‐GREATEST‐応の超獣と七体の大怪獣




ヴォウァァァァォォオン・・・



「行くよ、ガメラ!」
「回転アタックだ!」



巫子達の決意を受けて、四神達は再び黄龍に立ち向かった。
まずはガメラが手足と頭をしまい、ジェット噴射で回転しながら黄龍に突撃して行く。
それに対し黄龍は胸の勾玉を黄色く光らせながら口を開き、口内で電流を急激にスパークさせると、幾多の雷電を束ねた光線を発射した。
光線は瞬く間にガメラを飲み込み、回転飛行で攻撃の衝撃を受け流していたにも関わらず、ガメラは撃墜されて道路に落ち、紀子も激痛の余り倒れてしまう。



「ああっ・・・!」
「紀子!ガメラ!」
『よくものりこを!いっけぇ!マンダ!』



ヌゥガァゥゥゥ・・・



続いてマンダが噴水流で黄龍に攻撃するが、黄龍は大地の鎧を纏う事なくそれを受け止め、「雷」の元素を宿した左足でマンダへ地割れを向かわせた。
マンダはすぐに「地」の元素で体を覆うが、先の戦いよりも勢いを増し、帯電した地割れはもはやそれでも耐えられるものではなかった。



『ううっ、なんで・・・さっきより、きつい・・・』



必死に岩塊に耐えるマンダへ、黄龍は同じく「雷」の元素を両翼に宿らせ、突風攻撃をマンダに浴びせる。
紫電混じりの風はマンダの防御を容易く突き破り、マンダとジュリアの体は軽々と吹き飛ばされてしまう。



ガァウォゥゥゥ・・・



『あううっ!!』
「ジュリア!」
「ジュリアの分、ボクとギャオスが!」



ギャァオォォォォ・・・



間髪入れず、空中からギャオスが黄龍の首元を閃光で攻撃する。
しかし、身体能力までも「雷」の加護で上げた黄龍の皮膚には傷一つ付けられず、電熱した両手で黄龍は火球をギャオスに目掛けて投げる。
雷炎の塊をどうにか回避しながらギャオスは閃光で反撃するも、どの箇所を攻撃しても黄龍に傷を与えられず、遂に火球を一発体に受けてしまった。



ギャウウゥン・・・



撃墜されたギャオスはビルの上に落下し、樹もまた膝を付いてしまう。



「ぐ・・・あっ・・・!」
「樹君!」
「これ以上やらせない!アンバー!」



グウィウォォォォォウン・・・



黄龍の後ろを取ったアンバーは黄龍を旋風で囲い、動きを封じる。
しかし黄龍は胸から勾玉状のエネルギーの塊を取り出し、両手に持つといとも簡単に旋風を引き裂いた。
こちらを向く黄龍にアンバーは何発も真空圧弾を撃つが、全て通用する事はなく、勾玉状のエネルギーを放り投げてアンバーを攻撃する。
皮膜で防御したものの、それでも致命傷を負ったアンバーは着地し、穂野香の顔が痛みで歪む。



「うっ・・・!」

――ですが・・・これで!



彼女達の狙い、それは再び円盤飛行で突撃していたガメラを阻止されないようにする事だった。
ガメラは速度を保ったまま黄龍に突撃し、黄龍は後ろに倒れ込む。



グァヴウゥゥゥン・・・



「いけえぇぇっ!ガメラ!」



両手で黄龍を抑え、ガメラは零距離で火炎噴射を放つ。
黄龍の上半身がガメラの猛火で焼けていき、さしもの黄龍も面食う様子を見せた・・・かに見えた、が。
今度は黄龍が勾玉状エネルギーを零距離で繰り出し、ガメラを弾き飛ばす。



ヌゥガァウォォォォウン・・・



黄龍は更に尾に「雷」を宿らせ、立ち上がろうとするガメラへ電光ほとばしる水の尾を叩き付けた。
仰向けに倒れたガメラはそのまま動かなくなり、紀子も意識はあるものの、発作を起こした病院患者のような、衰弱した様子だ。



