‐GREATEST‐応の超獣と七体の大怪獣
「じゃあ、憐太郎君に紀子ちゃん。次は西の方を見てちょうだい。」
蛍の言葉に従い、今度は西の方角・・・黄龍より左を見る2人。
そこには、一斉攻撃の時に竜巻を放った主である、白い獣がいた。
グウィウォォォォォウン・・・
長い尾、背中から顔に沿って並ぶ透明な棘、両脇から伸びる皮膜に四つ足の体位。
それは憐太郎達が既視感すら感じる程にバランと似ていたが、違うのは真っ白い体の色と、女性のようなしなやかな身体、多少柔和な顔付きと間逆な、目の前の黄龍に臆さぬ気高さを持った琥珀の瞳。
この怪獣は西方守護を司る四神「白虎」にして、バランと同族の存在であり、真名はアンバー。
「あれ?バランって黄龍の力で地面の下に封印されてたよね?」
「でもあのバラン、色が全然違うわ。それに、体付きとか色んな所がなんだか違う気がする。」
「それは、白虎が元々バランと同じ種族だったからなの。白いメスのバランって事ね。」
「白い・・・メス!?」
「白虎って、女の人なんだ・・・」
「それから、あそこにいるのが白虎の巫子の穂野香さんよ。」
2人の肩を軽く叩き、蛍が指示した先にはこの場合と左側の橋で繋がっている、いくつもの花壇がある広場があり、そこに白い勾玉「蓐収(じょくしゅう)」を持った巫子がいた。
名を、初之穂野香(ほのか)。
先が結われた二又の黒いロングヘアー、綺麗な顔立ちに均整なスタイル。
しかし、ミニスカートから惜しげも無く出ている細くも美しい、流線型の太腿(もも)こそが彼女の最大の魅力であり、誰もがついつい目をやってしまっていた。
「・・・ちょっと、レン?」
「へっ、い、いや、きれいな人だなって、素直に思っただけだよ!ぼ、僕は一生紀子一筋だからね!」
「ふふっ、冗談だよ。私も綺麗な人だなって思ったし。」
「な、なんだ・・・紀子を不機嫌にさせちゃったって、凄く焦ったよ・・・」
「なんだぁ?能登沢ともあろう者が、穂野香ちゃんの美脚に見入っちまったのかぁ?」
「余計な事を言うな。ここに来るまで50回は妹の脚を見ていたお前が言っても、説得力が無い。」
「全く、黄龍が目前にいると言うのに、緊張感の無い・・・」
と、そこに現れたのは穂野香とアンバーをここに連れて来た首藤秀馬と蓮浦賢造、そして瞬だった。
「首藤さんに蓮浦さん。」
「あっ、てめぇは!」
「この2人が絡んで来た以上、やはり元締めのお前とも出会ってしまうのか・・・」
「もう、験司!この人の事はいいじゃない。別に邪魔したわけでも無いんだから。」
「・・・けっ。」
「あの、お久しぶりです。」
「貴方とも、年末年始以来ですね。」
「そうだな。改めて名乗るが、俺の名は瞬庚。しかし、あの怪獣の正体が玄武で、お前が巫子だったとは・・・」
「あの時はガメラと一緒に来てしまいましたけど、四神や巫子の事は極秘事項でしたので・・・」
「そうか。そういえば、ここに四神を連れて来たと言った者はいなかったか?」
「はい。遥さんって人がさっきいました。今は朱雀の巫子をここへ呼びに行ってます。」
「分かった。俺とその遥、それからあともう1人いるが、俺達は変な女から四神と巫子を黄龍の所へ連れて来るように言われ、この2人とはその道中で一緒になった。」
「変な女・・・きっと、ファンロンさんの事ですね。」
「俺も成人もしていない者達に、全てを任せたくは無い。だが、もうお前達に頼るしか手段が無い。今の俺に出来るのは、戦術に関する知恵を貸す事だけだが・・・」
「僕も巫子じゃありませんから、力を与える事しか出来ないのが悔しいって思います。だから、僕は出来る事を全力でやるだけです。瞬さん、ご協力お願いします!」
「・・・あぁ。任せたぞ、この勝負を。俺も少しここを離れる。頃合いが良い時にこちらに呼ぶよう、あいつに言われているのでな。」
瞬は穂野香のいる方向へ振り返り、2人に向けて軽く手を振ると、彼女を呼びに歩み去って行った。
「自衛隊のくせに、最後はかっこつけかよ。」
「こら、験司!いい加減目の仇にしない!」
「・・・おれ達、喋るヒマ無かったなぁ。」
「むしろ、会話に入る隙間が無かったと言う感じか。」
「だんまりしてる時はとことん喋らねぇのに、いざ長話をすればとことん長いし・・・極端過ぎだぜぇ。」
「無口だからと言って、トーク力が無いとは限らないんだな・・・メモしておこう。」
「・・・知的で、見た感じとは逆にいい人だったね。レン。」
「僕も。厳しそうな人っぽく見えたけど、話してみたら違ったね。穂野香さんも、そこに応えてくれたのかな。」