないの・・・あたしもだけど、あの子達が帰れなくなるし・・・
あの子達、しっかりやってるかな・・・?
粉々になって行くバイラス円盤を見ながら、ファンロンは志真達が巫子と四神を連れて来る為に向かった各地に思いを馳せていた。