‐GREATEST‐応の超獣と七体の大怪獣




「あぁ。年末年始にオレ達が会ったあいつら、それにお前らと同じ力と、宿命(さだめ)を持った奴らだ。まずは南の方を見てみろ。」



験司の言う通り、2人は南・・・黄龍の後ろの方角を見る。
そこには先程の一斉攻撃で閃光を放った主である、朱い鳥がいた。



ギャァオォォォォ・・・



猛禽類の足、蝙蝠(コウモリ)の翼、赤茶色の体と尾、上部が下がった六角形のような独特的な頭頂部を持つ顔。
そして黄龍を見つめる、紅(くれない)の瞳。
この怪獣は南方守護を司る四神「朱雀」にして、またの名をギャオス。



「あの怪獣が、四神の一体・・・怖そうに見えるけど、でもきっと優しいと僕は思うな。」
「そうね。この感じ、母性と言ったらいいのかしら。南と言う事は、あれは朱雀?」
「そうだ。巫子はあそこにいるぜ。」



験司が指差す先、ちょうど憐太郎達がいる所から真っ直ぐ橋を渡った先にある、一際大きな街灯が目印の広場に、真紅の勾玉「祝融(しゅくゆう)」を持つ巫子がいた。
名を逸見樹(いつき)。
ツンとしたオレンジ寄りの茶髪ショート、多少日焼けしたか細い手足に小さめの顔と、少年にも少女にも見える要素を持っているが、体は間違いなく少女・・・しかしその心は少年そのものである「性同一性障害」であった。



「なんだか、ボーイッシュな子。男の子に見えるわね。」
「でも巫子は女の子しかなれないから、やっぱり女の子なんだね。」
「ところが、そうやないんやな。」
「岸田さん、関西弁。能登沢さん、紀子さん。しばらくね。」
「こんにちは。年末年始以来だね。」
「岸田さんに、引田さん!」
「それに、貴方は・・・」



と、憐太郎達の元に現れたのは、樹とギャオスを連れて来たGnosis隊員の岸田月彦と引田深紗、そして遥だった。



「お久しぶりです。」
「えっと、首藤さんに絡まれてた人・・・」
「そこかい!」
「そ、そうだね。私の名前は遥。ファンロンさんって人の力を借りて、岸田さんと引田さんと一緒に、樹君と朱雀をここに連れて来たの。」
「そうなんですか!?」
「詳しくは後で話すけれど、とりあえず岸田さんが言いかけてた話。逸見樹さんは体は女の子、だけど心は男の子なのよ。」
「え、ええっ!?」
「能登沢もリーダーみたいな反応するんやなぁ。」
「貴方もでしょ、岸田さん?それにさっきから関西弁。」
「とにかく、樹君の為にもあくまで男の子として接してあげてね。慣れてるとは言ってるけど、やっぱり気にしてると思うから。」
「はい、分かりました。私と同い歳みたいなのに、大変そう・・・」
「でもその分、あいつは根性がある。あいつも男だ、おとなしいだけでどんな事にも負けない、気持ちの強さを持ってる。オレが保証するぜ。」
「験司兄ちゃんがそう言うんだったら、頼りになるね。」
「樹君もだけど、貴方達もあの黄龍と戦う為に、ここに来てくれたのよね。」
「本当はパ・・・ファンロンさんって人に言われたのもあるんですけど、これは僕達がやらないといけない事だと思っていました。」
「辛い事なんてありません。私にはレンが、ガメラがいつでもいてくれます。だから、どんな痛みにも耐えられるんです。」
「そう・・・紀子ちゃん、こんなに可愛い顔立ちで、綺麗な肌で、女の子なのに・・・傷が付くのは嫌だよね・・・」



勾玉を握る紀子の手を掴み、そっと撫でる遥。
温かく、優しい手付きに紀子はただ見とれていた。



「・・・でも、それが巫子になるって事ですから・・・」
「紀子さんはいつも赤い服を着てるんだけど、それは巫子の反動によって出る自分の『血』を隠す為なの。」
「巫子の子全員に言えるけど、おしゃれしてもそこで戦いになって、傷が付いて汚れたらって思ったら・・・」
「だから、僕とガメラが紀子を守ります!紀子が傷付いても、僕のこの思いで痛みを吹き飛ばします!そして紀子が傷付かないように、ガメラが絶対に敵を倒します!紀子には、ずっと幸せでいて欲しいんです!」
「レン・・・」
「憐太郎君・・・紀子ちゃんはきっと幸せだよ。こんなに頼もしい子が、近くにいるんだから。」
「あ、ありがとうございます・・・」
「ちなみにこの2人、幼なじみで恋愛面もいい感じなんだけど、まだ手を繋ぐまでしか行ってなくて・・・」
「こら、デリカシーの無い事を言わないの、岸田さん!めっ!」
「ひぃっ!ゆ、許してヒヤシンス・・・」
「「・・・!」」
「ごめんなさいね、2人とも。」
「え、えっと・・・私は今はその距離感でいいと思うわ。お互いに想い合っているのが分かっているなら、焦らずゆっくりとね。」
「「は、はい!」」
「じゃあ、私は樹君を連れて来るね。もう他の四神と、志真さんに瞬さんも来てるみたいだし、同じ巫子同士で顔合わせもしないと・・・頑張ってね、憐太郎君。紀子ちゃん。」



そう言うと遥は手を振り、樹の所へ駆け寄って行った。



「遥さん、とても優しい雰囲気のお姉さんだったね。私、ああ言う人に憧れるなぁ・・・」
「きっと樹さんも、遥さんがいたから来てくれたのかもしれないね。」
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好釦