‐GENOCIDE‐「負」、再ビ ダイジェスト版







兵庫県・神戸。
日本一の港町に、突如虹が掛かり・・・虹が通り過ぎた後にあった建物も緑も人々も、閃光の中に消え失せた。



バアァァァァッ・・・
バァッ、バァァァァァ・・・



全てを奪い去った「悪魔の虹」、その発生源の神戸メリケンパークには、鼻先に一本角が生えた橙色の蜥蜴に似た怪獣がいた。
怪獣は口から先端部が円柱状に肥大化した、カメレオンのように長い特異な舌を出し、舌の先から白い煙を放出。
超低温の煙は吹雪のように神戸港を、神戸海洋博物館を、神戸ポートタワーを、神戸の町の何もかもを凍結させた。



『あれはバルゴン・・・「写し身」のようだが、四神にも近しい力を持った巨大「G」だ・・・』



そんな冷凍怪獣・バルゴンの眼前に唐突に現れたのは、縄文時代の人間のような出で立ちをした、赤と銀の1人の風来坊・ヤマトであった。



『ならば・・・俺と「従者」が、お前を倒す!
「后土」の勾玉よ・・・剣が奏でる導きの音を楔に、鏡を伝って彼の地より、我が「従者」達を呼び出せ・・・!』



ヤマトはフルートと一体になったかのような緑色の短剣「獣奏剣」を口に添え、勇ましい旋律を奏で・・・



『・・・出でよ!我が「従者」達!
ゴモラ!ソドム!ラドン!ダガーラ!』



彼の左手の甲に埋め込まれた勾玉が白く輝くと共に、四つの光が飛び出し・・・四体の怪獣が、ヤマトの後方に現れた。



ズゥジャアアアアアアアウウウン・・・



戦国武将・伊達政宗の兜の如き三日月状の立派な角を頭に冠す、太い尻尾が特徴的な赤茶色の二足の怪獣・ゴモラ。



ガギュヴウウウオウゥゥゥ・・・



全身が溶岩に似た硬い灰色の皮膚で覆われ、背中に小さな火山のような器官を背負った超高熱の四足の怪獣・ソドム。



グィドオオオオオオオウン・・・



紺色に近い体と立派な一対の翼と嘴を持ち、三本の角が頭に生えたプテラノドンに似た有翼の怪獣・・・この世界の個体とはまた違うが、紛れも無いラドン。



ヴヴォオオオオオオウウゥン・・・



毒々しい緑の身体と、背中に生えた収縮された翼のような大きな鰭が目を惹く、四足のドラゴン怪獣・ダガーラ。



『・・・冷凍攻撃が使えるバルゴン相手には、ゴモラだけでは厳しいか。しかし、誰とも対していない怪獣はまだいる・・・それなら!
ラドン!ダガーラ!お前達は、別の場所へ行け!ラドンは大阪、ダガーラは沖縄だ!』



ヤマトの指示を受けたラドンは頷くや否や超高速で大阪方面へ飛び去って行き、ヤマトは腰に携えた鏡を取り出すと、ダガーラに向けて翳す。
するとダガーラの巨体が鏡に吸収され、次の瞬間に沖縄県・石垣島近海に転移していた。



キェルルルルルルルルルルルルル・・・



石垣島近海には深海怪獣・プレシオルが起こした大雨が降り注ぎ、対プレシオルに出撃していた自衛隊の海上部隊を、プレシオルが口からの超音波ブレスで破壊している所であった。



ヴヴォオオオオオオウウゥン・・・



その様子を見たダガーラは、冷淡な雰囲気からは想像が付かない程の怒りを見せながら、自身の体内に潜む毒素の結晶体・ベーレムを織り混ぜた紫色の毒光線「憤杓毒撃波」でプレシオルを攻撃。
正しく不意打ちにプレシオルは海面を激しく揺らしながら倒れ込み、ダガーラはプレシオルと同じく自らのホームグラウンドである海をラドンにも負けない程の速さで進み、プレシオルへ向かって行く。
一方プレシオルは倒れながら海中に素早く潜り、海の中から超音波ブレスをダガーラへ放つが、ダガーラもまた潜水して超音波ブレスをプレシオルよりも深く潜る事で回避すると、旋回しながら一気にプレシオルと距離を詰めつつ、全身から発した赤い光輪「爆龍赤塊光波」でプレシオルに攻撃する。



ヴヴォオオウウ・・・!



ダガーラがここまで怒る理由・・・それは、ダガーラがこの世界のこの海にかつて存在した超古代文明「ニライ・カナイ」で生まれた、言わば「故郷」であるからだ。








グヴァアアアアアアアウウウン・・・ 



その頃、大阪・天王寺。
2013年当時、日本一のビルであったあべのハルカスが建つ、大阪を代表する街は古代アルマジロ怪獣・マジロスの暴威に見舞われていた。



グィドオオオオオオオウン・・・



そんなマジロスに立ち向かわんと、通天閣を横目にマッハで駆け付けたのは、もう一体のラドンこと「従者ラドン」であった。
マジロスは目からグリッド・バイラを撃って従者ラドンを迎撃しようとするが、従者ラドンにとって豆鉄砲同然の光弾は一つも当たらず、全て青空の彼方へと消えて行く。
一方で従者ラドンは華麗に光弾をかわしながら、あべのハルカスを旋回しつつマジロスへソニックブームを浴びせ、マジロスの反撃を受ける前に空へと戻って行く。
業を煮やしたマジロスはグリッド・バイラを乱射し、従者ラドンを回避に専念させると、その隙を突いて体を丸めながら大跳躍し、身らを質量武器とするグリッド・アタックを、従者ラドンに命中させる事に成功する。



グヴァアアア・・・ウン?



