‐GENOCIDE‐「負」、再ビ ダイジェスト版








「俺の願望は・・・そう!この世界の平和を願う者達を怪獣達の元に送り、お前の野望を打ち砕く事だ!レリック!
お前は先程、異世界からの存在の召喚も可能と言ったな?結果的に、他力本願になるのは否めないが・・・今より、異世界の存在であろうとも対象とする!つまりはお前の望み通り、ゲームの駒を増やしてやると言う事だ・・・但し、お前に敗北をもたらすイレギュラーな駒を!」








『瞬殿!今すぐ、自衛隊本部に戻って来て下さい!』
『総理が遂に、「ラゴウ」の出撃を承認しましたよぉ!!』
「本当か!?分かった、至急戻る。」
『ラゴウ?なにそれ?』
『ミカドロイド?』
『ガルファ皇帝のペット?』
『全然元ネタ分からないけど、それは置いといて!何か、怪獣の名前みたいね?』
『瞬さんがあれだけ驚いたって事は相当な、「何か」って事ですか?』
「えっとな、確か・・・第二次世界大戦中、旧日本軍が開発して完成間近だったとこで終戦を迎えて、あまりに強過ぎて一度出撃させると世界中から糾弾されるから出せないでいた『自衛隊最強の超兵器』、だよな?」
「そうだ。大戦も終結し、専守防衛の為の力である自衛隊にとっては、過剰戦力でしか無かった。だが、近年の度重なる怪獣出現に何度も出撃の是非が議論され、今回の事件を受けていよいよ総理も腹を括ったようだ。」
「そんな凄い兵器が、日本にあったなんて・・・」
「そう言うわけで、俺は自衛隊本部に戻る。後は任せたぞ。」



憐太郎達とのグループ通話の最中、遂に承認された「何か」の元に向かう為、瞬はむささびに乗り込んで自衛隊本部へ去って行った。








自衛隊本部、地下666mの秘密ドック。
終戦後は極一部の者しか入る事が許されなかった、日本政府トップシークレットの一つの地に、瞬が到着した。
目測数百mはあろう程に巨大な秘密ドックには、一つの巨大な「舟」が鎮座しており、鋼鉄の船体は帆船の様な形状をしながらびっしりと竜の鱗に似たミサイル発射口が取り付けられ、船尾には竜の尾を模した爆雷発射口が、船首には戦時中に考案されながらこの舟と共に未使用に終わった「ある技術」を光線に転用した発射口を搭載した、竜の頭が付いていた。
この「舟」こそが、内閣総理大臣の承認無しでは出撃はおろかこのドックに立ち入る事さえ許されない、第二次世界大戦下に水面下で進行しながら歴史の闇に消えた、超兵器製造計画「ラ『號』作戰」の最初で最後の結実・・・自衛隊最強・最大の超兵器・ラゴウである。



「「「「瞬隊長!お待ちしておりました!」」」」



ラゴウの搭乗ハッチには、東・西を含めた「瞬隊」が総員待機しており、一斉に瞬に敬礼をする。
しかし、瞬隊以外の自衛隊員も何十人か待機しており、その半分は女性隊員であった。



「ったく、ほんまはあんたなんかむささびに乗らせて、うちがこいつを動かしたかってんけどなぁ?今回は特別やで?」
「・・・やはり、お前も来ていたのか。牾藤。」



と、瞬隊以外の自衛隊員達の先頭に立っていた、黒い真っ直ぐなおかっぱ頭と相反する色白な肌、ナチュラルな関西弁に鋭い目付きが特徴的な女性隊員が、瞬に話し掛けた。
彼女は牾藤雪菜(せつな)。
瞬と並ぶ自衛隊もう1人の「特佐」であり、自衛隊西日本が誇るトップエースにして、瞬とは訓練生時代に共に切磋琢磨しながら合わない個性故に対立・競争を繰り返した、因縁浅図らぬ関係である。
そして雪菜の後ろにいる隊員達は皆、「瞬隊」に相当する彼女直属の隊員達、通称「牾藤隊」。
「飴と鞭」を巧みに生かした雪菜の指導法により、「瞬隊」に負けずとも劣らない精鋭達だ。



「ご、牾藤特佐がどう言おうが、こんな超ド級兵器が似合うのは瞬殿だ!艦長は瞬殿しかいないっ!!」
「ばか、反論する相手を考えろ西!だが・・・自分も、西と同じ意見です!瞬殿はこれまで数々の怪獣と戦い、死線を潜り抜けて来ました!」
「「「私達も、同意します!!」」」
「お前達・・・」
「はぁ。ほんまあんたら、口だけは達者やなぁ?」
「「なっ!?」」
「雪菜様の言う通りですよ?貴方達が好き勝手に戦っている間やその前に、人命救助や支援やお膳立てや時間稼ぎをしているのは、主にあたくし達『牾藤隊』なのですが?阿呆な事を仰らないで下さい?」



東・西からの反論に動じず返しの言葉を浴びせる雪菜に続けて、牾藤隊の最前列から追い打ちの発言をしながら前に出たのは、瞬で言う所の東・西ポジションに当たる、雪菜の右腕にして牾藤隊の参謀役を務める、後ろで結んだウェーブセミロングヘアと180cmは優に越える長身、ジトっとした目が特徴的な、大人の雰囲気に満ちた女性・南野(なんの)みなみであった。
ちなみに見た目は雪菜より年上に見えるが、実年齢は雪菜より二歳下である。



