‐GREATEST‐応の超獣と七体の大怪獣




ギャァヴォァァァァオォォン・・・



「それじゃあ行こう、みんな!」
「ええ!私達は、あんたなんかに負けないわ!」
『これいじょう、好きにさせないんだから!』
「力を合わせて、必ずお前を倒す!」
「僕達なら、負けない!いけえぇぇっ!ガメラ!」



ヴォウァァァァォォオン・・・



そして黄龍の咆哮と、巫子達の叫びと共に四神達は進撃を始めた。
東西南北、己が司る方角より黄龍の四方を固めるように進んで行く四神達。
黄龍は四方を見渡し、動こうとしない。



ヌゥガァウォォォォウン・・・



だが、四神達が黄龍を取り囲み、各々の近距離攻撃を仕掛けようとした瞬間、黄龍は翼を広げて真上に飛び上がった。
攻撃は当たらず、四神達は一斉に空を見る。



「ギャオス!」
「アンバー!」



これに対して樹と穂野香が瞬時に対応し、勾玉を光らせ二体に指示と力を送る。
ギャオスは翼を、アンバーは両脇の皮膜を広げて空に舞い上がり、黄龍に空中戦を挑んだ。



ギャァオォォォォ・・・



まずはギャオスが黄龍に向かって行き、四神最速のスピードを生かして黄龍の周囲を旋回し、黄龍をかく乱する。
黄龍がギャオスに気を取られている隙にアンバーが合わせた両手から竜巻を繰り出し、黄龍の背後から攻撃した。
しかしながら大した痛手にはならず、黄龍はアンバーのいる方向へ振り返ると「火」の元素を両手に集め、巨大な火球状にしてアンバーに向けて発射する。
だがそれこそが、二体の狙いだった。



「かかった!今だ、ギャオス!」



火球は双方アンバーに回避され、その隙にギャオスは口を開いて喉の中で空気と声を反射させ、黄色く鋭い光線として発射した。
光線は黄龍の首元に当たり、まるでメスで切断したかのように強固な黄龍の表皮に傷を付けた。



「気体と変化・・・『風』と『火』の元素を合わせた攻撃ね。」
「音波攻撃みたいですし、『超音波メス』とかどうです?」
『やっほ~。みぃちゃんに岸田君。』
「あら、ファンロンさん。」
「こんちは。」
「あなた、今回も凄いのを造ったわね。あの転送装置とか。」
『でっしょ~?場所さえ分かれば、いつでも会えるよ☆』
「おお!じゃあ、一緒に温泉地巡りでも・・・」
「岸田さんが覗きに来る可能性があるから、却下。2人だけで行きましょう。」
『男子禁制だね~?残念だったね~?』
「うっ、そんな・・・」



ギャオスは更に四方八方を飛び回って黄龍の視線を乱し、その死角からアンバーの竜巻が攻撃して行く。
黄龍は二体に狙って火球を発射するが、どれも当たる事は無い。



ギャァヴォァァァァオォォン・・・



すると黄龍は翼を真っ直ぐに広げ、「風」の元素を両翼に集めると、力強く翼を羽ばたかせた。
翼からは風の刃が混じった突風が吹き荒れ、広範囲に拡散してギャオスを襲う。
ギャオスもどうにか1度目を上昇して回避するも、黄龍へのかく乱戦法を取る余裕は無くなり、2度目も下降してどうにか回避した。
が、出の早いこの技は既に3度目が放たれており、勿論標的はギャオスであった。



「くっ、あんなの避けられない!」
「ギャオス、危ない!」



樹の手を握り続ける遥が叫び、突風がギャオスの全身を襲おうとした、その瞬間。
突然ギャオスを囲うかのように気流が発生し、突風を見事に防御した。



グウィウォォォォォウン・・・



「これは・・・白虎、穂野香!」



そう、この気流はアンバーがギャオスを守る為に起こしたものだった。



「穂野香、それにアンバー・・・樹君とギャオスを守ってくれて、ありがとう。」
「困った時はお互い様!今度は私とアンバーがお相手するわ!」



アンバーは空気を吸い込み、一瞬で空気を口内で圧縮すると、真空の弾丸として撃ち出した。
それはまさにバランが使う「真空圧弾」そのものであり、違いはやや小型である点と、生成・弾丸の速度がバランのものより早い点である。
その証拠に弾丸は直ぐ様黄龍の右翼に直撃するが、技を阻止しただけでダメージを与えるまでには至っていない。
無論、その弱点はアンバー・穂野香も把握しており、左翼、腹、回り込んで尾を攻撃し、「最も狙いたいポイント」を黄龍に悟らないようにする。
そして尾を攻撃した直後、黄龍が振り向いた瞬間にアンバーは黄龍に出来たウィークポイント、首元の傷に弾丸を当てた。
流石に黄龍も怯み、翼を折り畳んで槍の形となったギャオスが黄龍の背後から突撃し、続けてアンバーが空中で体を一旋させ、しなりを付けた尾の一撃を再び首元の傷に当てる。
二体の連携で、黄龍は地上に落下した。



