‐GENOCIDE‐「負」、再ビ ダイジェスト版








ヒィヴァァァァァアン・・・



「・・・アイヴィラ。今度こそ、俺が・・・俺達が葬ってやる!
竜頭光線、発射!」



瞬の決意の言葉に続けてラゴウの竜頭の口が開き、中からせり出したパラボラアンテナから青い稲妻のような光線が発射され、アイヴィラの蔦を続々と焼き払って行く。
この光線こそが、ラゴウと共に封印されたマイクロ波を応用した対象焼却兵器・・・「誘導放射によるマイクロ波増幅機」の意を持つ「メーサー」技術を攻撃に転用した「竜頭光線(メーサービーム)」である。



「へっ、お前は電子レンジに入れられたダイナマイトみたいなもんだ!」
「少し違うが・・・メーサー技術の原理は、電子レンジによる加熱と同じ!戦車一つ溶かす強力なマイクロ波の中で分解されるがいい!」
「・・・何か、元ネタがありそうな言い回しですね?」
「ほっとき、みなみ。すこぶるどうでもええわ。」







「アイヴィラの巨大蔦攻撃、船体下部に直撃ですわ!」
「戦艦が簡単に沈むかぁ!!」
「そうだ、この艦は沈まない・・・総員、竜鱗斉射用意!」



瞬の指示と共に、ラゴウの左右合わせて120にもなる鱗状のミサイル発射口が、前方からドミノ倒しの様に一斉に捲れて行き・・・



「発射準備、完了!いつでも行けます、瞬殿!」
「・・・竜鱗、斉射!」
「いけ、よやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



叫びと共に雪菜は両手で竜の髭に似た左右の発射レバーを引き、全ての竜鱗からミサイルが放たれた。
数多のミサイルの煙がラゴウを白く覆って行き、ミサイルが曇天を銀に染め上げながら、その全てがアイヴィラへと向かって行く。
アイヴィラは再度口からブレイカー・アイビーを伸ばし、ミサイルを叩き落とそうとするも、一つ落とす間を縫って二、三のミサイルがアイヴィラへ向かい、今度は全ての蔦を総動員して防御しようとするが、90以上のミサイルが起こす連鎖式の大爆発が、守りを突き抜けアイヴィラの全身を焼き尽くした。



「やったか!?」
「ばか!その台詞は失敗フラグだぞ!」
「・・・そのようですね?」



南野の指摘通り、体を失ってもなおアイヴィラの核は健在で、即座に身体を再生しようとする。



「ほんまやん!あんだけめちゃくちゃにふっ飛ばされても、あいつ平気なんか!?」
「・・・だが、守る術を奪う事は成功した。メーサー発射!」



だが、全ては瞬の思惑通りであった。
再度ラゴウの竜頭の口を開き、ミサイル斉射と同時にエネルギーをチャージしていたメーサー光線を発射。
僅かな猶予を逃さずに青い稲妻はアイヴィラの核を正確に貫き、竜の頭を形作ろうとしていた蔦は瞬時に枯れ果て・・・瞬の「知恵」に敗れたアイヴィラは、再び散った。



ビィグォァァァア・・・!



「アイヴィラ・・・完全消滅!」
「よっしゃあ!!」
「「「「「やったぁ!」」」」」
「や、やりました!雪菜様!あたくし達の勝利ですわ!!」
「せやな!みんな、ようやった!」
「全く、斉射したらすぐ冷却が必要じゃのにメーサーぶちかますなんて、無茶しよるぞい!」
「すみません。ですが、奴に確実に勝つには大胆な手法と、チャンスを絶対に逃さない必要がありました。この戦法が出来たのも、この艦の完成度の高さと、貴方の適切なメンテナンスのお陰です。」
「へっ、あったり前じゃぞい!」
「「瞬殿!やりましたね!」」
「あぁ、そうだな。お前達も、よくやってくれた・・・感謝する。」


