「私の願望、それは・・・バガン、いえ・・・レリック！貴方が傀儡にする為に、怪獣達から奪った『心』を取り戻す事！これ以上、この地球や怪獣達を貴方の身勝手なゲームの舞台に、駒になんてさせない！私達が、絶対に貴方を止めてみせる！」








――つまらぬ戯言を・・・
ならば試してやろう、その戯言が「真理」となるのかどうか！



バガンの意思を受けた黄龍は両手にエネルギーを集め、勾玉状に変化させる。
狙いは眼下の遥達だ。



「真っ先に、俺達を始末しようと言う気か・・・！」
「だろうな！でも、ゴジラもチェリィちゃんもラドンも来れないし・・・とにかく逃げるぞ！」
「待って下さい！私の願いが届いているなら、黄龍は止まってくれる筈です！」
「だが、妃羽菜の願望が具現化されている保証は無い！それに黄龍に『心』は無かった筈では・・・」
「・・・いや、ここは遥ちゃんに、黄龍に賭けてみるぞ！何でも出来る気、お前もしてるだろ！」
「・・・そうだな。」
「ありがとうございます、志真さん。瞬さん・・・
お願い！やめて、黄龍！貴方はもう、『破壊』の為だけの存在じゃない！私はもう、貴方と戦いたくないの！思い出して・・・あの時の、私達の言葉を！私の願いを・・・！」






『・・・可哀想な黄龍。
いえ・・・ガイア。
力だけ与えられて、全部壊す事でしか自分の存在を示せない。
ちゃんと「心」もあげていたなら、四神みたいになれたはずなのに・・・今も昔も、人間は勝手だよね・・・』



遥の言葉を聞いた黄龍の脳裏に、自分が消滅した・・・最期の今際の際、遥達が自分へと掛けた介錯の言葉が過り、両手のエネルギーが揺らいで行く。
まるで、黄龍の迷いが形になったかのように。





『でも、あなたがした事は許されない。
あなたは街を壊して、たくさんの人の命を奪った。
ゴジラ達を、仲間になれた筈のガメラ達を、巫子のみんなを傷付けた。
だから・・・私達が、あなたを眠らせる！
あなたの破壊は怒りと、悲しみを生み続けるだけなの・・・もう、あなたが何も壊さないように・・・！』






ヌゥガァ・・・
ウォォォォウ・・・



――何をしている！早くその女を殺せ！
お前は「破壊」の為だけの存在だ！お前の存在意義を壊す者など、全て消してしまえ！黄龍！



黄龍を再び唆そうとするバガンだが、黄龍の揺らぎは止まらず、エネルギーが消失した両手で頭を抱え、黄龍は悶え苦しむ。
黄龍は今、理性と本能・・・正と邪の葛藤の中にいた。



「私は信じてる・・・！今の貴方には、『心』がある事を！だから・・・帰って来て！『ガイア』！」






『さぁ、ガイア！』

『ボク達の！』

『このちからで！』

『安らかに眠りなさい！』

『お前の事を、忘れはしない！』

『だから・・・っ！』

『『いっ、けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ！！』』










『・・・また、会おうね。』






ギャァヴォァァァァオォォン・・・！



嘆きの絶叫の後、黄龍の全身が凄まじい放電による爆発を起こし・・・煙を水流の尾で振り払った黄龍はそのまま振り返り、バガンを見上げながら睨む。
そして、黄龍は勾玉状エネルギーを両手に再び生成し・・・バガンへと投擲した。



――なん、だと？　



想定外の事態・・・傀儡からの反逆にバガンは一瞬動揺しながらも、鼻先の一本角から出した黄の光線で勾玉状エネルギーを叩き落とす。
しかし、続けて黄龍は翼からの風と両手に生成した火球をバガンへ繰り出し、バガンが両手からの黒い雷撃で再度攻撃を防いだ隙に、硬質化させた両足でバガンに音速の飛び蹴りを浴びせんと向かって行く。



――ねぇみんな、あれ！

――黄龍が、バガンにこうげきした～！！

――うん！きっと遥の願いが届いたのよ！黄龍に！


「レン、これって遥さんが願った『心』を持って・・・」
「僕もそう思うよ、紀子！遥さんがあの時願った黄龍・・・いや、『ガイア』として帰って来たんだ！」



『うんうん！これぞまさに、「愛は地球(ガイア)を救う」！だねっ☆』






「・・・お帰りなさい、ガイア・・・！」



ヌゥガァウォォォォウン・・・



そう、遥の願望・・・「愛」が形となり、黄龍は破壊の使徒としてではなく、「心」を持った一つの生命にして、この地球に危機をもたらす存在を打ち砕く「守護者」。
「応」を司る四神の長として、帰還したのだった。