「よっしゃ!空中戦はこっちの勝ちだぜぇ!」
「・・・美しい。」
「おい、蓮浦。さっきからお前、それしか言ってねぇぞ。」
「仕方がないだろう。圧倒的な美を前にした時、人間は単純な反応しか出来ないのだから・・・」
「すっかりアンバーさんに骨抜きのぞっこんだなぁ、お前・・・なんで穂野香ちゃんに行かねぇのか、おれには分かんねぇなぁ。」



『つぎはわたしとマンダのばんだよ!やっちゃえ、マンダ!』



ヌゥガァゥゥゥ・・・



落下の衝撃で道路に穴を作りながらも、余裕を崩さずに起き上がる黄龍をジュリアは光る勾玉を掲げる右手と逆の左手で指差し、今度はマンダが黄龍に戦いを挑んだ。
マンダは尾を振るわせ、街の遥か地下に流れる水脈から水を引き出し、道路を割って現れた膨大な激流を操って太い触手のような複数の噴水流を生成し、全て黄龍に向かわせる。



「いけ!マンダのハイドロポンプ!」
「それポケモンの技だよ、兄者。」



対して黄龍は全身を「地」の元素で包み、噴水流をその身で平然と受け止めた。
黄龍は四大元素の中で「地」を得意としており、先ほどのガメラとの戦いにて、ガメラが放った烈火球でダメージを全く受けなかったのも、一瞬の間に全身を「地」の元素でプロテクトしたからだった。



「なっ!『まもる』だと!四つ以上技を使っているじゃないか!卑怯だぞ!」
「兄者、そこから離れようよ・・・」



ヌゥガァウォォォォウン・・・



大地の鎧を解き、黄龍が力を込めた右足で道路を踏みつけるや否や、地割れと共に無数の岩が飛び出し、両者揃ってマンダに向かって行く。



「させない!」
「ガメラ、バーナーだ!」



グァヴウゥゥゥン・・・



マンダに迫る岩塊を、足からのジェット噴射で飛行していたガメラがバーナーを使って全部叩き落とした。
だが、それでも地割れを阻止する事は出来ず、勢いを保ちながらマンダに迫る。



『じゃあ、こっちもかたまっちゃえ!』



目と鼻の先まで地割れが来ようと、避けずに地割れを睨むマンダ。
そして地割れはマンダに直撃し、細長い全身に余す事無く衝撃によるダメージを与えた・・・が、マンダはそれを受けてもなお平然としており、ジュリアへの反動も全く無い。



『こっちだって、からだくらいかたくできるよ~だ!』



マンダの体をよく見ると、全身の鱗が通常よりも強固になっていた。
黄龍同様、マンダも「地」の元素で全身を包む事で防御力を上げていたのだ。
ただ、マンダの場合は主に相手を締め付ける時に使っている。



「そうか、こっちも固くなれるんだ!ジュリアちゃんにマンダ、流石だぜ!」
「目には目を、だね。」
『えへへ~。ってわけで、はんげきだよ!』
「マンダ、水鉄砲だ!」
『マンダ!みずてっぽう!』
「だから、兄者!」



マンダは水鉄砲・・・ではなく口から光線にも似た水流を放ち、黄龍が鎧を包む前に頭部を高水圧の水流で攻撃する。
視界を奪われながらも、黄龍は翼を広げてマンダに突風で攻撃しようとするが、それは空中からのガメラの火炎とギャオスの閃光に阻まれた。
黄龍は首を振って強引に水流を振り払い、その勢いを保ったまま尾を液状化させつつ全身を捻り、着地したガメラに向けて尾を振るう。
しかし、すかさずアンバーが撃った真空圧弾が尾の軌道をずらし、ガメラの左横にあるビルが代わりに破壊された。
その間にガメラは手足と頭を甲羅に仕舞い、続く黄龍の尾撃を全て甲羅で受け止めた。
ガメラは常に「地」の元素で全身を覆う事で表皮の段階で一定の防御力を得ており、特に背中の甲羅部分は「地」の元素を活用して粒子レベルで構造上の隙間を徹底的に無くしており、切断・貫通・粉砕などの破壊行為は困難になっている。



「ゴジラも耐えられなかった、あの攻撃に耐えてる・・・!亀らしい、凄い防御方法だな!」
「ありがとうございます。これは紀子を絶対に守るって言う、僕とガメラの意志の強さです!」
「ふふっ。紀子ちゃんへの『愛』の力なのね、憐太郎君。」
「もちろんです!遥さん!」
「もう!レンったら。でも、確かに私は何度もレンの言葉に助けられました。今もですけどね。」
「何があっても、絶対に諦めねぇ。昔っからレンはそうだったな。」
「きっとそれが、巫子じゃない憐太郎君が紀子ちゃんとガメラの力になっている理由なのね。」
「まぁ、レンとガメラにはもっと深い理由があるけどな。そんじょそこらの奴には及ばないくらい、強い絆が。」
「ええ。憐太郎君と紀子ちゃんにとって、ガメラは『玄武』じゃない。『守護神(ガーディアン)』なの。」
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好釦