‐GENOCIDE‐「負」、再ビ ダイジェスト版









「じゃあ、倒された怪獣達を蘇らせたのは・・・!」


――それも私だ。
私は「零(ゼロ)」に「負(マイナス)」を与える事により、実質的に死した存在を蘇生させる事が出来る・・・「心」までは蘇生出来ないが、所詮は私の傀儡である以上、その方が問題は無いがな?


「どうして、私達の世界でこんな事をするの!?」


――「招待」なる、異邦人・・・いや、怪獣共を呼び寄せたり、逆に怪獣共が異世界へ行ったりしているお陰で、この世界は実に時空間の境界が緩く、ゲームの舞台とするには最適だったのでな。
恐らくは、異世界から傀儡を呼び起こす事も可能だろう・・・









青森県・つがる市。
バガンによってもたらされた、かつてない危機に立ち向かおうとするガメラを、無数の異形の蜘蛛が阻む。



キャキャァッ・・・

カキャァッ・・・

ハキャァッ・・・

キャァカハァッ・・・



それはかつて、ガメラが復活する大いなる切欠となり、つがる市に見えざる恐怖をもたらしながらガメラによって倒された大蜘蛛怪獣・クモンガに似ていたが、サイズはガメラより一回り小さく、代わりに一体だけであったかつてのクモンガと違って数十もの数の個体が群れを成しており、前足が鎌状に変わった個体と背部に一対の羽根が生えた個体、そして双方の特長を兼ね備えた個体が混じり合う、似て非なるモノ達による「クモンガの大逆襲」であった。



「これじゃあ、いつまで経ってもバガンの所に行けない・・・!」
「でも・・・だとしても!僕達は諦めない!ここで僕達が屈したら、みんな終わっちゃうんだ!でしょ、紀子?」
「・・・そうね。レン。どちらにしても、クモンガ達から逃げていい理由にはならないわ。私達が、必ず倒す!」
「僕達の大好きなこの町を、またお前達の好きになんてさせないぞ!何度甦ろうと、何度だって倒してやるんだ!行け、ガメラ!バーナーだ!」



ヴォウァァァァォォオン・・・



憐太郎・紀子の熱い感情を力に変え、ガメラは引っ込めた両手から放つ灼熱の光剣・バーナーでクモンガ達を薙ぎ払って行く。








小笠原諸島・大島近海では、壮絶な海上戦が繰り広げられていた。



ヌゥガァゥゥゥ・・・



海上を滑るように高速で駆けて行くジェット機のような「何か」と、その後方をマンダが体を素早く左右にくねらせながら必死に追い縋らんと泳ぐが、全く追い付けない。
焦るマンダは辺りの海水を水流へと変えて前方に向かわせるも、「何か」は巧みに体を左右に、時に斜めへと華麗に移動し悉く避けてしまう。
速度が足りない事を察したマンダは口から水流光線を即座に出し、「何か」が体を水平に戻して再び海上を滑ろうとした隙を突こうとする・・・が、「何か」は体を45℃曲げて右半身を海水に浸けて左半身を海面から出した、さなから獲物へと迫る鮫の背鰭のような格好で急速に右方へのクイックターンを行い、水流光線を回避。
マンダの背後を取ると海上を跳ね上がり、先端部が銛のように鋭い尾をマンダへと伸ばした。



グァギュァァァァァァ・・・



海面に反射した陽光が映し出す、「何か」の姿・・・それは一見すると巨大なエイのようなフォルムをしていたが、よく見ると翼のように大きい一対の鰭を持った、鮫に尾と小振りな二本足が生えたかのような形態をした、水銀色の細身の怪獣であった。
怪獣の名はジグラ。かつて、マンダがジュリアと本格的に繋がる切欠を作り、マンダによって倒された始まりの怪獣・・・と同じ名前の、しかし著しく姿の違う怪獣である。



――マンダ!かわしながらしっぽでこうげきして!



大島の海岸で戦いを見守るジュリアからの言葉を聞いたマンダは体を即座に左へくねらせ、ジグラの尾をすんでの所で回避。
その勢いのまま、「地」の元素で先端を硬質化させた自らの尾をジグラへ振るい、ジグラの右鰭に命中させる。
手痛い反撃にジグラは面食らいながらも、波飛沫に紛れて海中へ潜り、マンダもまた潜水してジグラを追う。
戦いの場は、海の上から海の中へと移った。



『それにしても、あれってほんとにジグラなのかな?マンダは近いかんじがする、って言ってたけど、ジグラってサメみたいなかいじゅうだったよね?でも、なんど見てもエイみたいなんだけど・・・?
ううん、そんなのどうだっていい!早くあいつをたおして、バガンのとこに行かないと!だからもっともっとがんばるよ!マンダ!』



ジュリアは勾玉を強く握りながらマンダとの交感度を上げ、マンダと目線を共有して海中を高速で泳ぐジグラをその目に捉える。








ギュウウウウウン・・・



同じく、小笠原諸島の鍵島にて留守番をするチャイルドにも危機が忍び寄っていた。



ヌゥバアアアアア・・・



鍵島の砂浜に上陸したのは、チャイルドがバラゴンと初めて出会った時にゴジラが撃退していた蛇竜怪獣・ラゴネーク。
父によってチャイルドが出会す事の無かった脅威が、チャイルドに迫ろうとしていた。








