‐GENOCIDE‐「負」、再ビ ダイジェスト版








『・・・待て、そいつは俺が「殺ス」。』


グォオォオオオオオオッ・・・



・・・と、その時。
バガンの眼前の空間を抉じ開け、鎧を着込んだような体と水牛のような顔立ちをした二足の怪獣と、その眉間に佇む1人の青年が現れた。
逞しき肉体と柔らかな雰囲気を持ち、「美丈夫」と言う言葉が似合う細目の顔立ちが特徴的な、武人を彷彿とさせる男だ。



――プルガサリ・・・?
ほう・・・!まさか、この世界でお前と会えるとはな・・・蛾雷夜! 



この男の名は、蛾雷夜(がらいや)。
「G」の宇宙においては「複製」の爾落人にして、自らを元に人類を生み出した人類の創造主であり、「万物」の対極を成す「破壊」のレリックと対になる、「創造」に位置する存在である。
しかし、この蛾雷夜はバガン(レリック)同様に「G」の宇宙の蛾雷夜では無い「平行同位体」・・・この世界の蛾雷夜であり、「G」の世界の蛾雷夜が2046年の沼津防衛戦において、「万物」の失敗作にして蛾雷夜と同じ「複製」の「G」を持つ爾落人・加島玄奘の犠牲を持って、「蛾雷夜」としての全てを失っていた頃の姿・人格をしていた。
積もる所、正義・平和の為に動いていた時期の蛾雷夜である。



『厳密には「俺」はお前を知らないが、「G」が存在する宇宙では腐れ縁があったようだな。記憶が、流れ込んで来る・・・』


――・・・むっ?ハハハハハ!
そうか!「蛾雷夜」としての何もかもを失い、「旅団」を率いて英雄を気取っていた頃のお前か!
そんなお前に、私が殺せるか!?


『・・・それでも、俺が「万物」の片割れ・・・「破壊」と対となる「創造」に当たる者だったのなら、俺はやってみせる!別の俺がしでかして来た過ちを、俺が少しでも償う・・・!覚悟しろ、レリック!』


――覚悟するのはお前だ、蛾雷夜!
お前に「G」の宇宙の私の、最強の顕現体たる姿の「写し身」、「G」キラーザウルス・ネオが倒せるか!!



バガンは両手で口の牙を自ら折ると、胸元に持って来て握り潰し・・・砕かれた牙はまるでケンタウロスを彷彿とさせる、巨大で全体が禍々しく尖った甲殻類に、金色の龍人の上半身が乗ったかのような体に加え、背中に太く長い触手を無数に纏わせた、巨大なるキメラ・・・「G」の世界のレリックの最強の姿であった「「G」キラーザウルス・ネオ」へと変わる。









『・・・例え、半端で空っぽだったとしても・・・そこに確かな「思い」を、「ミエナイチカラ」を込めれば、それは形になる!
出でよ・・・!
「時空の女神」!
「万物の魔神」!
そして、「真理の戦神」!』



蛾雷夜が両手を掲げると、三つの光が「G」キラーザウルス・ネオを照らす恒星のように瞬き・・・









――魔砕ぃぃぃぃ!!天照光ぉぉぉぉぉっ!!
光にぃ、なれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!



――万物、消滅斬。
闇に、還れ。



――ふふふっ・・・成敗♪



「G」キラーザウルス・ネオの頭上に、「女神」と「魔神」と「戦神」が現れた。
その僅か後、「女神」が手を翳すや「G」キラーザウルス・ネオの全身は両断され、「魔神」が投げた刀が刺さった「G」キラーザウルス・ネオの全身を暗黒物質が包み、「戦神」が太陽を模した形状の額から放った光の奔流によって、「G」キラーザウルス・ネオは完全に消え失せた。



――「時空」の女神の鎧・ゾグ、
「万物」の魔神の鎧・阿羅羯磨(アラカツマ)、
そして「真理」の戦神の鎧・ウツノイクサガミ・・・
世界そのものを司る「三佛」の鎧を、ここまで精巧に「複製」するとはな!
「G」キラーザウルス・ネオでも、歯が立たないわけだ!
だが、所詮は「複製」!三佛の力を使うには役不足だったようだな!