――お前は人形、所詮は私の駒だ！
駒の分際で、プレイヤーに逆らうな！



バガンは真っ暗な破壊光線を、黄龍は閃光瞬く雷電光線を口から放ち、光線は激しく空中でぶつかり合う。
しかし、すぐに破壊光線が雷電光線を飲み込み、黄龍を消し去らんと迫る。



「「「「『今こそ、ガイアノチカラを！』」」」」
「ガイア・・・負けないで！」



――むっ・・・！
何だ、この異様に膨れ上がる力は・・・！



巫子達の勾玉を介した祈りと、遥の強い「愛」の願いに応えるように、黄龍は全身にこの地球そのものの力・マナを滾らせ、胸のヤサカニノマガタマが黄金に輝き・・・雷電の数が倍以上に増し、黄龍自身を呑み込まん程に威力が上がった雷電光線はバガンの破壊光線をみるみる押し返し、そのままバガンの顔面に直撃。
遂に、バガンに渾身のカウンターパンチを浴びせた。



「よっしゃ！やったぜ！！」
「敵にすると厄介だが、味方にすれば頼もしい・・・まさにジョーカーのような存在だな。」
「・・・ありがとう。ガイア。」



ギャァヴォァァァァオォォン・・・



かつて、破壊の本能と四神への憎悪のみで動いていた黄龍。
しかし、今の黄龍・・・「ガイア」にはこの地球と、かつて対立しつつも・・・力を貸し、支える者達がいるのだ。








「俺の願望・・・だったら、お前を倒せるくらいゴジラを強くしてやる！バガンだかレリックだか知らねぇけどな、待ってろ・・・！俺達が、俺達のゴジラが！お前をこの世界から追い出してやるからな！！」








「おい、お前！「負」のゴジラって言ったよな！お前、こんな奴にいいようにされたままで良いのか！お前にだって心が、感情が・・・意志がある筈だろ！だから何度自己再生してでも、生き延びようとしてんだろ！なら、あんな奴にいいように使われてんじゃねぇ・・・！
生きて、抗え！！」








ゴオォグアァァァァァオオヴゥン・・・



苦悶の咆哮の後、背鰭を一斉に引っ込め、「負」のゴジラが放った熱線は、眼前のゴジラ・・・の斜め上へと突き抜けて行き、遥か上空のバガンの首元に直撃した。



――ぐっ・・・
お前までもが、私に歯向かうのか！
傀儡め・・・駒め！！


「うるせぇ！こいつは、お前の駒なんかじゃねぇ！必死に生きる、ゴジラって存在なんだ！そしてゴジラは、自分を押さえ付けようとする奴を全部ぶちのめす！そう言う存在なんだ！」



志真から発せられた「勇気」の粒子を吸収し、自己再生能力が倍加した「負」のゴジラの傷が即座に治癒された事で、再度「負」のゴジラは背鰭を展開しながら光らせ、ゴジラもまた背鰭を光らせる。



――また戯れ言を・・・
ならば、私が跡形も無く全て消し去ってくれる！


――じゃまはさせないデス！
ラドン！ガイア！いきますよ！


グィドゥウウウウウウン・・・

ギャァヴォァァァァオォォン・・・



事情を察した「影」のモスラはクリムゾンラドン・ガイアと共にバガンに向かって行き、三方向からバガンの頭部に体当たり攻撃を仕掛ける事で、バガンの注意を引く。



――小賢しい！失せろ！



「バガン！お前にも味あわせてやる・・・！ゴジラの恐ろしさをなぁ！！」



そして志真の怒りの叫びに続き、二体のゴジラが同時にバガンへ熱線を放つ。
「負」のゴジラの熱線に、ゴジラの熱線が重なって渦を巻き、倍以上の力を得た合体熱線はバガンの腹を捉え、バガンを昏倒させた。



――馬鹿なっ・・・！！



ゴオォグアァァァァァオオヴゥン・・・

ディガァァァァァァァァオオン・・・



二体のゴジラが、プレイヤーを気取る傲慢な闖入者へ、怒りの咆哮を上げる。
志真とゴジラの言葉が、「負」のゴジラに漸く届き・・・大反逆が今、幕を開けた。