‐GREATEST‐応の超獣と七体の大怪獣




「それで本題だけど、四神とあいつに何の関係があるんだ?」
『そうそう、その話ね。実は四神って、この日本に本当に存在してるの。』
「四神が、本当に!?」
「待て、四神は妃羽菜の話では中国の神話なのだろう?それが何故日本にいる?」
『ほんとは、それにとっても「近い」怪獣ね。いつ、誰が作ったかは分からないけど、超古代の人々が作った四体の怪獣が平安時代頃の日本に現れて、それを封印した後に「四神」として祀った、ってとこね。この頃には陰陽師とかいたし、前に現れたアンギラス率いる魔獣伝説とも関係あるかも。』
「そう言えば、魔獣伝説も確かこの頃伝わってる話だったな・・・そういえば『護国聖獣伝記』にも四神について書いてあったような。」
「壮大な話ですね・・・」


――つ、着いていけない・・・


『んで、その四神の元になった怪獣にして、四神によって封印された怪獣があの「黄龍」なのよ。だから黄龍を倒すには、四神の力を借りるしかないってこと。』
「でも、四神がいる場所なんて分かるのか?」
『もちろん♪四神は代々「巫子」って言う、各四神に対応する勾玉を持った、特別な女の子に力を貸すの。巫子の血を引く子は今でも存在してて、あたしは全員と会った事があるわ。
それに、こんな事を頼めるのはインファントの「結晶」を持った、君達だけだし。』
「「「えっ?」」」



ファンロンの口から唐突に放たれたその言葉に、再び驚く3人。
ごくわずかな者しか知らない「結晶」の事を、今会ったばかりの彼女が知っていた以上、この反応は当然であった。



「な、なんでこの事を知ってるんだ!?」
『えへへ、それは秘密☆まぁ、あたしは世の中の不思議を探求する研究家、だからかな?
とにかく、君達は地面に閉じ込められたゴジラ・バラン・モスラを助けたいんでしょ?それも四神がいないと、どうしようも無いわ。』
「余計に怪しく感じるが・・・方法を知っているのは事実のようだな。」
「お願いします!私達は、早くモスラ達を助けたいんです・・・どうか、四神に会わせて下さい!」



両手を合わせ、固く目を閉じてファンロンに頭を下げる遥。
志真と瞬もまた、無言で重く頷く。



『そんなにかしこまらなくったって大丈夫!あたしは君達の助けになる為に来たんだから。』
「あ、ありがとうございます!」
『でも、ここじゃ場所的に困るから・・・ちょっとだけ、あたしに着いて来てちょ!』



そう言うと、ファンロンは喫茶店を出て行った。
3人も慌ててドリンクの代金を店員に支払い、急いで後を追う。







数分程して、4人は喫茶店付近に建っていたビルの個室に案内された。
中には誰もおらず、2mはあろうかと言う大きな長方形の鏡が3つ、部屋の中央に置いてあるだけだった。



『どうぞ、入って入って~♪』
「ここに何が・・・ん、鏡が3つ置いてある。」
『今から君達には、あの鏡を通って巫子達の所へ行って貰いま~す。』
「えっ?巫子達の所へ、ですか?」
「そんな馬鹿な、テレポーテーションでもする気か?」
『せ~いかい!頭固そうなのに、よく分かったわね?』
「なっ!」
『あれはあたしが作った転送装置よ。鏡に入ればなんと、好きな所に行けちゃうの!』
「えっ!?ファンロンさんが、作った!?」
『製法は秘密だけどね~。』
「じ、じゃあ、あれってどこでもドアみたいな物って事か?」
『うーん、あそこまで簡単かつ完成度の高い物じゃないかな・・・ちょっと迷ったらどこ行くか分かんないし。あたしも試しに使ったら、東京からインドの砂漠のど真ん中に着いちゃったし。あの時は大変だったなぁ~。』
「お、俺達もこれ使ってほんとに大丈夫なのか?」
『それならだいじょぶ♪目的地を意識しないで通ったらそうなっちゃうだけで、道案内はこの子猫ちゃんがしてくれるから~。』



するとファンロンは杖の先をカバーのように取り、中の毛筆を使って床に何かを書き始めた。



「その杖・・・えっ、筆!?」
「確かに、芸術家とも名乗っていましたね・・・」
「何をする気だ・・・? 」
『サラサラサラ~っと、完成!あとは呪文を唱えて・・・にゃ~ん!!』



床に出来上がった、黒い猫耳カチューシャの絵に向かって、猫なで声でファンロンは叫ぶ。
すると絵の中から三つの黒い塊が飛び出したかと思うと、志真達の前に飛んで行った。



「うわっ!」
「な、何だ!?」
「これって・・・猫?」



その遥の言葉に、志真と瞬は塊をよく見てみる。
黒い毛に覆われた、数十センチ程の見事な円形の体の真ん中にある、こちらを見る一つ目の猫目。
他に棒のような間接肢が下に一本、後ろに尻尾が一本あり、遥を見る個体には猫耳が、瞬をみる個体には尻尾に鈴が、志真を見る個体には足が二つ付いている。



『じゃじゃ~ん!この子猫ちゃん達はあたしの親友の友達で、足が付いてるのがタマ、鈴が付いているのがミケ、猫耳が付いてるのがクロって言うの!可愛いでしょ~。』
「可愛い・・・のか?」
「小さいからまだ可愛げあるけど・・・」
「か、かわいい・・・♪」
「「えっ?」」



タマ・ミケを見て微妙な反応を示す志真と瞬に対し、やや恍惚げにクロを見る遥。
そんな遥の反応を見て、つい2人の驚きの言葉がシンクロした。



『子猫ちゃん達にはもう巫子がいる場所を教えてるから、あとはこの鏡をくぐって、巫子達に四神の力を借りれるよう説得するだけ!簡単でしょ?』
「頭が変になりそうだが・・・最初から目的は只一つ。」
「四神の力を借りて、モスラ達を必ず助ける事。」
「そうだな。しばらくは別行動になるけど・・・瞬、遥ちゃん。次会う時は、四神を連れて絶対無事に再会するぞ!」
「はい!」
「あぁ。」



「結晶」を掌に取り、そのまま突き合わせる3人。
それは3人の決意と、約束の証を示すものであった。



『あたしは他にやる事があるから、合流はもう少し先になっちゃうけどよろしくね~。
それじゃ、いってらっしゃ~い!』
「いってきます!」
「行って来る。」
「また、後でな~!」



こうして、志真・瞬・遥は黒猫の導きと共に水面(みなも)のようにたゆたう鏡の表面へゆっくりと入って行き、その中に消えた。
迷いの無い3人の姿は、人と獣と言う異種を超えた深い絆を、強く感じさせるものだった。



『・・・さてと、あたしもやる事に移りますか!』
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好釦