・・・が、その直後に従者ラドンの体は不意に消え去り、唖然としながらマジロスは体を戻し、四天王寺前の道路へと落下。
そう、マジロスが従者ラドンだと思っていたのは、従者ラドンが瞬時に超高速で移動する事で生まれた「残像」であったのだ。








バアァァァァッ・・・
バァッ、バァァァァァ・・・



バルゴンが舌から噴射する超低温の煙がゴモラ・ソドムを襲い、瞬く間に二体は氷の中に閉じ込められる。
ヤマトは煙が噴射されたと共に空を飛んで空中に逃れ、煙を受けずに済んだ。



『確かに、その冷凍攻撃は非常に強力だ・・・ゴモラにとっては。だが、だからこそ俺達には「灯火」が・・・ソドムがいる!』



湛えた微笑のまま、ヤマトは勝利の雄叫びを上げようとするバルゴンを見下ろし・・・勝利したと高を括るバルゴンに飛んで来たのは、マグマを凝縮したかのような一つの火球だった。



バアァァァッ!バアァァァッ!



火球はバルゴンの右脇腹を捉え、苦手とする超高熱の一撃にバルゴンはメリケンパークに倒れ込み、激しく悶絶。
更にバルゴンが作り上げた氷のフィールドを容易く溶かす程の熱波が放たれ・・・



ガギュヴウウウオウゥゥゥ・・・



熱波による陽炎(かげろう)の中で、火球と熱波を放った「灯火」、ソドムが叫びを上げた。
常に体温が1000℃近くあり、本人の意志で3000℃以上にまで加熱出来る超高熱怪獣のソドムに、バルゴンの冷凍攻撃は通用しなかったのだ。



ズゥジャアアアアアアアウウウン・・・



加えて、ソドムの熱波は隣のゴモラの氷も溶かし、氷の枷から解放されたゴモラは体を震わせると、バルゴン目掛けて大地を揺るがしながら、軽快に疾走。
バルゴンが迫るゴモラに気付き、起き上がって鼻先の一本角でゴモラを迎え撃とうとする・・・が、ゴモラは角が刺さるすんでの所でハイジャンプで角を避け、前方へと回転して強力なテールスマッシュをバルゴンの背中に浴びせた。



「ゴモラ、超振動波だ!」



着陸したゴモラはヤマトの指示を受け、三日月の角を朱色に光らせると光を鼻先に収束し、振動波の光線として撃ち出した。
ゴモラが地底に潜る際、地面を掘削する為に使う振動波を攻撃に転用した、ゴモラの得意技・超振動波だ。
超振動波はバルゴンを攻撃しながら後方へと押し出し、氷が溶けた神戸港へとバルゴンを追い込む。



『バルゴンの皮膚は水に弱く、雨の中ではバルゴンは身動き一つ取れなかったと聞く・・・なら海に落とせば、大幅に弱体化する筈・・・ゴモラ!もう一踏ん張りだ!ソドムも加勢してくれ!』



ゴモラは更に超振動波の勢いを上げ、ソドムも口から火球を吐いてバルゴンに追い撃ちを掛ける。



バアアアァァァァッ・・・



しかし、困窮極まったバルゴンは背中から悪魔の虹を放ち、曲線を描きながらゴモラ・ソドムへ向かわせた。
ゴモラは超振動波を止めて神戸umie方面へ跳躍、ソドムは重鈍な体を全力で動かし神戸海洋博物館を盾にする形で虹を回避したが、虹はそのまま神戸ポートタワーを蒸発させて消滅。
バルゴンは体勢を立て直し、再び悪魔の虹を放とうとする。



『・・・簡単に上手くは行かない、か・・・ならば!
ゴモラ!「后土」より出でし電光雷轟を、その力とし・・・阻む者を討て!』



その時、ヤマトの左手の勾玉が黄に光ると共に電撃が走り、ゴモラの体も電撃に覆われて行く。



ズゥグゥゥゥゥゥアアアアア・・・



そして、電撃を振り払ったゴモラの全身は炎のように真っ赤に染まり、首は尾と同程度にまで太くなり、炎の中の最も高温な部分である黄の輝きを角に宿した、爆炎の如き強化形態「レイオニックバースト」となったゴモラが現れた。



『ゴモラ!レイオニック超振動波だ!』



バルゴンは悪魔の虹を、ゴモラはまるで太陽のフレアのようになった「レイオニック超振動波」を放ち、虹と灼光が神戸上空で激しくぶつかり合った。
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好釦