「紀子、紀子!」
「はぁ・・・はぁ・・・私なら、まだ大丈夫、だから・・・」
「大丈夫なわけねぇだろうが・・・!ちくしょう!」
「験司・・・私達は目の前で女の子達が傷付いていくのを、ただ見ているだけしか出来ないなんて・・・!」



ギャァヴォァァァァオォォン・・・



ガメラの沈黙を確認した黄龍は、次の標的をマンダに向けた。
胸を黄金色の光に染め、マンダ目掛けて雷電光線を発射しようとする。



『き・・・きなさい!わたしもマンダも・・・まだ、まけてない!』


――ジュリア、足が震えて・・・それでも、戦おうとしてる。
ボクだって、まだ!



黄龍の暴威に怯えながらも、ジュリアは黄龍から目を逸らさず、マンダもまた黄龍を睨み続けるが、無慈悲にもマンダへと雷(いかずち)は放たれた。



グウィォォウン・・・



だが、雷電光線はマンダに当たる事無く、マンダの前には疾風の壁と共に雷電光線を受けるアンバーの姿があった。
ほんの僅かしか軽減・拡散されていないにも関わらず、アンバーはマンダの代わりに電流を受け続ける。



「うああぁっ!!」
『ほ、ほのか!!アンバー!!』
「もう・・・こんなの、ちゃんとよけなきゃだめ、でしょ・・・ジュリア・・・いつき・・・あとは、まかせたわね・・・」

――ここまでしか・・・尽力、出来ず・・・
大変、もうしわけ・・・ありま・・・せん・・・



光線の照射が終わるまで自らを壁にし続け、純白の表皮を黒く焦がしたアンバーは力無く、穂野香と一緒に倒れた。



「は、初之!・・・何か、対策になるような術はないのか!」
『黄龍と同じ「雷」の元素を使うか、もしくは四大元素のサイクルに関係の無い、言うなら「無」の、四神以外の怪獣でもいればいいんだけど・・・』
「くっ・・・!」



『ゆ、ゆるさない・・・あやまったってゆるさないんだから!』
「よくも穂野香を!覚悟しろ!黄龍!」



ジュリアの怒りを乗せ、マンダは液状化して黄龍に突っ込んで行き、ギャオスもそれに続く。



ヌゥガァウォォォォウン・・・



左足を上げ、三度地割れを出そうとする黄龍へギャオスは閃光で左足を一点集中攻撃し、必死に地割れ攻撃を防ぐ。
それが功を奏してか黄龍は上げたままの左足を動かさず、マンダは黄龍に絡みつく事に成功した。



『マンダ!そのままみずてっぽうで・・・』



マンダが水流で黄龍に攻撃しようと口を開いた、その瞬間。
黄龍の全身から赤・青・緑・白に彩られた波動が放射され、マンダを強引に引き離した。
その衝撃で液状化が解かれたマンダは黄龍の足元に倒れ、「地」の元素を混ぜた蹴りを受けてしまい、ジュリアと共に再起不能になった。



『あっ・・・うっ・・・』
「ジュリアちゃん!な、何なんだよあの攻撃は!」
『「雷」の元素を扱う事によって、四大元素の力をまとめて使えるようになったみたい・・・あの攻撃はきっと、四大元素の力を一斉に解き放つ物ね・・・』
「なんでもありって事かよ・・・あの野郎!」



「残ったのは、ボクとギャオスだけ・・・それでもやるんだ!ギャオス!」



倒れる巫子達を一瞥(べつ)し、樹は勾玉に覚悟の思いを込める。
ギャオスもそれを受け取り、突風を回避すると槍状となって捨て身で黄龍に体当たりし、黄龍のバランスを崩しながら右肩へ至近距離から閃光を浴びせる。
僅かながら黄龍の右肩に傷を付ける事は出来たが、それは決定打には程遠く、後方に下がって再度突撃しようとしたギャオスの首を、黄龍の右手が捕らえる。
そして黄龍は勾玉状エネルギーを二重に重ねて左手に持ち、ギャオスを離すと同時にエネルギーを投げ付けた。
回避する間も無くギャオスは攻撃を受けてしまい、ぴくりとも動かないままコンクリートの地面に落下、樹もまた息をするのが精一杯な程に弱っていた。