「あ、揚げ足を取る気か!南野!瞬殿相手に!」
「そうだ!見た目だけなら俺らぐらいデカイからって、調子に乗んな後輩!逆さから読んでも『みなみのみなみ』の癖に!」
「そ、それは関係無いやろう!?只の悪口で反論するなんて、阿呆やないの!?」
「若造共が、やかましいぞい!どっちにせい、ワシがおらなこいつは動かせんのじゃぞ!」



自身の弱点である怒りの沸点の低さを、つい零れる関西弁で晒す南野に続くかのように、搭乗ハッチから至るところに黒い油が付いたツナギ・ヘルメット姿の、小柄で色黒のスキンヘッドの老人が、怒鳴りながら現れた。
彼は北大路。第二次世界大戦時、学生の身ながら兵役へ駆り出されるも、辛くも生き延びた戦争の生き字引であり、雪菜お抱えの優秀なエンジニアでもある。
彼のみ自衛隊とは無関係の人間だが、かつて戦場で重火器や無線機だけで無く、戦闘機・戦車・艦艇をも修理して来た経験を買われ、ラゴウのメンテナンス担当として雪菜によって招致されたのだった。



「北大路のじっちゃん!どや?この艦動かせそう?」
「バッチリじゃぞい!半分くらいはこっそり最新の機械になっとったが、残り半分はワシが触っとった戦艦とかと同じじゃったからのう!こいつは、間違いなく名機じゃぞい!」
「さ、流石は北大路様!それにしても、どうして竜をモチーフに使ったのでしょうね?戦時の秘密兵器としても、少し華美的と言うか・・・」
「カッコいいからだろ?」
「先輩の阿呆な回答は、聞いていませんが?」
「なにぃ!?お前、いちいちうるさいっての!」
「ばか、お前こそうるさいぞ!」
「うるさいんはあんたらや!」
「てめーらみんなうるさいぞい!!ったく・・・ちなみにな、こいつが竜を象った理由はあくまでワシの想像じゃが・・・東洋の『竜』は西洋の『龍』とは全然ちゃう存在でな、邪を払い祝福を与える存在なんじゃぞい。その験を担いで、大戦を終わらせて日本への祝福をもたらす存在になって欲しい・・・まぁそれが一番の理由じゃろうが、ワシが思うにこれは『お国の為』なんぞより、そのトチ狂った思想しか許されない戦争なんかさっさと終わらせて、普通に暮らせる日々を返して欲しい・・・そんな願いがあったと思うぞい?」
「大戦の終盤にこっそりこんなん作っとったんなら、国民みんなド貧乏になるのは当たり前やな?何が『ぜいたくは敵だ』やねん・・・」
「『特攻』と言う、後先も考えずに兵の数を・・・命を浪費する事を前提にした、はっきり言って愚策の中の愚策を敢行したのも、ラゴウが完成さえすれば犠牲を全て取り戻しながら、勝利をその手に出来る。その考えもあったのだろうな・・・」
「旧日本軍あるあるの、阿呆なタヌキの皮算用の究極形、と言う事ですね?」
「まったく、その通りじゃぞい。少なくとも、ワシは戦場で『進め一億火の玉だ』なんぞアホらしいとずっと思っとったし、そんな国なんぞの為に平気で我が子の命を捨てさせて、なんとも思わんぐらいに洗脳されたヤツが、果たしてどれだけおったんじゃろうなぁ?」








「それで、最初の目的地はどこなんです?」
「群馬県・太田市だ。世良田東照宮付近に、アイヴィラが現れている。」
「確か、瞬殿にとっては因縁深い怪獣でしたね・・・」
「よっしゃ、じゃあさっさとドック開いて・・・」
「その必要は無い。」
「はぁ?ドック開かんで、どうやって出るっちゅうねん!」
「知らないのか?今、この国は強い願望が形になるようになっている。そして俺はここに来る前に、平和を願う全ての者達を怪獣の元に送り込む事を願った。つまり、俺が願えばこの艦は瞬時に目的地へ行けると言う訳だ。」
「まさか、この艦ワープさせるとか言うんとちゃうやろな?堅物リアリストのあんたがそんな世迷い言を言うやなんて、夏やのに雪降らす気なんか?」
「常識のタガが外れ、秩序が崩壊した今、リアリズムに拘る必要は最早無いだろう。」


――まぁ、俺も相当絆されたのだろうな・・・あいつに。


「そうだ!信じる者は救われる、って言うしな!」
「阿呆な結論ですね?」
「なんだとぉ!?」
「言わせておけ西。馬鹿を見るのは、瞬殿を信じなかったあいつらなんだからな。」
「なっ!雪菜様を馬鹿扱いする気!?と言うか関西人は『馬鹿』って言われるんがほんまに嫌やねんけど、分かってる!?」
「コラ、みなみ!いい加減私語は謹まんかい!もうすぐ出撃なんは変わらへんねんぞ!」
「は、はいっ!お許し下さい雪菜様!」
「はぁ、あんたってほんま煽り耐性無いなぁ・・・ま、うちも別にあいつを信用しとる訳ちゃうけど、あいつがホラ吹かん事は分かっとる。ほんまにこの艦、ワープさせられるんやろな?」
「・・・あぁ。総員、直ちに出撃に備えろ。これより本艦は、アイヴィラ駆逐の為・・・出撃する!」
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好釦