――・・・父さん、母さん。
再び安らかに、眠ってくれ・・・


「それで、次はどこ行くん?」
「決まっている・・・総員、次の目標はバガンだ!今すぐ備えろ!」






一方、一樹が送り込んだもう一つの艦・ナースデッセイ号は愛知県・名古屋市に到着。
ナゴヤドームに巻き付きながら陣取る、ガラガラヘビとキングコブラが融合したかのような緑色の怪獣・・・ガラシャープに狙いを定める。



ウガァァァルシャァァァァ・・・



『いやがったなぁ、こんのデカヘビ野郎・・・よし、ナースデッセイ号!バトルモードへ、ウズマキ変形!』



一樹の「電脳」の力を受け、ナースデッセイ号はまるで蛇がとぐろを解くかのように時計回りに渦を巻く形で、円盤状から竜の様な姿に変形。
背部のブースターを竜の手足のように移動させ、しなやかに空を泳ぎながらナースデッセイ号は変形完了の合図となる咆哮を上げた。



キィィウウオオオォォォォォ・・・



『ナースデッセイ・・・バトル、ゴーッ!!』



ガラシャープがドリルのようになった尾を高速で回転させて放つ超音波光線をうねるような動作で回避し、ナースデッセイ号は全身から光線の雨「レーザーレイン」をガラシャープへと降らせた。









グウィウォォォォォウン・・・



その時、バランの周囲に柔らかな気流の壁が起こり、ヒジュラスの火炎を防いだ。
バランだけで無く、ヒジュラスにも心覚えのあるこの壁を起こしたのは、西の空よりダイヤモンドダストを纏いながら麗しく舞い降りる、白きバラン・アンバーであった。



「最短で寄り道したら・・・やっぱりいたわね!このお邪魔カラス!いい加減、バランにちょっかい出すの止めなさいよっ!」



風の結界で守られたアンバーの右手の中で、穂野香がヒジュラスを一瞥するや叫ぶ。
バランが分かりにくいながら、何処か安堵を浮かべる表情をする一方で、ヒジュラスはあからさまに焦りを見せる。
傲慢そのものな思考のヒジュラスにとって、唯一見下せない存在・・・恋慕する者であるアンバーが、思いもしないタイミングで介入して来たからだ。


――ヒジュラス、今すぐ戦いを止めて下さい!
今、バガンと言う存在がこの世界に災厄を招いている事は、ご存知の筈・・・だからこそ、この星に生きる者同士で争っている場合では無いのです!
バガンの脅威が去れば、またバランと雌雄を決する機会はあります・・・ですが、この世界が無くなればその機会すら無くなってしまいます!
なので、今は身を引いて下さい!お願い致します・・・!



両手を合わせ、目を閉じながらアンバーは心からの言葉・・・争いを望まぬ和平の意志を、ヒジュラスへと向ける。
ヒジュラスは不本意な態度をしながらも、抗えない者からの鶴の一声に逆らえる訳も無く、バランを激しく睨み付け・・・



ヒィジャァァァァァァラァ・・・



翼を広げて空へ舞い上がり、神山市から去って行った。
バランは呆れ顔でヒジュラスの背を見つめ、アンバーは逆にヒジュラスへ一礼する。



――・・・分かって下さって、良かった・・・


「当たり前よ!バランが気に入らないからっていちいちああやってネチネチと・・・男ならサイテーね!
あっ、バラン!無事そうで良かった!私達、これからバガンの所に行くんだけど・・・一緒に、行くよね?」


――ヒジュラスと一戦交えた後で、心苦しくはありますが・・・ご協力、頂けないでしょうか?



穂野香のウィンク交じりのサムズアップと、再び頭を下げてのアンバーからの頼みに、バランは二つ返事で頷く。



「ありがと!それでこそバランね♪さぁて・・・それじゃ、本丸を攻めに行くわよ!アンバー!」


――ご協力、心から感謝致します・・・
貴方がいて下さるだけで、わたくしは本当に心強いです。バラン。
では、参りましょう・・・バガンの元へ!



グウィゥゥゥゥゥゥゥゥウウン・・・



二体の同族は心を一つに合わせ、バランはアンバー・穂野香と共に、ヒジュラスと逆の空・・・バガンの元へと、去って行くのだった。
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好釦