「い、樹君っ!!」
「あ、くっ・・・ひうな、さん・・・」



ギャァヴォァァァァオォォン・・・



憎き片割れ達を叩き伏せ、高らかに天に向かって咆哮を上げる黄龍。
どの四神も巫子にも戦う余力は残されておらず、ただ絶望だけが残った。



「まだ・・・生きてます、ので・・・」
「・・・どうしてなの?やっぱりこんな運命、酷過ぎる・・・!こんなの、ぜったいおかしいよ!」
「遥ちゃん・・・」
「地球そのものに流れる途方も無い力『マナ』を、自らの力として使う。その代償だってのは、分かってんだ・・・頭では分かってんだ!けどな!そんなんで、オレは納得出来るか!」
「そうね、験司・・・そういう理屈だとしても、私達には理解出来ない。だって、こうしてあの子達は傷付いているのに・・・!」
「アカン・・・俺、やっぱ樹君が苦しみ続ける姿なんて耐えられへん!」
「思春期の子供が背負うには、あまりにも過酷な運命ね・・・」
「ジュリアちゃん、家の事だけでも辛い思いをしているのに・・・」
「神様は勝手過ぎるな、弟よ。」
「ほんと、代われるのなら代わってやりてぇよ。見てるこっちの気持ちも傷付くぜぇ・・・」
「巫子として生まれたばかりに、なんと残酷な。」






「・・・紀子も、ガメラも、まだ諦めていません。」



そう、憐太郎を除いて。



「憐太郎君・・・?」
「僕と紀子だけじゃない・・・穂野香さんも樹もジュリアも、ガメラ達四神だってまだ諦めていません!勾玉から伝わって来ます・・・」
「だが、これ以上戦えば・・・!」
「かなわないのは分かってます。だから、僕達で・・・ゴジラ達の封印を解きます!」
「えっ!?」
「最初からみんなで決めてました。四神でも勝てないなら、ゴジラ達の力を借りようって。」
「ゴジラ達は四大元素に関係無い・・・『無』みたいな存在で、四神と同じくらいに強い怪獣です・・・黄龍だって、どれだけ強いパワーが使えるようになっても、四神達が与えたダメージは残り続けています・・・ゴジラ達がいれば、勝てます!」
「紀子ちゃん!」
「ってわけだから・・・私達、寝てるままじゃいられないの・・・」
「初之・・・」
『それに・・・わたしもマンダも、まだ生きてるよ~だ・・・』
「ジュリアちゃん・・・」
「気に、しないで下さい。ボクたちにしか出来ない、事なら・・・たとえ命をかけても、やります!」
「樹君・・・!」
「ファンロンさん!僕達が力を送る間だけでいい、どうにかして黄龍の動きを止めて下さい!」
『分かったわ。君達の決意、無駄にはさせないから!』
「ありがとうございます・・・僕には紀子や巫子のみんなみたいに、ガメラ達の痛みは分かち合えない・・・でも!僕のこの心は!紀子達が傷付いた悲しみで痛くて・・・!紀子達を傷付けた、お前への怒りで爆発しそうなんだ!黄龍!!」
「妃羽菜さん。モスラを、貴方の元に帰します!」
『待っててね!しまお兄ちゃん!もうすぐ、ゴジラにあえるから!』
「バランが並ぶ姿、見たいですよね!瞬さん!」
「だから・・・私達の、最後の力を託します!」



ヴォウァァァァォォオン・・・



憐太郎と紀子の意志に応え、残された余力を振り絞り、大地を力いっぱい踏みしめながら、ガメラは立ち上がった。
続いてマンダ、アンバー、ギャオスも弱々しくも起き上がり、叫びを上げる。



ヌゥガァゥゥゥ・・・


グウィウォォォォォウン・・・


ギャァオォォォォ・・・
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好釦