「さて、あとは残り最後の四神の紹介だな。」
「２人共、東の方を向いてみて。」



験司と蛍に言われ、憐太郎と紀子は東・・・２人から見て右の方角を見る。
そこには、一斉攻撃の際に水流で黄龍に攻撃した、緑色植物の「青」の色をした竜がいた。



ヌゥガァゥゥゥ・・・



流線型に伸びる、固い鱗に包まれた深緑の長い身体。
その上部・下部に付いた四本指の二対の手。
二本角に、先が二又に分かれた長い舌の顔。
そして黄龍への強い対抗意識を抱いた、蒼い瞳。
この怪獣は東方守護を司る四神「青龍」にして、またの名をマンダ。



「『青い』龍なのに、体は緑色？」
「レン、それは『青』の語源が緑色植物に由来してるからなんだよ。」
「へえっ、そうなんだ・・・」
「それと・・・あそこにいるのが巫子の女の子かな？」



更に紀子が見つけたのは、ここから右側に繋がっている橋の先にある、噴水のある広場にいた、蒼い勾玉「句芒(こうぼう)」を持った青と白のノーブルドレスを着る少女だった。
これまで見た巫子の中で最も幼い、小学校中学年程であろう女の子であったが、紛れも無く彼女が青龍の巫子であり、名をジュリア・R(ラント)・グレイス。
ツーサイドテールの黒いセミロングに、姫カットの前髪。
やや色白ながらも肉感的な体付きだが、目の色はマンダと同じ青い目で、何処か欧州人を思わせる容貌だった。
それもそのはず、彼女は片方の家系を欧州の元貴族「グレイス家」、もう片方の家系を先祖代々巫子の血を引く家系「蘭戸家」の元で生まれており、今なお貴族の権威が残っている家柄の娘である彼女は俗に言う「お嬢様」の立場にあるのだ。



「あの子が巫子みたいだけど、僕よりも年下だね・・・それに、外国の子っぽいんだけど・・・」
「それはあの子の先祖が外国人の貴族と、巫子の家系だからだよ。」
「そう！だからこそ聞くも涙、語るも涙の境遇があの子、ジュリアちゃんにはあるんだ・・・！」
「まぁ、簡単に言えば『箱入り娘』だな。あの子が家の外を出たのは、今日が初めてなんだ。」



次いでこの場に現れたのは、ジュリアとマンダをここに連れて来た丈・歩の角兄弟、そして志真だった。



「丈さんに歩さん、それに日東新聞の志真さん！」
「お久しぶりです。」
「よっ。年末年始の時以来だな。憐太郎君も俺の記事を読んでくれてるみたいで嬉しいよ。」
「僕、怪獣系が大好きで・・・あれから父さんに頼んで、日東新聞にして貰ったんです。」
「レンったら、暇があったらすぐ記事を読んでるくらいですよ。」
「そっかぁ・・・ここまで熱烈なファンがいたってなれば、最近スランプなんて言ってられねぇな！」
「俺も読んでみたいのに、歩は西月新聞でいいって言うしよ・・・」
「仕方ないじゃないか、兄者。Gnosisの活動を考えれば、西月の方が情報が多くていいんだから。」
「西月？あそこなんて、話の分からない頭の固い連中が言いたい放題書いてる所だぞ？それなら日東・・・もう、西月以外なら何処でもいい！」
「あ、あの、志真さん？」
「相当目の仇にしてるんだな、あいつ・・・」
「競争相手とは言え、あそこまで露骨に言っちゃっていいのかしら？」
「・・・おっと、熱が入り過ぎちまった。君達が玄武・・・いや、ガメラで黄龍と戦ってくれてたんだな。」
「「はい。」」
「俺も沢山の怪獣を見て来たけど、俺と角兄弟が連れて来た青龍のマンダ、あそこにいる白虎と朱雀、そしてガメラは他の怪獣とは違うと思ったんだ。そう、ゴジラ達みたいな感じ。」
「ゴジラ達と？」
「多分ここで会ったと思うけど、俺とその連れの瞬と遥ちゃんは『結晶』って言う道具を使って、君達の勾玉みたいに怪獣と交信が出来るんだ。それぞれ俺はゴジラ、瞬はバラン、遥ちゃんはモスラと。」
「えっ！そ、そうなんですか！？」
「だから志真さんは怪獣の事に詳しくて、志真さん達が四神を呼びに行った理由なんですね。」
「まぁ、俺達は交信しか出来ないけど、君達は命をかけてあいつと戦ってくれてる。だからもし四神と君達が黄龍を倒して、ゴジラ達が解放されたら、もう君達が戦わなくていいように今度は俺達が頑張るよ。瞬は自衛隊として、遥ちゃんはモスラの支えとして、俺は記者として戦うゴジラ達の事を全部伝える。勿論、君達の戦いも俺が見て、忘れないようにする。」
「ありがとうございます。志真さんの言葉に私達、勇気を貰いました。」
「絶対に黄龍に勝って、ゴジラ達を取り戻します！」
「そうか。ならお前達、頼んだぜ。ちょっと俺、ジュリアちゃんをここに連れて来るよ。」



志真は２人にサムズアップを決め、ジュリアのいる広場へ走り去って行った。



「志真さんって、記者の人って感じがしないくらい、若くてエネルギッシュな人だね。」
「験司兄ちゃんと話してるみたいな・・・話してて、元気をたくさん貰える。ジュリアちゃんも、そこに共感したのかしらね。」