‐GREATEST‐応の超獣と七体の大怪獣







翌日、志真達はいつもの喫茶店にいた。
ゴジラ達を大地の下に封印した、謎の怪獣が壊滅させた街は偶然にも、喫茶店の近くだったからだ。
しかし、喫茶店にいる者は誰1人としていつも通りの休息を楽しんではおらず、それは志真達も例外ではない。
突如として現れ、消えた怪獣の行方は分からず、人々の頼みの綱になっていた三大怪獣が完敗した、この現実に絶望していたからだ。



「ちくしょう・・・!あいつ、ふざけんな!」
「落ち着け、志真。あの龍の行方は自衛隊が必死に捜索している。」
「これが落ち着いてられっか!今もゴジラが地面の下で苦しんでんだぞ!バランも、モスラも!」
「・・・志真さん、モスラ達なら大丈夫です。」



感情のままに机を握り拳で叩き、それを静止する瞬に対して怒りにも近い目を向ける志真。
だがそれは、遥の一言で止まった。



「えっ?」
「今、小美人さんがペンダントから教えてくれました。志真さんと瞬さんにも繋げます。」



遥が胸の「結晶」を軽く握ると、志真と瞬の「結晶」が僅かに白く光った。
2人はポケットから指輪・弾丸を取り出し、遥と同じように軽く握る。



『志真さん、瞬さん。怪獣達はまだ生きています。』
『その「結晶」が無事な限り、怪獣達は大丈夫です。』
「それって、どう言う事なんだ?」
「・・・結晶の状態と怪獣の命はリンクしている、と言う事か?」
『その通りです。皆さん、結晶を見て下さい。』



小美人の言葉を聞き、3人はすかさず「結晶」を見る。
いつもなら常に艶を保っている金色の表面が、今は少々荒れていた。
だが、どの「結晶」のどの部分も、割れてはいなかった。



「あっ、ほんとだ!」
「昨日見た時に比べて状態は悪いが、リンクしているのは確かなようだな。」
「モスラ達はまだ、本当に生きているんですね・・・」
『私達にはあの龍の事も、怪獣達を救う方法も分かりません。ですが、希望は残されています。』
『『皆さん、どうか平和を取り戻して下さい・・・』』



そう言うと小美人は交感を切り、「結晶」の光が消えた。



「切れた・・・」
「まだ怪獣達が生きているのなら、俺達は助ける方法を探す。今はそれしかない。」



更に志真の指輪だけが、再び光を出した。
今にも消えそうな、点滅した青い光だったが、それを見る志真の表情は何故か緩やかになって行った。



「志真、それは何だ?」
「・・・チャイルドからだ。」
「チャイルドから、ですか?」
「父ちゃんがどうなったのか心配になって、俺に連絡して来たんだってさ。」



ギュオオオオン・・・



「・・・大丈夫だって。俺達が、父ちゃんを助けるからさ。」



志真はあえて、瞬と遥に聞こえる声でチャイルドの言葉に答える。
それから数分程経った後、チャイルドからの交感が終わった。



「・・・今終わった。チャイルド、島で待ってるって。」
「そうですか・・・」
「なんか、チャイルドと話してたら落ち着いた。そうだよな・・・焦っても、何もならないよな。」
「昔から、焦っていても行動に移そうとするのはお前の癖だ。ただ今回の場合、気持ちは分からなくもない。」
「いつも私達はモスラ達に助けられてきました。だから今度は、私達が助けましょう!」



志真と瞬に向かって、遥は手を伸ばす。
2人は返事代わりに頷き、そっと遥の手を掴んだ。
3人の顔には、笑みが浮かんでいた。



「しかし、確実な手段はあるのか?」
「うーん・・・こいつを使って思いっきり力を送ってみる、とか?」
「もしかしたら・・・あの龍を倒さないと、助けられないのかもしれません・・・」
「どちらも不確定だな・・・龍の正体が分かれば、何か方法が分かるかもしれないが・・・」
『あの龍の名前、「黄龍」って言うの。』



と、3人の元へ突然女性が歩み寄って来た。



「「「!!」」」



女性に気付いた途端、3人は音を立てて驚く。
3人が彼女を見てここまで驚いた理由、それは彼女の奇抜さであった。
毛先に紫のグラデーションがされた、銀のショートヘアー。
さながらパレットのような、鮮やかな服。
鳥のオブジェが先端にあしらわれた、手に持った金の杖。
背中に背負った、身の丈もの大きさのスケッチブック。
そして明らかに日本人離れした、北欧の顔立ちと無邪気な声。
彼女を見て、なんの反応も示さない方が無理と言えた。



「び、びっくりした・・・」
「全く気配に気付かなかったぞ・・・」
「えっと、貴方は誰ですか?」
『よくぞ聞いてくれました!あたしは世の中の全ての謎を探求する研究家にして、芸術家!その名は・・・』
「け、研究家?芸術家?」
「変人なのは間違い無いな。」
「しゅ、瞬さん!失礼ですよ!」
『・・・えっと、あっ、そうそう!あたしの名前はファンロン!』



少し間を開け、3人を指差しながら揚々と名乗りを上げる女性。
その場に似つかわしく無いテンションに、3人はただ圧倒されていた。



「ファンロン?なんか、中国人みたいな名前だな。」
「・・・怪しい。」
「と、とりあえず、ファンロンさんはあの龍について知ってるんですか?」
『うん!でも、その前に一つ質問!ずばり、「四神」って何か知ってる?一応「四聖獣」とか、「四象」とかも同じだけど。』
「えっ?ドラグーンとかドランザーとか、そう言うやつの事か?」
「志真、お前は何を言っているんだ?」
「それか、前にやってた韓流のドラマの事か?」
「お前はしばらく黙っていろ。四神・・・前に東と西から聞いた事があるが・・・?」
『分かんないかな~?オーディエンスとか、使っちゃう~?』
「・・・あの、四神って東西南北を守る伝説の怪獣の事、ですよね?」
『・・・せいかい!一千万円は無理だけど、代わりに情報を差し上げましょう!』
「妃羽菜、よく分かったな?」
「昔学校で風水が流行っていた事がありまして、その時に。それと・・・四神を扱った少女漫画を読んでいたので。」
「どうも、四神とやらはサブカルチャーでよく使われるようだな・・・」
『当然よ。だって・・・
東を守るドラゴンの「青龍」!
西を守る虎の「白虎」!
南を守る鳥の「朱雀」!
北を守る亀の「玄武」!
こんなの聞いて、想像や興奮がかき立てられないわけないじゃない♪』
「確かに!これは大人でもなんか、かっこいいって思うな!」
『でしょ~?』



意見が急に同調し、何故かハイタッチをする志真とファンロン。
その様子を呆れて見る瞬に、遥が話し掛ける。



「四神は元々中国の神話なんですけど、90年代に日本で風水がブームになった時に知名度が一気に上がったんです。一応、その前から四神伝説は日本に伝わっていまして、平安京は四神が最も住みやすい『四神相応』と言う場所に作られていたりしますし、今の風水でも四神相応の土地は運気が上がるとされていますが・・・あっ、すみません。瞬さんはこういう話、お嫌いでしたよね・・・?」
「い、いや。別にオカルトならば東と西で多少は慣れているし、怪獣がいるこの世に四神がいないとは限らないだろう。ただ・・・妃羽菜は風水にとても詳しいのだと思ってな・・・」
「そ、そうですね。私、占いも好きですから。」
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好釦