バガンの指摘通り、「戦神」の体は段々と半透明になって行き、「魔神」の体は続々とひび割れ、「女神」の体は黒くくすんで行く。



『・・・違うな、間違っているぞ。確かに鎧自体は俺の「複製」、だが中身は本物だったなら・・・これで終わらない!』






――餞別にくれてやる。有り難く食らえ。



グォオォオオオオオオッ・・・



砕け散った「魔神」の中から、おびただしい鉄が飛散し、その全てをプルガサリは口に吸い込む。
するとプルガサリの体は倍々ゲームで肥大化して行き、バガンと同じサイズにまで巨大になったプルガサリはバガンに迫り、そのまま羽交い締めにする。



――何をする!離せ、人形め!


『最後まで大人しくして貰おうか!お前が終わる、その時まで!』






――私は好みじゃないけど、私の黒猫ちゃんが作った「器」なのなら、好き嫌いは言ってられないわね?
って、わけで出番よ~?世莉~?菜奈美~?



「女神」の体は見る間に、醜悪な四本足と悪魔のような巨大な翼を生やした禍々しい姿・・・通称「ゾグ・ビースト」に変貌した。
その中には2人の女、「空間」の爾落人・四ノ宮世莉と「時間」の爾落人・桧垣菜奈美の姿もある。



――マイトレア・・・それにせり!ななみ!きてくれたんデスね・・・!


「ゾグ・ビースト!?って事は、結局お前も来たのか!?ひーがどっか行っちまうから大人しく留守番してろ、って言っただろ菜奈美ぃ!」





――もう、分かってるわよそんな事!
早く終わらせて帰るから!

――過保護だな、相変わらず。
それよりバガン・・・いや、レリック!何処までもしつこい奴だ・・・!

――世莉、あれは厳密には私達の知るレリックじゃないわよ?

――分かっている!だが、あれはレリックである事にも変わりは無い!

――じゃあ、また消してやるわよ・・・私達で!

――勿論だ!
平行同位体だなんて関係無い!私は、忘れないぞ・・・お前のせいで死んだガラテアの・・・神保原の事を!



ゾグ・ビーストはバガンの背後に巨大なワームホールを作り出し、バガンを時空の狭間に追放しようとする。



――あれは・・・!
蛾雷夜!これがお前の狙いか!!







――銀河殿!今だ!

――あぁ、行くぞガラテア!
イクサガミよ、アマノシラトリに戻れ!



「戦神」は消え行く体を変形させ、白銀の鳥・アマノシラトリへと変わり、まるで水先案内人を務めるかのように光の筋を残しながら、ワームホールへと突入して行く。



――元の世界じゃあっさり負けたが、これでちょっとはリベンジ出来たか?
まぁ、これも本当は「ゴキゲンな蝶」の案内に従ってるだけなんだがな?


――流石は銀河殿が見込んだ、「最強の能力者」だな。






『今だ、超ゴジラ!俺とプルガサリごと、レリックを討て!!』
「で、でもあんたはどうなるんだよ!?あんなのに飲み込まれたら、助かる訳・・・」
『・・・なら、少しだけ助力して欲しい。「クーソーゾー」に俺の無事を願ってくれるなら、もしかすれば助かるかもしれない・・・だが、レリックを討つ機会は今を置いて無い!
やるんだ!!志真哲平!ゴジラ!』
「・・・結局、犠牲は出るってのかよ・・・!ちきしょう!!」


――そうだ!所詮は無駄な犠牲!無駄な足掻きだ!
例え、時空の狭間に追放しようとも!私は帰って来るぞ!!何度でもな!!


「だったら・・・跡形も無くなるくらいに、やってやらぁ!!
ゴジラァ!!超越、放射熱線だあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



ゴオォディガァァァァァァァヴウオオン・・・



志真の涙混じりの決意の叫びと共に、超ゴジラは超越放射熱線を再び発射。
白と黒の光がバガンとプルガサリ、そして蛾雷夜を飲み込み・・・



――がああああああああああああ!!
私は・・・決して、殺されたりはしない!!
私は・・・不滅だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・!!



『・・・ありがとう、ゴジラ・・・
そして・・・また、会おう・・・
美しき、この地球(ガイア)・・・
志真・・・てっ、ぺいよ・・・!』



全ては、時空の狭間の彼方へと消え失せた。






「・・・終わった、の?」
「・・・少なくともバガンは消え、空も正常に戻っている。」
「・・・あぁ、終わったんだ。全部・・・」



バガンの、「殺ス者」による「GENOCIDE(大量殺戮)」ゲームはこうしてゲームセットを迎え、時空の裂け目から帰還した超ゴジラは通常のゴジラへと戻り・・・平和を取り戻した世界は、歓喜に満ち溢れた。
・・・僅かな悲しみを、除いて。



「・・・絶対、帰って来いよ。
蛾雷夜・・・!」
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好釦