ギャァオォォォォ・・・



福岡県・福岡市ではギャオスが燃える天神の街を眼下にしながら、怪獣と睨み合っていた。



ジイィグオォォォォヴゥ・・・



炎の中で顔の両脇の襟巻を広げながらギャオスと睨み合う、南国の蜥蜴の様なこの怪獣はジーダス。
かつて、傷付き倒れても構わない決意の元に樹がギャオスと繋がり、初めて倒した因縁深き怪獣である。



シィアアアアアアァウン・・・



と、ギャオスとジーダスの睨み合いに割って入る、巨大な翼を持った怪獣。
こちらもかつてギャオスが倒した大翼怪獣・フォライドだ。



「えっ?ジーダスだけじゃなくてあいつまで、こっちに来たの!?」



福岡タワーの展望台からギャオスの戦いを見守る樹も、唐突な乱入者に驚きを隠せないでいた。



シィアア!シィアア!

ジグヴゥゥア!



互いの標的のギャオスを差し置き、牽制し合うジーダスとフォライド。
このまま三つ巴の戦いに発展するかと思われた・・・が、しかし。
二体の狡猾な本能は、同じ「ある結論」を導き出し・・・ジーダスは口から伸ばした猛毒の舌「ハープーン舌」を、フォライドは口から撃った緑色の捻れた光線「スクリュー・レイ」を、それぞれギャオスに向かわせた。
そう、ジーダスとフォライドは同じ怨敵・ギャオス打倒の為、一時期に結託する事にしたのだ。



「うわっ、あいつら即席でタッグを組んだ!?最悪だ!」



ギャオスはすんでの所で上昇して舌と光線を回避するも、更に悪化した事態に樹の口から悪態にも近い本音が漏れ出す。
フォライドもまたギャオスを追って上昇し、ジーダスは福岡タワーを登ってギャオスへの次の攻撃の機会と、本能で察したギャオスのアキレス腱である樹を狙う。



「まずい、こっち来た・・・!ボクらは早く、バガンの所に行きたいのに!なんか、あったま来たんだけど!こうなったら両方、ボクとギャオスで倒してやる!行くよ、ギャオス!」






ドォゴオオオオウォォォォウ・・・



香川県・霧乃山。
怒りのままに山々を揺るがしながら暴れる、一体の怪獣がいた。
八つの長方形の岩塊が突き出た、森に包まれた山一つを背中に背負い、林を顎髭のように蓄え、U字状の突起を額に付けた鼻が尖く平べったい頭と、半目がちな三白眼が特徴的な、焦茶色の四つ足の怪獣・・・山怪獣・ドルゴだ。
近隣の村では「土留牛(ドルゴ)様」として崇められ、普段は山と化して眠りに付きながら周囲の土壌を豊かにする穏やかな怪獣であるが、バガンによって半ば強引に眠りを覚まされ、怒りの余りすっかり物事の見境が付かなくなり、その足は小さな村へと向いていた。



グウィウォォォォォウン・・・



そんなドルゴを阻むように、流麗なる竜巻と共に現れたのは、アンバーであった。
ドルゴを倒す為では無く・・・止める為に。



「お願い、大人しくして!ドルゴ!私もアンバーも、貴方を倒したくないの!」


――穂野香、わたくし達でどうにか鎮めましょう・・・
バランと同じ山神たる、ドルゴ様の怒りを!







ドルゴが鼻から発した、ドリルのように鋭く螺旋を描くオレンジ色の雷撃をアンバーは両手で受け流し、空へ飛ばす。
すると、雷撃が通用しないと判断したドルゴはU字の突起を激しくスパークさせ、強力な電流撃を放つ準備を始めた。



「それで、何かドルゴを鎮める方法って無いの!?」


――・・・非常に温厚なドルゴ様が、唐突に目覚め激情に駆られる理由・・・恐らくは、麻酔に近い効能を発揮する、脳幹へと神経が繋がっている首の根辺りにある祠の御神体を抜かれたのだと思います。
御神体の場所は、ドルゴ様と同じ気配のする所を察知すれば・・・はっ、ありました!
穂野香、これは貴女を更なる危険に巻き込む手段ですので、大変心苦しいのですが・・・どうか、あの山にある御神体をドルゴ様の祠に戻して下さい!
それまで、わたくしが必ずドルゴ様を抑えます!


「大丈夫!女は愛嬌、そして度胸!でしょ?だからあそこまで、貴女の風で連れてって!」


――・・・そうですね。
では、お頼み申し上げます!穂野香!



ドルゴが放った青い電流撃を、両手に起こした疾風のバリアで防ぎながらアンバーは静かに息吹を吹き、穂野香を息吹から変化させた小さな乱気流で包むと、ドルゴの御神体が転がる隣の山へ彼女を飛ばした。
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好釦